あ、また鳴った。
いち早く耳でひろって、そんなことを思った。
今日で通算、5回目くらい。何が、かというと、彼のポケットにおさめられたケータイから電子音が鳴った回数だ。
「チッ、またかよ……」
うんざり、というような顔で舌打ちをして、悪ぃと言って電話に出た。
煩わしいなら無視をすれば良いのに、とは思うけど、そうしないところが彼の優しさなのだろう。
それでも、はじめはすごく嫌な気持ちになった。『なぎさ』、『もも』、『はる』、『まこと』、いまは『あい』。呼称がみんな、女の子だったから。
モテないモテない、とか言って、やっぱりモテるんじゃないか。そう思ったけど、口調からして違うっぽいと気がついた。
きっとみんな、大切な友人。彼の顔と、言葉尻でそう思った。
それでも、相手にされないのは少しだけさみしい。
そんな気持ちをこめて、繋がれた右手にきゅっと力を入れた。反射で、同じ力が返ってくる。いまは、それが心地よかった。
「もう今日は電話してくんな、あいつらにも言っとけ。じゃあな」
ぶっきらぼうに電話を切った。そんな感じで大丈夫なのか、ちょっとだけ不安になった。
「電話、いいの? 切り方、一方的っぽかったけど」
「大丈夫だろ。つーかあいつら、マジでいい加減にしろって感じだわ…… タイミングといい、もしかして監視されてるとかじゃねーだろーな……」
きょろきょろと、彼は辺りを見渡す。同じように見渡してみるけど、目にするのは変わり映えない。カップルだとか、夫婦、家族、友人同士。普通の光景で怪しそうな人は居そうにない。
「もしかして、凛くんにファンがいて、ストーカーでもされてるの?」
「なわけねーだろ」
「監視って言ったから」
「いやだって、タイミング良すぎだろ」
「電話?」
「おう。俺のファンってよりかは、璃黛のファンだな。デートしてるってバレて、邪魔してんだよ」
そう言って、彼は手を引いて歩き出した。繋がれた手から、先いく背中を目で追う。
私にファンなんて、居ないと思うけど。そう思ったけど、手を引かれる方がはやかったから言葉にすることはできなかった。
「でもよー」
彼の言葉が耳に届く。目線をあげると目があった。
「邪魔されると、やっぱ逆に燃えるくね?」
振り返った顔が、ニッと笑った。無邪気に笑う顔を見て、やっぱり好きだなって思った。
その言葉を面と向かっては、まだ言えないと思うけど。
2017.07.13
かたおもい