静かな夜だ。アーク本部の巨大なラウンジも、今はほとんどの職員が引き上げ、非常灯だけが床を鈍く照らしている。
その静寂の中で、電子音だけが小さく響いていた。
「……あ、もう! また死んだ!」
ソファに深く身を沈めた向日葵が、携帯ゲーム機を相手に小さく叫ぶ。彼女の肩では、丸っこいフクロウの一羽が迷惑そうに片目を開けた。
彼女は今夜も夜更かしをしているらしい。ラフなTシャツとショートパンツという無防備な姿で、完全にゲームの世界に没入していた。
「おや。そんなに熱中して、俺を迎えてもくれないのか?ずいぶんと冷たい恋人を持ったものだな」
声は、すぐ背後からした。
向日葵が驚いて振り返ると、いつもの白衣ではなく、黒いシャツをラフに着こなしたセレスが、薄紫の瞳を細めて立っていた。医務室での仕事帰りだろうか、その指先からはまだ薬草の香りが微かに漂う。
「セレス! おかえり。びっくりした、気配なかったよ」
「君が集中しすぎていただけだ。……それで? ボスは倒せそうなのか?」
セレスはフクロウを刺激しないよう、ゆっくりとした動作で向日葵の隣に腰を下ろした。ソファが軋み、二人の距離が詰まる。ふわりと、彼の色気のある香りが向日葵の鼻をくすぐった。
「うーん、それが全然。こいつの攻撃パターン、読めなくて」
「ふふ。攻略法が知りたいか? だが、対価は高くつくぞ」
セレスはそう言うと、ゲーム機を持つ彼女の左手を、そっと自分の手で覆った。
向日葵の肩が小さく跳ねる。
「わっ……なに?」
「検温だ。夜更かしで体調を崩されては、専属医として面目が立たない」
彼の指先は、設定で知る通り、他人の体温を確かめる時、異様に優しい。
けれど、今の向日葵には、それが業務上の優しさではないことが分かってしまう。
彼の指が、彼女の手首の内側、柔らかい皮膚の上を滑り、脈を確かめるように軽く触れる。
《ライフ・タッチ》。
彼が触れた瞬間、向日葵の心臓の音が、緊張が、そして彼に向けられた純粋な好意が、セレスの心にダイレクトに流れ込んでくる。
(……ああ、温かい)
セレスは内心でため息をついた。
命の終わりばかりに触れてきた彼の指先にとって、この混じり気のない生命の脈動は、あまりにも眩しい。真っ直ぐで、何の疑いもなく、ただ「ここにある」温もり。
「……少し、熱が高いな。ゲームのせいか? それとも」
セレスはわざと顔を近づけ、彼女の青い瞳を覗き込んだ。
「俺のせいか?」
「な……! ち、違うし!」
「そうか?」
セレスは楽しそうに微笑む。
彼は知っている。この初心な少女が、恋愛経験の少ない彼女が、自分のペースについて来られないことを。
他の女たちにするように、このまま彼女の唇を塞ぎ、その柔らかな肌に触れ、生命力を吸い尽くすように貪ることもできる。
むしろ、そうしたい衝動が喉まで出かかっている。
彼の内には、命への諦観と、本気で愛して失うことへの恐怖が渦巻いている。この温もりを知ってしまえば、もう戻れない。
(だが……)
セレスは、顔を赤らめて目を逸らす向日葵を見た。
彼女の豊かな胸が、Tシャツ越しにも分かる。その無防備な姿が、彼の庇護欲と独占欲を同時に煽った。
(今、この花を散らすのは、あまりにも惜しい)
彼は、この関係を「遊び」にしたくなかった。
彼女の「すり抜けてしまうかもしれない」という孤独を、自分が埋められる唯一の存在でありたかった。
だから今は、「ペースを合わせる」という名の我慢を、彼自身が楽しむことに決めている。
「……セレス、近い」
「そうか? だが、こうしていないと、君がどこかへ“すり抜け”てしまいそうでな」
その言葉に、向日葵が息を飲む。
彼女が一番欲しい言葉を、彼は知っていた。
「私は……すり抜けないよ。セレスが、こうして掴んでてくれるなら」
真っ直ぐな瞳。
それは、セレスの余裕を打ち砕くのに十分すぎた。
「……本当に、君は」
セレスは低く呟くと、掴んでいた彼女の手の甲を引き寄せ、そこにそっと唇を落とした。
治療でもなく、遊びでもない、ただ一つの純粋な口づけ。
「!?」
「今夜は、ここまでだ。あまり俺を煽らないでくれ、俺の可愛い小鳥」
セレスはゆっくりと立ち上がる。その表情は、いつもの余裕を取り戻していた。
「ボスを倒したら、ちゃんとベッドで寝るんだぞ。君の寝顔は、俺だけのものにしておきたいからな」
ひらりと手を振り、ラウンジを去っていくセレス。
残された向日葵は、真っ赤な顔で、自分の手の甲を見つめることしかできなかった。
電子音は、とっくに止まっていた。
---
あの後、向日葵はゲームどころではなかった。
セレスの指先の感触、手の甲に落ちた唇の柔らかさ、そして「俺だけのものに」という低い声。
そのすべてが、彼女の小さな心臓をこれ以上ないほどにかき乱していた。
(……だめだ、全然、集中できない)
早々にゲームを切り上げ、ラウンジのフクロウたちに「おやすみ」を告げると、彼女は逃げるように自室に戻った。
ふかふかのベッドに倒れ込む。シーツの冷たさが、火照った頬に心地よかった。
(……セレス、今ごろ何してるかな)
(あの人、本当に私のこと……好きなのかな)
彼はいつも飄々として、真意を掴ませない。女性の扱いにも慣れている。
自分は、彼の「遊び」の一つなのではないか。
その不安が、パトスに「ここにいてもいい」と認められたいと願う孤独感と重なって、胸がチリチリと痛む。
(ううん、でも、さっきのキスは……優しかった)
信じたい。信じたいのに、経験のなさが邪魔をする。
ぐるぐると考えが巡る。心臓が早鐘を打つ。
その時だった。
フワリ、と。
世界の手触りが、急激に失われていく。
ベッドの感触が消え、シーツの匂いが遠のく。
「あ……っ、ま、また!?」
《フェイズ・スリッパー》。
彼女のスキルは、感情が昂るとコントロールが効かなくなる悪癖があった。
セレスのことで頭がいっぱいだった彼女の意識は、その「昂り」をトリガーにしてしまったのだ。
「いや、止まっ……!」
彼女の制止も虚しく、世界は位相をずらし、再構築される。
ドン、と硬い床に背中を打った。
「いった……」
見慣れた自室の天井ではない。
薄暗い闇の中、空気を満たすのは、さっきラウンジで嗅いだよりもずっと濃密な、薬草の匂い。
そして、彼がプライベートで使っている香水の、甘く落ち着いた香り。
「……まさか」
ガタン、と彼女が何かの瓶を倒してしまう。
その音に、部屋の主が気づいた。
「……誰だ?」
パチリ、と間接照明のスイッチが入る。
そこに立っていたのは、数分前に別れたはずの男だった。
「……セレス」
彼は、黒いシャツのボタンを半分ほど外し、艶やかな桃色の髪をラフに解いていた。
医務室でもラウンジでもない、完全にリラックスした、無防備な姿。
その薄紫の瞳が、床に座り込んだままの向日葵を捉え、驚きに見開かれた。
「……ひまわり?」
一瞬の沈黙。
セレスは、状況を理解し、そして——深く、深いため息をついた。
「はぁ……。君は……本当に、俺の自制心を試すのが、心底好きなようだな」
彼は壁に寄りかかり、わざとらしく額に手を当てた。その表情は、困惑と、それ以上に、抑えきれない何かが混じっている。
「ご、ごめん! わざとじゃなくて! その、考え事してたら、急に……!」
「考え事?」
セレスが、面白そうに片眉を上げる。
「ほう。俺の部屋に“迷い込む”ほどの考え事とは、一体何を?」
彼はゆっくりと歩み寄る。
その中性的な美貌が、今は獲物を前にした獣のように妖しく見えた。
向日葵は、自分がまだTシャツとショートパンツ姿であることに気づき、慌てて膝を抱えた。
豊かな胸のラインも、剥き出しの太ももも、今の彼には毒でしかない。
「あ……う……」
しどろもどろになる向日葵を見て、セレスは「ふふ」と喉の奥で笑った。
「情報戦略局(きみのところ)は、随分と実践的な訓練もするらしい。まさか、上司(パトス)の差し金か? それとも、君からの“お誘い”か?」
「ちがう! 違います!」
必死に首を振る彼女の純粋な反応に、セレスは目を細めた。
(……ああ、駄目だ。可愛すぎる)
彼の《ライフ・タッチ》は、触れなくとも、この距離でも、彼女の純粋な好意と、今の極度の緊張と、かすかな「期待」の脈動を感じ取ってしまう。
それは、彼の諦観を揺るがす、甘い毒だ。
彼は、これ以上ないほど優雅な動作で屈み込むと、彼女の目の前にあった棚から、薄手のブランケットを取った。
そして、それをふわりと、彼女の肩にかけた。
「……風邪を引く。これでも羽織っておけ」
「あ、ありがと……」
その時。
ブランケットをかける指先が、わざと、彼女の首筋に触れた。
「——ひゃっ!?」
ゾクゾク、と背筋を走る、甘い痺れ。
彼の指は、そのまま彼女の髪をそっと梳き、耳元に顔を寄せた。
「……言っただろう、ひまわり」
吐息がかかるほどの距離で、低い声が囁く。
「君のペースに合わせる、と。……だがな」
彼は、彼女の小さな耳たぶを、指先でわざとらしくなぞった。
「こういう“不意打ち”は、歓迎するが……俺も男だ」
「……!」
「あまり、理性を試すような真似はしないでくれるか。……でないと、このまま君を、この薬草棚の肥やしにしてしまいそうだ」
それは、セレスなりの最大の警告であり、そして、抑えきれない独占欲の表れだった。
彼は、真っ赤になって固まる向日葵を満足そうに見下ろすと、立ち上がり、自室のドアを指差した。
「さあ、ボスは倒せたのか? 倒せていないなら、今夜はもうおとなしく寝ることだな」
「う……」
「お帰り、俺の可愛い小鳥。……次に君がここに来る時は、ちゃんと、俺がこの手で君を抱きしめて、招き入れる時だ」
ドアを開け、優しく背中を押される。
部屋から追い出された向日葵は、セレスの匂いが染み付いたブランケットを握りしめたまま、アークの静かな廊下で、しばらく動けなかった。
翌朝、向日葵は酷い寝不足だった。
昨夜、セレスの部屋から逃げ帰った後、彼の匂いが染み付いたブランケットに顔を埋めたまま、ベッドの上で悶え続けたからだ。
(……どうしよう。絶対、変な女だと思われた)
(でも、あの時のセレス、ちょっと怖かった。けど……)
『次に君がここに来る時は、ちゃんと、俺がこの手で君を抱きしめて、招き入れる時だ』
あの低い声を思い出すだけで、心臓が跳ねて、また《フェイズ・スリッパー》が暴発しそうになる。
彼女は「ここにいる」ことを確かめるように、ぎゅっと自分の手を握りしめた。
「……お腹すいた」
思考を強制的に切り替え、彼女はふらふらとカフェテリアに向かった。
時刻はすでに昼に近い。まばらな職員に混じってトレイを取り、空いている席を探す。
と、その時。
「奇遇だな、ひまわり。今、君のことを考えていたところだ」
すぐそばから、あの落ち着いた、色気のある声がした。
ビクリ、と肩を震わせて振り返ると、セレスが白衣姿で、薬草茶の入ったカップを片手に微笑んでいた。
完璧な、外面の良い、いつもの医療局の専属医の顔だ。
「セ、セレス! お、おはよう……」
「もう昼だがな。……昨夜は、よく眠れたか?」
その言葉に、向日葵の顔が一気に熱くなる。
昨夜の出来事がフラッシュバックし、彼女は慌てて目を逸らした。
「う、うん。まあ……」
「そうか?」
セレスは彼女の動揺を面白がるように、わざとらしく首を傾げた。
そして、彼女のトレイを一瞥し、眉をひそめる。
「……ずいぶんと質素な食事だな。寝不足か? 顔色もあまり良くない。俺の調合した薬草(くすり)が要るか?」
「だ、大丈夫! これは、その……」
「ふふ。まあ、座れ」
セレスは、当然のように彼女の向かいの席に腰を下ろした。
二人きりの空間ではない。周りには他の職員もいる。それなのに、彼が正面に座るだけで、まるで世界から切り離されたような濃密な空気が流れる。
「……あの、昨日は、ごめん。本当に、事故で……」
向日葵が蚊の鳴くような声で謝ると、セレスは「分かっている」と静かに笑った。
彼はテーブルの上に肘をつき、白衣の袖からのぞく美しい指を組む。
そして、周囲には聞こえないよう、声を潜めた。
「君の心音(こころ)は、正直だからな。……触れずとも、手に取るように分かる」
彼の薄紫の瞳が、じっと向日葵を射抜く。
まるで《ライフ・タッチ》で直接触れられているかのように、心臓の奥まで見透かされている気がした。
「……昨夜、俺の部屋から持ち帰ったブランケット。あれは、もう君にやろう」
「へ!?」
「今も、君の部屋から微かに俺の匂いがする。……まあ、すぐに君自身の、甘い匂いに上書きされるだろうが」
彼は、なんでもないことのように続ける。
「だが、一つ問題があってな」
「も、問題?」
セレスは、楽しそうに目を細めた。
「ああ。昨夜、君が俺の部屋に“落ちて”きた時」
彼は、一瞬だけ、昨夜の無防備な彼女を思い出すように、スッと視線を走らせた。
「……正直、危なかった」
「え……」
「俺も、一応は健康な男だ。好きな女が、あんな無防備な格好で、自分のテリトリーに転がり込んできたんだ。……もう少しで、手荒く“治療”してやるところだった」
手荒い治療、という言葉の裏にある意味を察し、向日葵はリンゴのように真っ赤になった。
「君は、俺が我慢しているのを知っていて、わざとやっているのか?」
「ち、違う! 本当に、セレスのこと考えてたら、なんか、胸が……その、ドキドキして……」
そこまで言って、向日葵は「あ」と口を噤んだ。
自白してしまった。
セレスは、満足そうに深い笑みを浮かべた。
「……なるほど。俺のことで頭がいっぱいで、力が暴走した、と。それは、実に喜ばしい」
彼はそっと手を伸ばし、テーブルの上の、彼女の指先に軽く触れた。
ピリ、とした微かな感覚。
彼が感じ取ったのは、彼女の純粋な好意と、極度の緊張、そして、彼に触れられたいという、本人も気づいていない切実な「渇望」だった。
(……ああ、本当に、この温もりは)
(手放し難い)
彼の奥底にある「諦観」が、この温もりによって溶かされていく感覚。
それは、彼にとって救いであり、同時に、最も恐れていた「執着」の始まりだった。
「ひまわり」
「は、はい!」
「今度の任務、無事に終わらせろ」
「え? う、うん。もちろん」
「……それが済んだら、褒美をやろう」
セレスは、薬草茶を一口含み、ゆっくりと続けた。
「君の力が暴走しないよう、俺が『別のこと』で君の頭をいっぱいに満たしてやる」
「……?」
「君のその可愛いフクロウたちに、邪魔されない場所で。……俺の匂いが染み付いた、あのブランケットの上で」
セレスは立ち上がり、空になったカップをトレイに乗せた。
「……覚悟しておけよ、俺の小鳥。もう、逃がしてやるつもりはない」
言い残し、彼は優雅な足取りでカフェテリアを去っていく。
残された向日葵は、その場に凍りついたまま、目の前の質素な食事が、まったく喉を通らなくなりそうだった。
カフェテリアでの宣言から、数日が過ぎた。
向日葵は、情報戦略局(パトス)から命じられた単独の潜入任務を終え、疲労困憊で自室のベッドに倒れ込んだところだった。
今回の任務は、物理的な壁ではなく、厳重な電子セキュリティの“隙間”をすり抜けるという、神経をすり減らすものだった。
《フェイズ・スリッパー》は、彼女の孤独感を色濃く反映する。
誰にも見られず、誰にも触れられず、ただ“存在しない”かのように通り抜ける。その感覚は、任務が終わった今も、じっとりと彼女の心にまとわりついていた。
(……疲れた)
フクロウたちが心配そうに彼女の枕元に集まってくる。その羽毛に指を埋め、確かな「手触り」を感じることで、かろうじて自分が“ここ”にいることを確認する。
(セレス……会いたいな)
彼が言った「褒美」という言葉。
あれから、彼とは医務室ですれ違う程度で、まともな会話はできていない。
彼は本当に、あの言葉を覚えているだろうか。それとも、いつものように揶かっているだけだったのだろうか。
不安が胸をよぎった、その時。
コン、コン。
控えめなノックの音に、向日葵は勢いよく体を起こした。
こんな時間に、彼女の部屋を訪ねてくる人間は限られている。
「……はい!」
「俺だ」
ドアの向こうから聞こえたのは、待ち焦がれた低い声。
向日葵が慌ててドアを開けると、そこには、白衣ではなく、ラフな黒のニット姿のセレスが立っていた。
その手には、小さな医療用の保冷ボックスが握られている。
「……お疲れ様、ひまわり。無事に帰還したようで安心した」
「セレス! どうして……」
「“褒美”の約束を、忘れたとは言わせないぞ?」
彼は、いつもの余裕の笑みでそう言うと、当然のように部屋に入ってきた。フクロウたちが、一斉に彼を見つめる。
「君の上司(パトス)は、相変わらず人使いが荒い。君の精神疲労(ストレス)の波長が、医務室(ここ)まで届いていた」
「え……」
「《ライフ・タッチ》は、精密すぎてな。……君が不安になっているのが、手に取るように分かって、仕事にならなかった」
セレスは保冷ボックスをテーブルに置くと、中から小さな瓶を取り出した。
「疲労回復の薬だ。俺の特製でな。……まあ、口実だが」
彼は、向日葵の目の前に立つと、その整いすぎた顔をゆっくりと近づけた。
薬草と、彼自身の甘い香り。
もう、逃げ道はない。
「……あの、セレス。私、任務帰りでお風呂もまだだし……」
「知っている」
「だから、その、褒美っていうのは、また今度じゃ……」
「駄目だ」
セレスの声が、急に低くなった。
彼は、戸惑う向日葵の頬に、そっと手を伸ばした。
彼の冷たい指先が、火照った肌に触れる。
「……っ」
指が触れた瞬間、彼女の不安、任務で感じた孤独感、そして彼に会いたかったという切実な思いが、奔流のようにセレスの心に流れ込んできた。
(……ああ、そうか。君は、こんなに)
セレスの表情から、いつもの笑みが消えた。
彼の薄紫の瞳が、苦しそうに、そして愛おしそうに、細められる。
彼が抱えてきた「諦観」が、この純粋な生命の揺らぎによって、音を立てて崩れていく。
「ひまわり。君は……まだ俺を疑っているのか?」
「え?」
「俺が、遊びで君に触れていると。……いつか、この関係も“すり抜け”て、消えてしまうと、怯えているんだろう」
図星だった。
彼女の青い瞳が、不安に揺れる。
その反応を見て、セレスは自嘲するように、ふ、と息を吐いた。
「……無理もないか。俺は、そういう風に生きてきた」
「……セレス」
「だがな、ひまわり」
彼はもう片方の手で、彼女の腰をぐっと引き寄せた。
Tシャツ越しに、彼の指先の体温がダイレクトに伝わる。
「君のその温もりを知ってしまった今、もう、手放す方法を思い出せない」
彼の指が、彼女の顎を捉え、上を向かせる。
至近距離で見つめ合う。
「君が“すり抜ける”のが先か。俺が君の孤独ごと、この腕で“掴ま”えて、二度と離さなくなるのが先か」
「……!」
「試してみようじゃないか」
それは、もう問いかけではなかった。
セレスの唇が、ゆっくりと、しかし有無を言わさぬ強さで、彼女の唇に重ねられた。
「ん……っ!」
初めての、本当のキス。
手の甲や頬への、あの優しいものではない。
彼の舌が、彼女の柔らかい唇をこじ開けようと、熱く探ってくる。
向日葵は、どう反応していいか分からず、固く目を閉じた。
(苦しい、けど、セレスの味がする……)
薬草のわずかな苦味と、彼自身の甘さ。
初心な彼女が抵抗できないのをいいことに、彼はさらに深く、彼女の口腔内を貪るように探る。
それは、彼女のペースに合わせると言っていた男の行動とは思えない、独占欲に満ちたキスだった。
「……ふ……ぁ……」
息が続かなくなり、向日葵が彼の胸を弱く叩く。
セレスは名残惜しそうに唇を離したが、その額は彼女の額にコツンと合わせたまま、荒い息を整えていた。
「……はぁ。……息の仕方も、忘れたか? 俺の可愛い小鳥」
その瞳は、諦観どころか、激しい熱に潤んでいた。
「……これが、“褒美”だ」
彼は、真っ赤になって涙目で見上げてくる向日葵の唇を、もう一度、今度は啄むように優しく触れた。
「……そして、これは“前金”だ。……今夜は、もう帰さない」
セレスは、彼女の体を軽々と抱え上げると、フクロウたちが見守る中、寝室のベッドへと向かった。
《フェイズ・スリッパー》が暴走する隙もないほど、強く、確かな腕に抱かれたまま。
セレスの腕に抱えられたまま、向日葵はフワリとベッドのスプリングに沈められた。
自室の、寝慣れたはずのベッド。だが、今はまったく違う場所に感じる。
目の前には、自分に覆いかぶさるようにして手をつく、セレスの妖艶な顔があった。
「……フクロウたちに、見られてる」
向日葵が、かろうじて絞り出した言葉はそれだった。枕元のフクロウたちが、丸い目で二人をじっと見つめている。
「ふふ。……観客がいる方が、燃えるか?」
「そういうこと言って……!」
「気にするな。どうせ、すぐに君の可愛い声で、何も聞こえなくなる」
セレスはそう囁くと、ベッドに片膝を乗せ、完全に彼女の逃げ場を塞いだ。
その薄紫の瞳は、もう冗談を言っている色ではない。
獲物を定め、その命(いのち)の味を確かめるような、深い熱に濡れていた。
「セレス……私、まだ心の準備が……」
「準備? ……ああ、そうだったな。君は初心(うぶ)だった」
彼はゆっくりと指を伸ばし、彼女の頬を撫でた。
任務の汚れもそのままの、少し汗ばんだ肌。
だが、彼にとってはどうでもよかった。
「だが、残念だったな、ひまわり。俺は、もう待てない」
指先が、頬から首筋へと滑る。
《ライフ・タッチ》。
彼が触れた瞬間、向日葵の恐怖、戸惑い、それ以上に、彼に受け入れられたいという切実な「渇望」と、昂る「熱」が、セレスの心に流れ込んできた。
「……っ、こんな、熱くなって」
セレスは苦しげに息を吐いた。
「これが、君の“答え”だろう? 俺が触れるのを、本当は望んでいたくせに」
彼の指は、まるで精密な医療器具のように、しかし熱を帯びた官能で、彼女のTシャツの裾に触れた。
「や……だめ……」
「何がだめなんだ?」
セレスは、そのTシャツの裾を、ゆっくりと、しかし確実に捲り上げていく。
白い肌が、月明かりと間接照明に照らされて、露わになっていく。
隠されていた柔らかな腹部、そして、ショートパンツのラインぎりぎりまで。
「……っ!」
向日葵は恥ずかしさに身を捩ろうとするが、セレスのもう片方の手が、彼女の手首を優しく、しかし強くベッドに押さえつけていた。
抵抗できない。
「……美しい」
セレスは、吐息混じりに呟いた。
彼が見ているのは、ただの肌ではない。
生命力に満ち溢れ、彼を求めて熱を持つ、極上の「温もり」そのものだ。
彼の指先は、露わになった肌の上を、まるで旋律を奏でるように滑り始めた。
くすぐったくて、それでいて、ゾクゾクするような快感。
指が通った軌跡だけが、業火のように熱い。
「あ……ぅ……セレス……やめ……」
「やめない。……君は、俺がどれだけ我慢していたか、知らないだろう」
彼の顔が、ゆっくりと彼女の胸元に近づいていく。
Tシャツの上からでも分かる、その豊満な膨らみ。
彼は、そこに顔を埋めるようにして、深く息を吸い込んだ。
「……甘い匂いだ。俺の薬草の匂いより、よほど、効きそうだ」
諦観など、どこにもない。
あるのは、この温もりを、この命を、独り占めにしたいという、剥き出しの独占欲だけ。
彼は顔を上げ、もう一度、彼女の瞳を真正面から射抜いた。
「ひまわり。もう、君は“すり抜け”られない」
「……!」
「この腕からも、このベッドからも。……そして、俺のこの“渇望”からも」
彼は、押さえつけていた彼女の手首を解放すると、その手を自らの黒いニットに導いた。
「……さあ、どうする? このまま俺に、君のすべてを“治療”させるか?」
「……それとも、君の手で、俺の“病”を暴いてみるか?」
それは、初心な彼女にはあまりにも酷な、甘い選択肢だった。
セレスは、彼女の答えを待たず、その潤んだ唇に、再び深く、今度はもう逃がさないという意志を込めて、覆いかぶさっていった。
フクロウたちの羽ばたく音だけが、室内に響いていた。
セレスの唇が、今度はもう逃がさないという意志を持って、深く、貪るように塞がってくる。
向日葵は、そのあまりにも強引な口づけに、息もできずに喘いだ。
「ん……っ、せ、セレス……まって……♡」
「待たない」
唇が離れたのは一瞬。セレスは、彼女の手を掴んでいた自らのニットに、さらに強く押し付けた。
「……俺の心臓の音を聞け。君のせいで、こんなにうるさい。……触れ」
彼は、彼女の小さな手を、無理やりニットの裾から滑り込ませた。
「あっ……♡」
ひんやりとした彼女の手のひらが、セレスの灼けつくように熱い素肌に、ダイレクトに触れた。
鍛えられた腹筋の硬さと、生命(いのち)そのもののような肌の熱。そして、ドクドクと激しく脈打つ鼓動が、彼女の《フェイズ・スリッパー》のせいで感覚が鋭敏になった指先に、ダイレクトに伝わってくる。
「……あつい……♡ セレスの体、すごく熱い……♡」
「ああ、君のせいだ。……君という“病”が、俺の全身を、もうとっくに蝕んでいる」
彼の声は、熱に浮かされたように掠れていた。
諦観で冷え切っていたはずの生命が、今、目の前の温もりを求めて、これ以上ないほどに燃え上がっている。
「この熱は、君にしか治せない」
セレスは、彼女の素肌に触れていた手を、さらに上へと這わせた。
捲り上げたTシャツの隙間から、その豊満な膨らみを包む、薄い布(ブラ)の感触に触れる。
「ひゃっ……!?♡」
「……ふふ。ここも、ずいぶんと熱を持っているな」
指先が、その中心にある小さな突起を、布越しにわざとらしくなぞる。
向日葵の体が、ビクンッ!と大きく跳ねた。
「だ、だめっ……そこ……っ♡」
「口では“だめ”か。……だが、体は? 俺の《ライフ・タッチ》は、君の本当の“声”を聞き逃さない」
指が触れるたび、彼女の体温が、快感が、そして恥じらいが、セレスに流れ込んでくる。
それは、彼が今まで味わったことのない、純粋で、強烈な生命の奔流だった。
「……ああ、もう、我慢できない」
セレスは、彼女のTシャツを掴むと、一気に引き剥がすように捲り上げた。
「やっ、フクロウたちが……見てるっ……♡」
向日葵が、最後の抵抗のように顔を覆う。
だが、セレスは構わず、彼女の豊満な胸元に顔を埋めた。
「……見せておけ。……君が、誰のものになるのかを」
布越しに、その柔らかい谷間に、熱い吐息を吹きかける。
そして、その先端を、服の上から、まるで生命(いのち)を吸い尽くすかのように、強く吸い付いた。
「んっ……あぅ……♡♡」
濡れた布が、肌に張り付く。
経験のない刺激に、向日葵の思考は真っ白になった。
寂しさも、不安も、すべてがこの強烈な快感に上書きされていく。
「……ひまわり。もう、君はどこにも“すり抜け”られない」
セレスは顔を上げ、その獣のような熱を帯びた瞳で、彼女を射抜いた。
「俺が、君のすべてを掴まえている。……この腕で。この唇で」
彼は、彼女のショートパンツのボタンに、その美しい指をかけた。
「……そして、この“熱”で」
もう、彼女に「ノー」という選択肢はなかった。
セレスの諦観を溶かしたその体温で、彼女の孤独が、今、完全に満たされようとしていた。
セレスの指が、彼女のショートパンツのボタンに、ゆっくりと触れた。
金属の冷たさとは違う、彼の指先だけが持つ、命の脈を探るような微かな熱。
「あ……っ♡」
向日葵の体が、恥ずかしさと期待で大きく震えた。
もう、ここまできたら、何をされるかは分かる。分かっているのに、心が追いつかない。
「……何をそんなに震えている?」
セレスは、わざと指を止めたまま、彼女の耳元に囁いた。
その声は、熱に浮かされているのに、どこまでも理性的で、冷酷なほどに優しい。
「まだ、何も奪ってはいない。……ただ、君の熱が本当かどうか、確かめているだけだ」
ボタンに触れていた指は、しかし、そこを解くことはしなかった。
ゆっくりと、焦らすように。
指先は、ショートパンツの布地の上を滑り、彼女の柔らかい下腹部をなぞる。
「ひ……っ♡」
「ふふ。……ここも熱いな」
指は、さらに上へ。
さきほど捲り上げられ、露わになった彼女の素肌へ。
Tシャツの裾と、ショートパンツの隙間。その無防備な領域を、彼の指が、まるで薬草をすり潰すかのように、ねっとりと這っていく。
「や……ぁ……♡ そこ、だめ……♡」
「君の肌は、本当に正直だ」
セレスは、うっとりと目を細めた。
「俺の指先が触れるたび、こうして熱を訴えてくる。……もっと触れ、と。もっと、深く……と」
彼の《ライフ・タッチ》が、指先から流れ込む彼女の純粋な官能を、余すことなく感じ取っていた。
寂しがりで、人の温もりに飢えていたのは、彼だけではなかった。
この少女もまた、「すり抜けられない」確かな繋がりを、心の底から渇望していたのだ。
「……セレス……♡」
向日葵が、潤んだ青い瞳で彼を見上げる。
その、縋るような、それでいて彼を求めている眼差しが、セレスの最後の理性を焼き切った。
「……ああ、そうだ。その目だ」
彼は、ゆっくりと彼女の肌から指を離すと、今度は、さきほど自分が濡らした、彼女の胸元へと視線を移した。
薄い布一枚が、その豊かな膨らみを隠している。
だが、その中心は、彼の行為によってくっきりと形を主張し、濡れた布地が肌に張り付いていた。
「……これは、ひどいな。……こんなに濡らしてしまった」
「み、見ないで……♡」
「なぜ? ……こんなに、可愛く反応しているのに」
セレスは、その濡れた布の上から、もう一度、今度は手のひら全体で、その柔らかさを包み込んだ。
「あぅ……っ♡♡」
「これでは、風邪を引いてしまうな。……専属医として、治療(なお)してやらないと」
その言葉と同時に、セレスの手が、彼女の背中へと滑り込んでいく。
華奢な背骨の感触を確かめるように、指が下へと降りていき——そして、目的の場所を見つけた。
ブラジャーの、小さなホック。
「ま、待って、セレス……!♡」
向日"葵"の"顔"が、"羞恥"で"真っ赤"に"染まる"。
セレスは、そのホックに指をかけたまま、意地悪く、彼女の耳に唇を寄せた。
「……君が“待て”と言うたびに、俺は君を待たせたくなくなる」
「え……♡」
「逆効果だぞ、俺の可愛い小鳥」
プチ、と。
指先で、いとも簡単に、その留め金が外される。
背中を支えていた最後の緊張が解け、隠されていたものが、重力に従って解放されそうになる。
向日葵は、自由になった胸を押さえようと身を捩るが、セレスはそれを許さなかった。
「……ようやく、君の本当の“熱”に、触れられる」
セレスは、ゆっくりと、その濡れた布をずらし始めた。
まだ、完全には奪わない。
焦らすように、ゆっくりと。
彼自身の諦観を溶かした、その温もりの源に触れるために。
セレスの指が、背中でその小さな留め金を外した。
カチリ、という乾いた音が、やけに大きく部屋に響く。
向日葵の体が、びくりと強張った。
支えを失った薄い布が、ふわりと肌から離れる感覚。
「あ……っ♡」
彼女は反射的に、その自由になった胸を腕で隠そうとした。
だが、セレスはそれを許さない。
彼は、彼女が腕を交差させるより早く、その両手首を掴むと、優しく、しかし抗いがたい力で、彼女の頭上の枕に押さえつけた。
「だ……だめっ……♡ はずかしい……!♡」
「いいや。……見せろ」
その声は、もう揶揄う響きを含んでいなかった。
静かだが、絶対的な、医師の診断にも似た「命令」だった。
セレスは、彼女のTシャツの裾を掴んでいたもう片方の手で、ゆっくりと、焦らすように。
その捲り上げたTシャツを、解放されたブラジャーごと、彼女の頭上へと引き抜いていった。
「あ……ぁ……♡♡」
布地が肌を擦る感触。
そして、ついに、夜の涼しい空気が、彼女の柔らかな素肌に直接触れた。
「……っ!」
向日葵は、羞恥に目を固く閉じる。
Tシャツも、下着も、すべて奪い去られた。
小麦色の肌とは対照的な、柔らかく白い、豊かな双丘が、月明かりの下に完全に露わになる。
フクロウたちの、無垢な視線さえもが肌を焼くようだ。
セレスは、しばらくの間、何も言わなかった。
ただ、その薄紫の瞳で、彼女のすべてを検分するように、じっと見つめていた。
それは、彼が今まで数え切れないほどの「命」を見てきた目だった。
だが、今、彼の目に映っているのは、終わりに向かう儚い命ではない。
彼を求め、彼によって熱を持ち、恥じらいに震え、生命力に満ち溢れた、眩いほどの「始まり」だった。
「……ああ」
彼の喉から、感嘆とも、ため息ともつかない、深い息が漏れた。
「……これが、君の“熱”の源か。……なんと、美しい」
彼は、押さえつけていた彼女の手首を解放した。
だが、向日葵はもう、体を隠そうとはしなかった。
彼のその真剣な眼差しに、金縛りにあったように動けなかった。
セレスは、ゆっくりと、その長い桃色の髪が彼女の肌を掠めるほどに、顔を近づけた。
そして。
まだ、手では触れない。
彼は、その豊かな膨らみの、柔らかい谷間に、そっと唇を寄せた。
そして、熱を確かめるように、舌先で、その肌をなぞった。
「ひゃ……っ!?♡♡ つ、めたい……っ♡」
熱を持った肌に、彼の舌の感触が、あまりにも鮮烈だった。
向日*葵*の"背"筋"が"、"快感"に"弓"なり"になる"。
「ふふ。……驚いたか?」
セレスは意地悪く笑い、今度は、その頂点で硬く主張している、淡い色の突起に顔を寄せた。
「ここは、熱で炎症を起こしているようだ。……特別な“治療”が必要だな」
「な……なにを……♡」
「消毒だ」
そう言うと、彼は、その片方を、まるで熟れた果実を味わうかのように、深く、熱く、口に含んだ。
「んんっ……!♡♡♡ あ、あ、あ、だめ、セレス……!♡♡」
吸い付かれ、舌で弄ばれる、未知の感覚。
経験のない向日葵の体は、その直接的な刺激に、もうどう反応していいか分からない。
快感と羞恥で頭が真っ白になり、ただ喘ぐことしかできなかった。
「あ……♡ 溶け、ちゃう……♡♡」
「……まだだ」
セレスは、名残惜しそうに唇を離し、その濡れて艶めく痕跡を、満足そうに見つめた。
彼の《ライフ・タッチ》は、彼女の心臓が、快感で破裂しそうなくらいに高鳴っているのを、正確に感じ取っていた。
(……ああ、もう、止まらない)
彼の内なる諦観は、この純粋な生命の熱によって、完全に焼き尽くされていた。
彼の指が、今度は迷いなく、彼女の腹部を滑り降りていく。
その目的地は、一つ。
まだ彼女を守っている、最後の布地。
「ひまわり」
「は……はい……っ♡」
吐息も絶え絶えな彼女に、彼は低く、しかしはっきりと告げた。
「もう、君は俺から“すり抜け”られない。……俺が、君のすべてを“ここに”縫い付けてやる」
彼の指が、ショートパンツのボタンにかけられる。
今度こそ、もう、ためらいはなかった。
ゆっくりと、しかし確実に、最後の壁が、その美しい指によって解かれていく。
カチ、と。
乾いた、小さな音が響く。
セレスの指が、向日葵のショートパンツのボタンを、いともたやすく解いた。
「あ……♡♡」
向日葵の体が、羞恥でビクンと跳ねた。
もう、彼を阻む壁は、この薄い布一枚と、その下にある、もっと薄い布だけ。
彼女は、枕に押さえつけられてもいないのに、もう腕で体を隠すことさえ忘れていた。
ただ、セレスの次の行動に、息を詰めて耐えている。
「……震えているな、ひまわり」
セレスは、解いたボタンの隙間に、冷たい指先をそっと滑り込ませた。
まだ、何も奪わない。ただ、布越しに、彼女の下腹部の熱を確かめるように。
「ひゃっ……!♡ なに、する……♡」
「確認しているだけだ。……君の熱が、どこまで俺を求めているのかを」
その指は、すぐに引き抜かれ、今度は、小さな金属の引き手——ファスナーにかけられた。
ジ……、と。
静かな部屋に、ゆっくりと、絶望的に滑らかな音が響く。
まるで、彼女の最後の理性を断ち切るように。
布が開かれ、その下にある、守りの薄い布地——白地に小さなフクロウの柄がついた、彼女らしい下着(パンツ)が、露わになった。
「……!」
向日"葵"は、"羞恥"の"限界"に、"とうとう"両手"で"顔"を"覆っ"て"しまっ"た"。
「……ふふ。フクロウか。君らしい」
セレスは、その子供っぽさの残る選択に、楽しそうに喉を鳴らした。
だが、その瞳は、まったく笑っていない。
露わになった、彼女のすべてを見定めるように、熱く、ねっとりと舐めるように見つめている。
「……隠すな、顔を」
「だ……だって……♡ はずかしい……こんな……♡」
「俺だけに見せる顔だろう。……それとも、他の男にも、こんな姿を?」
「そ、そんなわけない!♡ セレスだけ……っ♡」
「知っている」
セレスは、彼女のその答えに満足そうに頷くと、顔を覆う彼女の腕を、優しく掴んだ。
そして、その指を一本一本解くように、自らの指と絡めさせる。
「君のその恥じらいも、熱も、全部、俺のものだ」
彼は、絡めた彼女の手を、もう一度、彼女の頭上の枕へと導き、片手で押さえる。
そして、空いたもう片方の手で。
開かれたショートパンツの、その縁(ふち)に指をかけた。
「……もう、“すり抜け”られないな」
その言葉と同時に、セレスは、ゆっくりと。
本当にゆっくりと、彼女の肌の感触を確かめるように。
そのショートパンツを、彼女の腰から、下へと引きずり下ろし始めた。
「ん……っ♡♡」
布地が、熱を持った太ももを擦り抜けていく、ぞわぞわとした感触。
抵抗するように足を閉じようとしても、押さえつけられた手と、彼に見られているという羞恥で、力が入らない。
ショートパンツは、膝下まで完全に下ろされ、彼女の脚を拘束するように絡みついた。
もう、彼女は、セレスの前で、ほぼすべてを晒している。
露わになった胸、細い腰、そして、小さなフクロウ柄の布地だけが、かろうじて彼女の最後を隠していた。
「……セレス……♡」
「なんだ?」
「こわい……♡」
潤んだ瞳で見上げる彼女に、セレスは、初めて、心の底からの笑みを浮かべた。
それは、諦観でも、揶揄いでもない。
ただ、愛おしいものを見つけた、独占欲に満ちた男の笑みだった。
「……ああ、怖がれ」
彼は、彼女の脚の間に、自らの膝をそっと割り入れた。
「君のその“恐怖”ごと、俺がめちゃくちゃに“治療”してやる。……君がもう、俺のいない場所では、呼吸もできないくらいにな」
セレスの指が、最後の薄い布の、その縁(ふち)にそっと触れた。
フクロウの柄が描かれた、幼さの残る白いコットン。
だが、その下にある熱は、まったく幼いものではなかった。
「……セレス……♡ や、やだ……それだけは……♡」
「なぜ? ……君が“すり抜け”てしまわないように、俺が掴んでおくべき場所は、ここだろう?」
彼の指は、しかし、すぐにそれを引き下げようとはしなかった。
まるで、極上の薬草の品質を確かめるかのように。
指先が、布地の上を、そっと、なぞる。
「ひ……っ♡♡」
布越しに伝わる、彼の指先の、異様なほどの優しさ。
そして、その下にある、彼女自身の熱。
そのコントラストが、向日葵の全身を駆け巡る。
「……ああ。もう、こんなに熱い」
セレスは、うっとりと目を細めた。
彼の指は、その布地の中心、熱が最も集まる場所へと、ゆっくりと移動する。
そこは、彼の“診断”を待たずとも、すでに潤み、存在を主張していた。
「……ふふ。フクロウも、すっかり濡れてしまっているな」
「ちが……っ♡ ちがう、これは……っ♡」
「違う? ……嘘は、感心しない」
セレスは、その中心点を、布の上から、わざとらしく、ゆっくりと指の腹で押した。
「んんっ……!♡♡ あ、あ、そこ、だめ……っ♡♡」
向日葵の腰が、ビクンッ!と大きく跳ねた。
脚を閉じようともがくが、膝に絡みついたショートパンツと、何よりセレスが割り入れた膝が、それを許さない。
快感が、脳天を直接焼く。
「……まだ、何もしていない」
セレスの声が、愉悦に震える。
「布(これ)一枚、隔てているだけだというのに。……なんと、感じやすい体だ」
彼は、彼女の反応を心ゆくまで楽しむと、ようやく、その指を布の縁(ふち)——腰のゴムの部分へと戻した。
今度こそ、ためらいはない。
彼は、その薄い布に指をしっかりと引っかけると、ゆっくりと、肌を擦る感触を確かめさせるように、引き下げ始めた。
「あ……あ……っ♡♡ や、やめて……!♡♡」
懇願する彼女の声は、もう彼には届かない。
白い布地が、熱を持った肌の上を、じりじりと下がっていく。
それは、彼女の最後の羞恥心を、一枚一枚剥ぎ取っていくような、甘い拷問だった。
布地が、その湿った中心部を通過する。
その瞬間、摩擦によって引き起こされた強烈な感覚に、向日葵の喉から「ひっ」と小さな悲鳴が漏れた。
そして。
ついに、その布は、ショートパンツと同じように、彼女の膝下へと追いやられた。
「……っ…………♡」
向日葵は、もう声を出すこともできず、ただ、荒い息を繰り返すだけだった。
顔は両手で覆われたままだが、その指の隙間から、涙がこぼれ落ちている。
恥ずかしいのか、怖いのか、それとも——。
セレスは、ついに露わになった、彼女のすべてを見下ろした。
月明かりに照らされた、まだ誰の色にも染まっていない、神聖な場所。
彼が引き起こした熱によって、潤み、微かに震えている。
「…………美しい」
彼の口から、心の底からの感嘆が漏れた。
彼が今まで触れてきた、どの命よりも、眩しく、純粋で、そして官能的だった。
彼が抱えていた、命への諦観。愛する者を失った虚無。
そのすべてが、今、この光景によって、浄化されていく。
「……ひまわり。顔を上げろ」
「やだ……♡ 見ないで……お願い……♡」
「なぜ隠す?」
セレスは、彼女の顔を覆う手を、優しく、しかし有無を言わさぬ力で、引き剥がした。
涙で濡れた、真っ赤な顔。
その青い瞳が、怯えと、そして、彼を求める熱に、潤んでいた。
「……君のその顔も、その涙も、その熱も。……すべて、俺が与えたものだ」
セレスは、彼女の脚の間にいた自らの膝を、さらに深く進めた。
彼の膝が、露わになった、その柔らかな秘部のすぐそばに触れる。
「あ……っ♡♡」
「今から、君の“治療”を始める」
彼は、その美しい指先に、彼女自身の潤んだ雫を、そっと、すくい取った。
「……君のその孤独(さみしさ)が、二度と“すり抜け”ていかないように。……俺の熱で、君の全部を、縫い付けてやる」
セレスは、その指先を、ゆっくりと、彼女の最も熱く、最も無防備な場所へと、導いていった。
セレスの指先が、彼女自身の潤んだ雫をまとったまま、その熱い入り口で、ぴたりと止まった。
触れそうで、触れない。
その指先から発せられる、彼自身の微かな体温と、彼女の熱が混じり合った、不可思議な熱だけが、彼女の最も敏感な場所をじりじりと焼いた。
「…………っ♡♡」
向日葵は、次に何が起こるかを正確に察して、固く、固く目を瞑った。
シーツを握りしめる指先に、爪が白く食い込む。
恥ずかしさと、未知なるものへの恐怖。そして、それを上回る、抗いがたい期待。
ぐちゃぐちゃになった感情が、彼女の体を震わせる。
「……ふふ。脈が速いぞ、ひまわり」
彼は、その震える肌を見つめ、医者が患部を診察するように、静かに、だが残酷なほど優しく告げた。
「ここが、君の“孤独”の源だ。……君が“すり抜け”てしまわないように、誰かに強く掴んでいてほしかった、その中心(こころ)」
その言葉と、同時。
彼の指先が、ゆっくりと。
その柔らかく潤み、微かに震える秘裂の、一番浅い部分に、そっと、触れた。
「あ……っ、んぅ……っ!♡♡♡」
向日葵の体が、まるで電流を流されたかのように、ビクンッ!と大きく弓なりになった。
枕に押さえつけられてもいないのに、もう、逃げられない。
冷たいメスが触れたような、鋭い衝撃。
だが、それは冷たくない。彼の指は、彼女の熱を吸って、灼けるように熱い。
「……驚くことはない。これは“治療”だ」
セレスは、彼女の初々しい反応を心ゆくまで楽しみながら、その指先で、今度は、その入口を優しくなぞるように、円を描いた。
まだ、入ってはこない。
ただ、その周りを、焦らすように、何度も、何度も。
「ひ……っ♡ あ、や……♡ そこ、だめ……♡」
「だめじゃない。……君の体は、俺の指を“歓迎”している」
セレスは、その指の腹で、濡れた蕾を優しく押し開くように、ゆっくりと、圧をかけた。
ほんの少しだけ、その柔らかい粘膜に、指の先端が、食い込む。
「んんっ……!♡♡♡ は、いっちゃ……だめ……っ♡♡」
「まだ、何も入っていないさ」
セレスは、その美しい顔に、初めて、純粋な“獣”の笑みを浮かべた。
「これは、ただの“診断”だ。……君が、どれだけ俺の“治療(くすり)”を求めているのか、その奥まで、じっくりとね」
彼は、その指を、もう一本増やした。
セレスの二本の指が、その熱く潤んだ入り口を、ゆっくりと押し開こうとしていた。
まだ、入ってはいない。
だが、その指先が秘裂のあいだに分け入り、粘膜の柔らかい内側に触れた瞬間、向日葵の体は限界まで弓なりにしなった。
「んんっ……!♡♡♡ だめ、だめ、そこは……っ!♡」
「なぜ、だめなんだ?」
セレスの声は、熱を帯びているのに、不思議なほど冷静だった。
彼は、彼女の初心(うぶ)な抵抗を、まるで貴重な症例を観察するように、楽しんでいる。
「君は、誰かに“掴んでいて”ほしかったんだろう? ……“すり抜け”ないように」
「そ、それは……そうだけど……っ♡ こんな……こんなところ……っ♡」
「ああ。こんなところだ」
彼の指が、ぐ、と。
ほんの少し、力を込めて押し込まれる。
抵抗していた柔らかい壁が、彼がまとわせた彼女自身の潤いによって、ぬるり、と滑り、指の第一関節までを受け入れた。
「あ……っ!♡♡♡♡ い、い、入った……!♡♡」
向日"葵"の"目"から、"羞恥"と"驚き"で"涙"が"こぼれ"落ちる"。
初めての、異物。
痛みというよりは、体が内側から押し広げられる、強烈な違和感と、圧迫感。
そして、その奥から、ぞわりと這い上がってくる、未知の感覚。
「……っ、ん、ふ……ぅ……♡♡」
「ああ、入っている。……俺の指が、君の奥に」
セレスは、その内部の熱さと、処女ならではのTシャツな締まり具合に、思わず息を飲んだ。
(……なんだ、これは)
彼が今まで触れてきた、どの女とも違う。
純粋で、まだ誰の色にも染まっていない、熱い「生命」そのもの。
彼の諦観を、根こそぎ焼き尽くすほどの、眩しさ。
「……どうだ、ひまわり。……“すり抜け”られるか?」
「……む、り……♡ ぬけ、ない……♡」
「そうだろう」
セレスは、彼女の答えに満足そうに微笑むと、挿し入れた指を、ゆっくりと、その内部でかき混ぜるように、動かし始めた。
まだ、浅い場所で。
壁の感触を、ひとつひとつ確かめるように。
「ん……っ♡♡ あ、あ、変……っ♡ なにか、変な感じ……っ♡」
「変か? ……だが、君の体は、俺の指を締め付けて、喜んでいるように見えるが」
指が動くたび、ねちゅ、ねちゅ、と。
彼女の潤んだ音(こえ)が、小さく、部屋に響き始める。
「あ……っ♡♡ あ、あ、あ……っ♡♡♡」
向日葵は、もう何を言えばいいのか分からない。
ただ、その異様な快感に、シーツを握りしめて耐えることしかできなかった。
セレスは、その内部の構造を探るように、指の角度をわずかに変えた。
そして——ある一点。
他よりもわずかに硬く、敏感に反応する場所を、指の腹で、ぐり、と押した。
「ひゃあっ……!♡♡♡♡♡」
向日"葵"の"腰"が、"ベッド"から"浮き上がる"ほど"、"激しく"跳ね"た"。
今まで感じたことのない、脳天を直接焼かれるような、強烈な快感。
「……っ、は……ぁ……♡ いま、の……なに……っ♡♡」
「……なるほど。ここか」
セレスは、その場所を見つけたことに、恍惚とした笑みを浮かべた。
「ここが、君の一番、寂しがっていた場所だ。……俺に、触れてほしかったんだろう?」
「わ、わかんない……っ♡ でも、そこ……っ♡♡」
「ああ、分からなくていい」
セレスは、その言葉を遮るように、もう一度、容赦なく、その場所を指先で強く擦った。
「んぎぃっ……!♡♡♡♡ い、いく……!♡ いっちゃう……っ♡♡」
「まだだ」
セレスは、彼女が絶頂を迎える直前で、ぴたり、と指の動きを止めた。
「あ……え……?♡」
行き場を失った快感が、熱となって体内に燻る。
「……君の“治療”は、まだ始まったばかりだ」
セレスは、その美しい顔を、彼女の涙で濡れた頬に近づけた。
「……俺の指だけで、こんなに感じて。……この先、どうなってしまうんだろうな、君は」
彼は、指を挿し入れたまま、空いているもう片方の手で、自らのニットのベルトに、そっと、手をかけた。
本当の“治療”は、これからだった。
セレスの指は、まだ彼女の奥深くで、熱い塊のように挿し入ったままだ。
絶頂を寸前で止められ、行き場を失った快感が、向日葵の全身を熱く、痺れさせていた。
「ん……っ♡♡ せ、セレス……はやく……♡ はやくして……♡」
「急かすな。……せっかちな小鳥は、嫌いではないが」
セレスは、彼女の潤んだ瞳を見下ろし、意地悪く微笑んだ。
そして、挿し入れた指を、ゆっくりと、ごくわずかだけ、引き抜いた。
「ひゃっ……!♡ な、なんで……♡」
「『急いで』と言われたから、少しだけ休憩だ」
「そ、そんな……!♡ 意地悪……っ♡」
向日葵が抗議の声を上げると、セレスは「ふふ」と喉の奥で笑った。
「意地悪ではない。これも“治療”の一環だ」
彼は、引き抜いた指を、そのまま彼女の濡れた太ももへと滑らせた。
そこから伝わる、彼女自身の熱と、粘つくような潤い。
「……こんなに濡らして。まるで泉のようだな」
セレスの指は、太ももの内側をゆっくりと、そして執拗になぞっていく。
肉厚な部分、柔らかい部分、そして、その内側に隠された、もっと敏感な場所。
彼の指が通った軌跡だけが、業火のように熱く、痺れを残した。
「んんっ……♡ あ、あ……♡ へ、変な感じ……っ♡」
「変か? ……だが、君の体は、もっと触れろ、と訴えている」
彼は、向日葵の肌の感触を確かめるように、太ももの付け根まで指を這わせた。
そして、その場所で、ゆっくりと、指の腹で小さな円を描く。
そこは、直接的な刺激ではないのに、全身の神経を逆撫でるような、奇妙な快感を生み出した。
「んんぎぃっ……!♡♡♡ な、なに、これ……っ♡♡」
向日葵の体が、びくびくと痙攣する。
「君の知らない“快感”の扉を開いているだけだ。……これも、俺の専属医としての務めだろう?」
セレスは、彼女の全身が、自分の指先一つでこんなにも揺さぶられることに、深い愉悦を感じていた。
命に触れすぎた故の諦観。
だが、この少女は、彼の中に、まだこんなにも激しい感情が残っていたことを教えてくれた。
それは、まるで彼の心を、もう一度、生き返らせてくれるかのようだった。
「……セレス……♡ お願い……♡ もう、どこにもいかないで……っ♡♡」
向日葵が、顔を覆う手を解き、涙で潤んだ瞳で彼を見上げた。
その、縋るような、切実な眼差し。
『ここにいてもいいんだよ』と、誰かに強く掴んでいてほしいと渇望する、彼女の心の叫び。
「……ああ」
セレスの顔から、意地悪な笑みが消えた。
彼の瞳には、もう遊びの色はない。
あるのは、目の前の少女を、全身全霊で受け止めようとする、男としての深い欲望だけ。
「……もう、どこにも行かせない。君が“すり抜け”られないように、俺が、君のすべてを“ここに”繋ぎ止めてやる」
彼は、彼女の脚の間に割り入れていた膝を、さらに深く食い込ませた。
そして、その太ももを弄んでいた指を、一気に、彼女の入り口へと戻す。
今度は、一本ではない。
指を二本から三本へと増やし、潤んだ蕾を押し開くように、ゆっくりと、しかし確実に、深く、深く。
「んんっ……!♡♡♡♡ きつ、い……っ♡♡」
狭く、熱い内部が、三本の指によって内側から押し広げられる。
痛みと、強烈な圧迫感。
そして、指が奥へ奥へと進むたびに、彼女の体が、快感に支配されていく。
「……はぁ、はぁ……っ♡♡ あ、あ、あ……♡♡」
向日葵は、もう、彼の言葉に答えることもできなかった。
ただ、彼の指が動くたびに、全身で快感を訴えるように、喘ぐことしかできない。
セレスは、彼女のその反応を、肌で、そして《ライフ・タッチ》で、余すことなく感じ取っていた。
「……ああ、本当に、君は」
彼は、自分の指が、彼女の奥の、最も柔らかい場所まで到達したことを確認すると、そこで、ゆっくりと、指を広げた。
「ひゃあっ……!♡♡♡♡♡」
向日"葵"の"腰"が、"限界"まで"跳ね上がる"。
内側から、完全に開かれ、抉られるような、強烈な、初めての快感。
「……このまま、俺で満たしてやる。君の奥の、寂しがっていた場所も、すべて」
セレスは、その指を、ゆっくりと、リズムを刻むように、抜き差しし始めた。
熱く、狭い内部から、ねちゅ、ねちゅ、と、湿った音が響き渡る。
もう、フクロウたちの羽ばたく音さえ、聞こえなかった。
セレスの三本の指が、向日葵の狭く、熱い内部を容赦なくかき回す。
まだ誰も触れたことのない粘膜は、彼の指の動き一つひとつに、驚くほど敏感に反応した。
ねちゅ、ぐちゅ、と。
さっきよりも明らかに水気の増した、生々しい音が部屋に響き渡る。
「んっ……!♡♡ あ、あ、あ……っ!♡♡ せ、セレス……!♡♡」
「うるさいぞ、ひまわり。……フクロウたちが、起きてしまう」
「だ、だって……!♡♡ あ、あんっ……!♡♡」
セレスは、わざとらしくそう言うが、その指の動きは一向に緩まない。
むしろ、彼女が喘ぐたびに、その反応を楽しむかのように、さらに深く、えぐるように指を動かした。
指の関節が、熱い壁を押し広げ、擦り抜けていく。
「……っ、んく……!♡♡♡ は、はぁ……っ♡♡」
向日葵は、もうシーツを握りしめる力も残っていない。
指先に支配された快感に、ただただ体を震わせ、喘ぐことしかできなかった。
セレスは、彼女のその無防備な姿を、薄紫の瞳で見下ろしていた。
(……ああ、本当に、この温もりは)
(俺が、どれだけ渇望していたものか)
彼が今まで抱いてきた女たちは、彼の美しい外見や、甘い言葉に惹かれていた。
だが、この少女は違う。
彼女は、彼の指がもたらすこの「繋がり」そのものに、全身全霊で反応している。
彼女の孤独が、彼の孤独を埋めていく。
「……ひまわり。まだ、足りないか?」
「わ、わかんない……っ♡ でも、もう、むり……っ♡♡」
「無理じゃない」
セレスは、意地悪く笑うと、指を動かすリズムを、急に変えた。
ゆっくりと、深く抉るような動きから、今度は、速く、浅く、入り口付近を掻き立てるような動きへ。
「ひゃっ……!♡♡ あ、あ、あ、そこ、だめ……っ♡♡♡」
さっきとは違う、焦らすような、それでいて神経を直接焼くような快感が、彼女の全身を駆け巡る。
内側からと、外側から。
同時に責め立てられるような感覚に、向日葵の思考は完全に麻痺した。
「……どっちだ? どっちが、君は好きなんだ?」
「……っ、ん、ふ……♡♡ どっちも……っ♡♡」
「……欲張りだな」
セレスは、その答えに満足そうに笑うと、もう一度、指を奥深くまで突き入れた。
そして、あの、彼女が一番感じやすい場所を、指の腹で、強く、強く、圧迫した。
「んんぎぃっ……!♡♡♡♡♡」
向日葵の体が、限界まで弓なりになる。
もう、止められない。
熱いものが、体の奥から、こみ上げてくる。
「あ……っ♡♡ い、いっちゃ……!♡♡ いぐ……っ♡♡♡」
「ああ、いいぞ。……俺の指の中で、全部、吐き出せ」
セレスは、彼女の絶頂を促すように、その場所を、さらに激しく、容赦なく、擦り上げた。
「んんっ……!♡♡♡ あーーーーっ!♡♡♡♡」
向日葵の体が、ビクンッ、ビクンッ!と、大きく痙攣した。
熱い、熱い何かが、彼女の内側から溢れ出し、セレスの指を、シーツを、びしょ濡れに汚していく。
「……はぁ……っ、は……ぁ……っ♡♡♡」
痙攣が収まった後も、彼女は荒い息を繰り返し、ぐったりとベッドに沈んでいた。
目には涙が浮かび、頬は真っ赤に染まっている。
初めての絶頂。
それは、彼女の孤独を、不安を、すべて洗い流すかのような、強烈な快感だった。
セレスは、彼女の内部から、ゆっくりと指を引き抜いた。
ねちゃ、と。
生々しい音が、静かな部屋に響く。
彼の指は、彼女が放った愛液(しるし)で、白く、テラテラと光っていた。
「……すごいな。……こんなに」
セレスは、その指先を、自分の唇へと運び、ぺろり、と舐め取った。
「……っ!♡♡」
「……甘い。……君の味だ」
その、あまりにも背徳的な光景に、向日葵は、言葉を失った。
「……さて。“診断”は、ここまでだ」
セレスは、彼女の汗で濡れた前髪を、優しくかき分けた。
「……ここからが、本当の“治療”だ。……今度は、俺の“熱”を、君のその体で、受け止めてもらうぞ」
彼は、自らのニットのベルトにかけたままだった手を、今度こそ、迷いなく解き始めた。
向日葵の、本当の“初めて”が、今、始まろうとしていた。
セレスは、自分の指を舐め取ったその唇で、妖艶に微笑んだ。
ぐったりと、初めての絶頂の余韻に喘ぐ向日葵を見下ろしながら、彼はゆっくりとベッドから片膝を降ろした。
「……っ♡ ど、こか……行くの……?♡」
不安そうに、潤んだ瞳が彼を追う。
まだ指の熱さが残る体で、急に彼が離れていくような錯覚に陥ったのだ。
「いいや」
セレスの声は、低く、甘く、そして熱を帯びていた。
「“治療”の準備だ。……今使った“器具”を片付けて、新しい“器具”を用意しないとな」
彼は、自らが着ていた黒いニットの裾を掴むと、それを一気に引き抜き、頭上へ放った。
白衣の下に隠されていた、その素肌が月明かりに晒される。
医師らしい、知的な印象とは裏腹な、しなやかで、しかし確かな厚みを持つ胸板。
薄く、しかし整然と走る腹筋の影。
それは、彼が「男」であることを、雄弁に物語っていた。
「…………♡」
向日葵は、その鍛えられた体に、息を飲んだ。
セレスは、彼女の視線を一身に浴びながら、今度は、ためらうことなく、ズボンのベルトに手をかけた。
カチャリ、と。バックルが外れる、乾いた金属音。
その音に、向日葵の体が、びくり、と再び震えた。
「……怖いか?」
「…………♡」
声にならない。ただ、小さく、こくこくと頷くことしかできなかった。
「ふふ。……怖がることはない。これは、君が望んだことだ」
セレスは、まるでオペの執刀医が手袋をはめるように、ゆっくりとした、しかし確実な動作で、ズボンのファスナーを引き下ろした。
ジ……、と。
さっき、彼女のショートパンツで聞いた音とは違う、重く、決定的な音が響く。
彼は、そのズボンを、下着ごと、一気に足首まで引きずり下ろした。
そして、ついに。
彼の「熱」が、その完全な姿を、向日葵の目の前に晒した。
「あ……っ♡♡」
向日葵は、息を飲んだ。
創作物でしか見たことのない、本物の「男」の象徴。
彼女の指とは比べ物にならないほど、太く、硬く、そして熱を帯びて、静かに、しかし威圧的に、存在を主張している。
それは、彼が今まで抑え込んできた、すべての欲望の塊のようだった。
「……これが、俺の“熱”だ」
セレスは、その姿を隠そうともせず、再びベッドに片膝を乗せ、彼女のすぐそばに這い寄った。
「君のその熱く、潤んだ“孤独”を、埋めるための、俺のすべてだ」
彼は、彼女の脚を、今度は自分の手で、ゆっくりと、しかし抗うことを許さない力で、大きく開かせた。
もう、彼女に隠す場所はどこにもない。
指で散々弄ばれ、絶頂を迎えて、濡れそぼった、無防備な入り口が、彼の「熱」の前に、完全に晒される。
「ひ……っ♡♡ や、やだ……見ないで……っ♡♡」
「なぜ? ……こんなに可愛く、俺を待っているというのに」
セレスは、その露わになった「熱」の先端を、彼女が指で濡らした、その入り口に、ゆっくりと、押し当てた。
まだ、入れない。
ただ、その熱い先端で、潤んだ秘裂を、なぞるように、擦り付ける。
「んんっ……!♡♡♡♡ あ、あ、あつ……!♡♡ あつい、セレス……っ♡♡」
彼女の指とは違う、硬く、熱く、そして大きなものが、その一番敏感な場所に触れる。
その感触だけで、向日葵の体は、再び熱を持ち始めた。
「熱いか? ……ああ、そうだろう。俺も、今、君のその熱で、溶けてしまいそうだ」
「や……♡ おっきい……こわい……っ♡♡」
「ふふ。今更、怖がっても、もう遅い」
セレスはその先端を、入り口にぐりぐりと押し付け、彼女の愛液で、自らの先端を濡らしていく。
「……こんなに、受け入れる準備ができているくせに」
彼は、その言葉と同時に、腰を、ぐ、と。
ほんの少しだけ、押し込んだ。
「んんんっ……!♡♡♡♡♡」
先端。
その硬い、硬い先端が、彼女の柔らかい、狭い入り口の、ほんの数ミリだけを、こじ開けるように、侵入した。
指とは比べ物にならない、圧迫感と、熱量。
「……っ、は……ぁ……っ♡♡♡ い、痛……っ♡♡」
「ああ、痛いだろうな。……なにせ、君は、初めてなんだから」
セレスは、そこで、ぴたり、と動きを止めた。
意地悪く。
彼女が、その痛みと、圧迫感に、慣れるのを待つかのように。
「……どうした? 準備は、まだか? ……俺の“治療”は、まだ、始まったばかりだぞ」
彼は、その挿し入れた先端を、わざと、く、と動かし、内部の感触を確かめるように、微笑んだ。
セレスの「熱」は、その先端だけを向日葵の内部に埋めたまま、ぴたりと動きを止めていた。
硬く、熱く、そしてあまりにも大きな異物が、彼女の最も柔らかい場所をこじ開けている。
その圧倒的な存在感に、向日葵は息を詰めた。
「ん……っ♡♡ い、た……♡ セレス、いたい……っ♡♡」
涙が、こめかみを伝ってシーツに染みを作っていく。
指とは比べ物にならない、肌が引き裂かれるような、鋭い痛み。
「ああ、痛いだろうな」
セレスの声は、不思議なほど穏やかだった。
彼は、彼女の奥を覗き込むように、その薄紫の瞳を細めている。
「……だが、君の体は、俺を拒んでいない」
「……え……?♡」
「《ライフ・タッチ》で分かる。……君の奥は、この痛みに怯えながらも、俺の“熱”を受け入れようと、必死に……ああ、ほら、今も」
セレスは、その埋めた先端を、わざと、ぐり、と半回転させた。
「ひぎゃっ……!♡♡♡♡ や、やめ……!♡♡」
「……必死に、脈打っている」
その言葉に、向日葵は羞恥で顔を真っ赤にした。
痛いのに。怖いののに。
彼の言う通り、体は、この強烈な「繋がり」を、本能的に求めてしまっている。
「……意地悪……♡ セレスの、いじわる……っ♡♡」
「ふふ。……最高の褒め言葉だ」
セレスは、彼女の涙で濡れた頬に、そっと唇を寄せた。
そして、その涙を舐め取るように、優しく、肌を吸う。
「……だが、本当の“治療”は、これからだ。……痛むのは、君がまだ、俺に慣れていないからだ」
彼は、ゆっくりと、彼女の唇に、自らの唇を重ねた。
深く、甘く、彼女の意識を奪うような、口づけ。
「ん……っ♡♡ んむ……♡」
向日葵が、その口づけに必死に応えようと、意識を唇に集中させた、その瞬間。
セレスは、腰を、ぐっ、と。
一気に、押し込んだ。
「んんっ……!?♡♡♡♡♡」
唇が、驚きに離れる。
声にならない悲鳴が、喉の奥で詰まった。
先端だけではなかった。
彼の「熱」の、その最も太い部分が、彼女の狭い入り口を、容赦なく、引き裂くように、貫いていく。
「いっ……!♡♡♡ いたい、いたい、いたいっ……!♡♡♡」
「ああ、痛いな。……もう少しだ、ひまわり。力を抜け」
セレスは、彼女の耳元で優しく囁くが、その腰の動きは止めない。
ゆっくりと、しかし確実に。
ミリ単位で、彼女の奥深くへと、その身を進めていく。
「や……っ♡ むり、むり、むりっ……!♡♡ はいら、ない……!♡♡」
「入るさ」
セレスの声は、自信に満ちていた。
「俺の“熱”を受け止められるのは、君だけだ。……ほら、こんなに奥まで」
ぐ、と。
また、深く。
彼女の内部の、熱く狭い壁が、彼の形に、無理やり広げられていく。
もう、後戻りはできない。
「あ……っ♡♡ あ……っ♡♡♡」
痛みに混じって、指で弄られた時とは違う、体の奥の奥を直接刺激されるような、鈍い快感が、芽生え始めていた。
「……もう、あと少しだ」
セレスは、彼女の体を、まるで貴重なガラス細工でも扱うかのように、両手で抱きしめた。
そして、ついに。
「んっ……!」
彼の腰が、深く、深く、沈み込んだ。
コツン、と。
彼女の奥の、一番深い場所に、彼の「熱」の先端が、確かに、触れた。
「あ……っ♡♡♡♡」
向日葵の体が、びくん!と大きく痙攣した。
全部。
セレスのすべてが、今、彼女の中に入っている。
痛みと、熱さと、圧迫感と。
そして、今まで感じたことのない、強烈な「繋がり」の感覚。
「……っ、は……ぁ……っ♡♡♡」
「……ああ。……入ったな」
セレスは彼女の内部の、その信じられないほどの熱さ、狭さに、恍惚としたため息を漏らした。
彼女の奥で、自分の「熱」が、ドクドクと脈打っているのが分かる。
「……ひまわり。……言っただろう」
彼は、彼女の耳元で、勝利を宣言するように、囁いた。
「もう、君は“すり抜け”られない。……俺が、君の全部を、掴まえている」
セレスは、その言葉を証明するように、彼女の内部で、ゆっくりと、腰を動かし始めた。
まだ、浅く。
そのTシャツな壁の感触を、確かめるように。
「んんっ……!♡♡♡ あ、あ……っ♡♡♡」
痛みと快感が混じり合った、未知の感覚。
彼女の、本当の“治療”が、今、始まった。
セレスの「熱」は、そのすべてを向日葵の奥深くに埋めたまま、ゆっくりと、しかし確実に動き始めた。
まだ、ほんの数センチ。
引き抜かれ、そして再び深く差し込まれる。
そのたびに、きつくうねる内壁が彼の形に広げられ、擦られていく。
「んっ……!♡♡ あ、あ……っ♡♡ い、たい……けど……っ♡♡」
「……けど?」
セレスは、彼女の表情の変化を見逃さなかった。
痛みで歪んでいたはずの顔が、今は、熱に浮かされたように、とろんと潤み始めている。
「……なんか……♡ さっき、指で……されたとこ……♡♡」
「ああ。ここか?」
セレスは、彼女の言葉を待たず、腰の角度をわずかに変えた。
彼の「熱」の先端が、内部でぐ、と動き、指で弄られたあの敏感な一点を、今度は、より硬く、熱いもので、直接的に擦り上げた。
「んああっ……!♡♡♡♡♡ そこっ……!♡♡」
向日葵の体が、再びベッドから浮き上がるほどに跳ねた。
痛みは、もう遠い。
その一点から、焼けるような、強烈な快感が、全身に広がっていく。
指とは比べ物にならない、圧倒的な刺激。
「ふふ。……どうやら、俺の“治療”は、間違っていなかったようだな」
セレスは、その反応に満足そうに笑うと、もう容赦はしなかった。
その場所を、的確に、執拗に、狙い撃つように腰を動かし始める。
「あ……っ♡♡ あ、あ、あ、あ……っ!♡♡♡」
「……声を出せ、ひまわり。……フクロウたちにも、教えてやれ。君が、誰に“掴まえ”られているのかを」
「せ、セレス……っ♡♡ せれすの……っ♡♡♡」
ぐ、ぐ、と。
さっきまでのゆっくりとした動きが嘘のように、腰の動きが速度と重みを増していく。
そのたびに、ねちゅ、ぐちゅ、と、二人の熱が混じり合う、生々しい水音が、部屋に響き渡った。
「んんっ……!♡♡♡ あ、あ、あ……っ!♡♡♡」
「……ああ、そうだ。いい声だ」
セレスは、彼女の乱れた黒髪をかき分け、その汗ばんだうなじに、強く吸い付いた。
彼が抱えてきた、命への諦観。
そのすべてが、この純粋な生命の熱によって、浄化されていく。
(……温かい)
彼の指先が、彼女の豊かな胸を、今度はその熱を確かめるように、強く揉みしだいた。
「あ……っ!♡♡ 上も、だめ……っ♡♡」
「だめじゃない。……君の全部、俺が触れていい場所だ」
下からは、彼の「熱」が、容赦なく奥を突き上げる。
上からは、彼の手が、その柔らかい膨らみを、形が変わるほどに弄ぶ。
全身が、セレスの独占欲に支配されていく。
「……っ、は……ぁ……っ♡♡ もう、むり……♡♡」
「まだだ」
セレスは、彼女の耳元で低く囁いた。
「君のその“孤独”が、完全に溶けてなくなるまで。……俺のこの“熱”で、君の全部を、満たし尽くしてやる」
彼の腰の動きが、さらに激しさを増した。
もう、彼女にできることは、彼の「熱」を受け入れ、その快感に、ただただ喘ぐことだけだった。
セレスの腰の動きは、もはや躊躇いを失っていた。
深く、重く、そして速く。
彼が今まで抑圧してきたすべての欲望を、彼女の奥深くに叩きつけるかのように。
「んっ……!♡♡ あ、あ、あ……っ!♡♡♡ せ、セレス……!♡♡♡」
「ああ。……ひまわり。……なんて顔だ」
セレスは、快感に完全に身を委ね、とろとろに溶けた表情で喘ぐ彼女を見下ろした。
その無防備な姿が、彼の支配欲をさらに煽る。
「……っ、ん、ふ……♡♡ あ、あ、あ、そこ……!♡♡ また、くる……!♡♡」
「ああ、来い。……俺の“熱”の中で、何度でも、だ」
セレスは、狙いを定めたように、彼女が最も感じる一点を、逃すことなく、何度も、強く、深く、突き上げた。
もう、痛みはない。
ただ、体の芯が、彼の「熱」によって焼かれ、溶かされていくような、強烈な快感だけが、波のように押し寄せる。
「あ……っ♡♡ あ、あ、あ、あーーーーっ!♡♡♡♡♡」
指先とは比べ物にならない、圧倒的な刺激。
向日葵の体が、びくん、びくんっ!と、再び激しく痙攣し、二度目の絶頂を迎えた。
内部が、きゅう、と熱く収縮し、彼の「熱」を激しく締め付ける。
「……っ!」
その、純粋で、強烈な締め付けに、セレスの背筋に、ぞくり、とした快感が走った。
彼が今まで触れてきた、どの女とも違う。
この少女のすべてが、今、彼を受け入れ、彼を求めて、震えている。
命に触れすぎた故の諦観。
その氷を溶かすには、十分すぎるほどの熱だった。
「……ひまわりっ……!」
セレスの声に、初めて、余裕ではない、剥き出しの昂りが混じった。
「……君は……本当に……っ!」
彼は、もう自分を抑えられなかった。
痙攣の余韻が残る彼女の体を、その内部を、まるで自分の存在を刻み付けるかのように、激しく、深く、突き上げ続けた。
「あ……っ♡♡ あ、あ、あ……っ!♡♡♡ せれす、はや……っ♡♡♡」
「ああ……っ、もう、限界だ……!」
セレスは、低く唸ると、彼女の体を強く抱きしめ、その奥の、一番深い場所で。
彼が今まで溜め込んでいた、すべての「熱」を、彼女の内部に、注ぎ込んだ。
「んんっ……!♡♡♡♡」
「……っ!」
熱い、熱い奔流が、彼女の孤独(からっぽ)だった場所を、余すことなく満たしていく。
ドク、ドク、と。
彼の「熱」が、彼女の奥で脈打つ感覚。
向日葵は、その圧倒的な「繋がり」の感覚に、ただ、目を閉じたまま、彼の背中に腕を回すことしかできなかった。
「……はぁ……っ、は……」
「……っ、はぁ……」
激しい嵐が過ぎ去り、部屋には、二人の荒い息遣いと、シーツの擦れる音だけが響く。
セレスは、まだ彼女の内部に自らを埋めたまま、その汗ばんだ額を、彼女の額にこすりつけた。
「……っ、は……♡ せ、セレス……♡」
「……ああ」
「……いっぱい、出た……♡ あったかい……♡」
その、あまりにも無垢な感想に、セレスは、思わず、ふ、と息を漏らして笑った。
「……当たり前だ。……俺の、全部だ」
彼は、その唇に、今度は、労わるように、優しくキスを落とした。
「……ひまわり」
「……なに……?」
「もう、君は“すり抜け”られない」
セレスは、まだ熱が引かない内部で、わざと、ゆっくりと、その存在を主張するように、腰を動かした。
「……君のこの熱い孤独は、もう、俺が掴まえてしまったからな」
その言葉に、向日葵は幸せそうに目を閉じた。
___
激しい情動が過ぎ去り、部屋には静けさが戻りつつあった。
荒い呼吸がようやく落ち着きを取り戻し、お互いの心臓の音だけが、密着した肌を通して響き合う。
セレスは、まだ向日葵の内に自らの存在を残したまま、ぐったりと力の抜けた彼女の体を抱きしめていた。
汗で湿った黒髪が、彼の首筋に張り付いている。
彼女の体温が、彼の肌にじかに伝わり、それが彼自身の諦観を溶かしていくのを、セレスは静かに感じていた。
「……セレス……」
彼の胸に顔を埋めたまま、向日葵がくぐもった声で呟いた。
「……なに?」
「……まだ、いる……」
「ああ」
「……あったかい……」
その、あまりにも無防備で純粋な感想に、セレスは言葉を失った。
彼はただ、彼女の髪を優しく撫でる。
《ライフ・タッチ》が、彼女の心が、初めての経験による疲労と、それを上回るほどの、深い安堵感と幸福感で満たされているのを正確に伝えていた。
もう、あの「すり抜けてしまうかもしれない」という孤独の影は、どこにも見当たらない。
「……ひまわり」
「ん……?」
「君は、本当に……」
セレスは、言葉を続けようとして、やめた。
今、この瞬間に感じている感情を、彼が今まで使ってきた「遊び」の言葉で表現したくなかった。
彼はゆっくりと、しかし名残惜しそうに、彼女の中から自らを解き放った。
空気を吸い込むような、小さな音。
解放された場所から、二人の繋がりの証が、シーツの上へと零れ落ちる。
「あ……」
向日葵が、その光景に小さく声を上げた。
セレスは、その反応には構わず、ベッドサイドに置いてあったタオルケットを引き寄せると、汚れたシーツごと、彼女の体を優しく包み込んだ。
「……少し、休め。……初めての“治療”は、体にこたえただろう」
「……うん……」
向日葵は、タオルケットの中で小さく丸くなる。
眠気が、疲労と共に一気に押し寄せてきていた。
「……セレスは……?」
「俺は、ここにいる」
セレスは、彼女の隣に横たわり、その小さな頭を自分の腕の中に引き寄せた。
「……君が、またどこかへ“すり抜け”てしまわないように。……俺が、掴まえていてやる」
「……ふふ……もう、大丈夫なのに……」
「どうだか」
彼は、彼女のまぶたに、そっと唇を落とした。
それは、欲望の色を含まない、ただ純粋な、守るための口づけだった。
「……おやすみ、俺の小鳥。……もう、怖い夢は見るな」
「……おやすみなさい……セレス……」
数分もしないうちに、彼女の寝息が聞こえ始めた。
どんな物音にも起きない、祈りのように穏やかな寝顔。
セレスは、その寝顔を、腕の中で見つめながら、静かに目を閉じた。
(……救われる価値などないと思っていたのは、俺のほうか)
彼がずっと求めていた、失われたはずの「温もり」が、今、確かに、この腕の中にあった。
フクロウたちが、その静かな夜の二人を、瞬きもせずに見守っていた。