友達











身体がやたらとダルい。やっと昼休みになった
1人になりたくて…果てしなく1人になりたくて食堂ではなく屋上へ。昼休みになるまでにもクラスメイト達から質問に質問をされてスゴく疲れた…




「不死風少女!」
『オールマイトさん…』

突然後ろから肩を掴まれた。声からしてオールマイトさんだっていうのはすぐに分かったから、少なからず安堵した




「なぁにを浮かない表情をしているんだぃ?皆と一緒に食堂でご飯を食べないの?」
『食べません』

「えー、食べないと損だよ?此処の食堂はかなり美味しいって評判なんだから。それに1人よりみんなで食べた方が美味しいモノだよ?」

『別にあの人達と仲良くしにきた訳でもないのに何でご飯なんて…』

そっぽを向いて不満気に口を尖らせながら言うとオールマイトさんは苦笑していたが、気を取り直してと言わんばかりに手を叩いてまた尋ねてきた



「初の雄英生徒としての1日目はどうかな?まぁまだ午後もあるけど」

『1日目から散々でしたよ。みんなの笑顔や爆豪君が前のクラスメイト達とダブって見えて吐き気がしました』

「…ん?何で爆豪少年だけ名指しなの?」

『爆豪君が…1番似てるんですよ。クラスメイトの1人に』

午前中の出来事を思い返した
酷く似ていたあの目付き。嫌な思い出だ




『まぁ…変わらず当たり障りなく距離は取りつつでやって行きまッ…』
「不死風さんいたぁ!」

振り向くと麗日さん達がスゴい勢いで此方に駆けてきていた。またあの笑顔ッ……思わず顔が強張った



「食堂にもいなかったから捜しちゃったよぉ」

苦笑した麗日さんに続いて、蛙吹さんがオールマイトさんと私を交互に見て首を傾げた



「あら、オールマイトとお話してたの?」

まぁ…と俯き気味に頷くと、突然後ろから芦戸さんに肩を掴まれてた




「次は体育だから、一緒に着替えに行こ!不死風!」
『ちょッ、待ッ…!』

戸惑う間もなく、やってきたクラスの女子に連れ出された柊風乃。オールマイトは苦笑しながら手を振って見送った


「あのクラスの子達と距離を取りつつ…ていうのは至難の業だよ?不死風少女」








◇◇◇ ◇◇◇








「うわぁあ…不死風の胸って結構でかッ…」
『Σなッ…何急に…』

更衣室で体操着に着替えてる最中に、隣で着替えていた芦戸さんがこちらを見て固まっている



「Σうわッ!ホンマや…」

「ヤオモモに次いでの発育の暴力が…」
「耳郎ちゃん、そんなに落ち込まないで」

耳郎さんが自身の胸を見て表情を険しくさせた。それを宥める様に蛙吹さんが背中を撫でている。他の皆も私の周りでワイワイ喋りながら着替えているけれど、イマイチその雰囲気に乗れない…というより乗る気になれない




「柊風乃は良いなぁ、そんなに胸あって」
『別にそんなに対した大きさじゃないって』

「あーあ、あたしももう少し胸があったら男子達をイチコロ出来るのにぃ」
「柊風乃の走る度に揺れる胸が女らしさをこう醸し出してッ…」
『胸の話は恥ずかしいからやめてよ!』








「不死風さん、大丈夫ですか?」

『…何でもない』

八百万さんが心配気に顔を覗き込んできたが、目線を逸らした。私だって皆みたいにこうやって他愛のない話をしていた。あんな瞬間的に壊れるとは思えない程に皆と仲も良かった…のに…

何でこうも…過去を払拭しきれないのか腹が立つ




「お辛いなら保健室ご案内しますわよ?」
『大丈夫だから』

それより早く着替えた方が良いよ、と告げると思い出した様に皆慌てて着替えだした

「不死風の胸に気を取られてる場合じゃなかった!」
「相澤先生に怒られるぅ!」
「今日どんな授業だったっけ!?」

慌てて着替えているみんなの姿に小さく微笑んだ。私も夢中で話し込んでは皆と一緒に授業遅れてたな…



「ほらほら!不死風ちゃんも早く早くぅ!」

つい物思いにふけてしまっている中で慌てた様子の葉隠さんに手を引かれて、みんなと一緒にグランドへ向かった






◇◇◇ ◇◇◇







「おぉ、早く並べー」

グランドに着くと、既に男子は揃って待機していた。相澤先生は相変わらず気怠そうである



「先生ー、今日は何やんの?」

「そうだな…まぁ、決まってるには決まってる」

相澤先生の手には事前能力試験でも使われたあのリアルなオールマイトさん人形が。まだ持ってたんだ、あれ



「それって不死風の試験の時に使ってたオールマイト人形じゃね?」
「うわぁ…何か近くで見るとリアルで何かキモイわ…」
「思ったより大きいのな」

みんながオールマイトさん人形の方に注目してる中、相澤先生は私に視線を移して目を細めた



「この前の不死風で行った試験内容が思ったより応用が効きそうだったからな。今回はこのオールマイト人形を使って、みんなで鬼ごっこをしてもらう」

学校の体育の授業内容とは思えないその遊戯の名前に当然の如く間の抜けた声が飛んだ



「先生!何故授業に鬼ごっこなんて遊びを取り入れるのですか!?」

みんなが思っているであろう事をさすが学級委員長なのか、飯田君が代弁した。その反応に相澤先生はため息を浅く吐いた



「お前ら…此処を何処だと思ってる?ただのお遊びを貴重な授業を割いてやると思うか?」

俺がどういう奴かも知ってるだろうが、と続けた。相澤先生は非常に合理主義で無駄な事には決して時間を使わない。そういう先生だとオールマイトさんからは聞かされていたが…




「では…尚更何故鬼ごっこなんて」

そう口にする八百万以外も怪訝そうな表情をしていた。そんな皆の反応に相澤先生はまた軽くため息を吐いて背を向けた



「話は最後まで聞け。まぁ演習ではなく、あくまで体育の一環としてだ。場所移動するぞ」


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