人間
ドゴォオオンッッ!
神田さんのいた所から離れて暫く歩いていると、とてつもない衝撃音と共に目の前の部屋の扉が派手にふっ飛んだ。突然の事に思わず唖然と固まってしまった
何が起こった…と思えば、部屋からラビさんとアレンさんがむせながら出てきた
「ラビッ…ゲホッゲホッ!派手にやりすぎですよ」
「まッ…間違えて伸にしちまった」
『大丈夫ですか…!?』
「あれ、アデラじゃないですか」
「ありゃあ、カッコわりぃ所見せちまったぜ…」
『なッ…何をしたらこんな大きな扉ッ…』
不意に扉があった所を見上げると、部屋の名前が書いてあった。【修行場】って…
『お2人共修行されてたんですか?』
「まぁ、そうです。明日の任務に備えて」
『明日…任務なんですか?』
「あれ、聞いてねーの?アデラも一緒に行くんさ」
『…ぇッ…?』
◇◇◇ ◇◇◇
「兄さん、私は反対よ」
「うーん…」
「あれ、お取り込み中さ?」
「リナリーが怒ってるなんて珍しいですね?もしかして…明日の任務の事ですか?」
室長室の扉から顔を覗かせたアレンとラビに気付いたのかリナリーは、ムスッとしたまま振り向いた
「明日なんて早すぎるよ!アデラはAKUMAに襲われた直後なのに!」
「いやぁ…でもほら、これから自分がどんな事をしていくのか分かっていた方が今後の心構えというか覚悟も固まりやすいんじゃないかと思って…」
「兄さんの考えも分かるけど、今はまだAKUMAと会わせるのは逆に危険だと思うの。フラッシュバックっていうか…辛い事を思い出しちゃうというか…」
「リナリーはとてもアデラの事を心配してるんですね」
微笑むアレンにリナリーは不満気な表情を崩さずに頷いた
「当たり前じゃない!私と同い年であんな残酷な事をされてきたなんて…悲しすぎるもの。本当はもっと楽しい事や面白い事がいっぱいあるって知ってほしいのに…」
だから兄さんにお願いしてるの、とリナリーは付け加えた。人間以下の扱いを受け、解放されたと思えば、すぐに恐ろしいAKUMAと戦わせる…そんなのあんまりだ
リナリーは両手を強く握り締めた。コムイもあの映像を見て、理解をしているからか返せるに返せなかった。リナリーの言ってる事も願いも痛い程分かっているから
「確かに急過ぎるかもしれないです」
アレンが険しい表情で言うと、ラビも先程会った時のアデラの様子を思い出した
「さっきアデラに偶然鉢合わせたから任務の事伝えたら、表情が怯えてたさ。やっぱりAKUMAに襲われた事…トラウマになってんのかもな」
「あんな血まみれにされる程の事をされたんだもの。きっとそうだよ…」
「うーん……ところで、アデラは?」
「明日の事をアデラは知らなかったみたいなので、コムイさんに確かめに行く間、リンクに着いてもらってます」