日課
あ
あ
あ
『お疲れさまでーす……ってあれ、誰もいない』
体育館の扉を開けて、一礼。HRが終わったらダッシュで体育館へ向かう。いつもながら、一番乗りだ
先輩達が来る前に、ジャージに着替えなければ…
小走りで更衣室に向かった
◇◇◇ ◇◇◇
「あれ、唯織ちゃん今日も1番?」
『あ、お疲れさまです』
20分くらい経ってから、ぞろぞろと先輩達が体育館に入ってきた。いつも床吹きとネットを張る為の支柱を立て掛けるまでをやって、残った時間に身体のストレッチ
これが日々の私の部活の始まりであって、習慣になっている。本当はネットも張りたいけれど、身長が低いだけに上手く張れずに、そこだけは先輩や後輩と一緒にやっていた
「あんたいつもこんな早くに準備してると、お姉さん疑っちゃうわよ?」
『何をですか?』
「
『ちゃんと出てますって』
つんつんと企んだ笑みで聞いてきた先輩に苦笑してしまった
「あんた達も早くジャージに着替えてこいっつの!」
いつの間に着替えたのか、私をからかう先輩達をさっさと更衣室に誘導したのは主将
「
「すいません!」
バタバタと慌ただしく駆け込んできたのは後輩。その後から息を切らしながら着いたのは幼馴染の朱美
「もぉ、唯織早いよぉ!」
『ごめんごめん、だって朱美の所いつも
「ぶー、長いのは先生のせいで私のせいではありませーん!」
『はいはい、ブーブー言ってないで早く着替えてねぇ』
来たメンバーを更衣室に連れていく
これもいつもの事だったりする
◇◇◇ ◇◇◇
「もう1本行くよー!ちゃんとボール見て!」
『はいッ!』
メンバー全員が集まり、部活動が始まる。準備体操をして、軽く筋トレをしたら、1、2年のフライングレシーブの練習から始まった。3年の先輩がトスの次にスパイクで放ったボールを1人10本連続でフライングレシーブする練習
フライングレシーブは、どれだけレシーブをやった後に早く立ち上がり、次のボールに追い付くかが勝負
今のところ連発で8回。腹筋やふくらはぎが痛む…けど、ボールから目を離さない。あと2回ッ…!
パンッ!
あと…1回ッ…!
「ラストーッ!」
すぐに足を地面に掛けて、身体を上げる
瞬きするなッ…!足を止めるなッ…!
先輩がトスを上げて、さっきとは別方向にスパイクを打ち放った
手を伸ばせば…届く!
『ふぬッ…!』
ラスト1回のスパイクされたボールの下に手を滑り入れる様にして、ボールを上に打ち上げた。さすがにメニュー序盤から飛ばしてしまったからか、息が上がる
「唯織ちゃん、安定の10本制覇じゃん?」
「うんうん、主将は鼻が高いよぉ」
「他の子や、後輩にもコツとか教えてあげてね」
立ち上がり、コートから出ると水分補給用の水筒を先輩から手渡された。中はスポーツ系の部活には欠かせないドリンク。ありがとうございます、と会釈をして喉に流し込んだ
「唯織先輩、あの…私のレシーブ見てアドバイスして頂いても良いですか!」
『うん、勿論』
お願いします!と一礼して、後輩の1人がコートに入ると、水筒を床に置いて全体が見えるネット付近に移動した
1発1発にアドバイス。これも後輩が入った頃からの役目。フライングレシーブは瞬発力や体力勝負で、結構私は得意な方だけど、他の部員は苦手らしい
だから、先輩達のご指名もあり、同年と後輩のレシーブは私がアドバイスする役目になっていた
「どうでしたか!?」
『フォームが良い感じだけど、着地する時はもっと滑らす様に手の平から床に着地しないと腕痛めるから気をつけてね』
「もっと滑らす様にっと…」
『身体動かさないと分かりにくいから、後で一緒に練習しよっか』
「はい!お願いします!」
後輩はマメにメモを取り出し、私の言ってる事を書き込んでいる。スゴく真面目だなぁ…と思うけど、正直私も1年の頃はそうだった
それから後輩と朱美のレシーブ練習をして、1人1人に先輩達と一緒にアドバイスしていった