女扱い









「クロム隊長!何処ですかー!」

名を呼ばれ、振り返れば何故か隊員の1人がキョロキョロしながら船内から出て来た



『おー、此処だ此処だー』

ヒラヒラと片手を振ると部下は漸く此方に気付き、安堵した様に駆けてきた



「此処にいたんですね。良かった、良かったぁ」

『ちょっとスクアードといつもの勝負してたんだよ。何か用か?』

「オヤジが部屋に来てほしいみたいで」

『オヤジが?…何だろうな』

「何かやらかしたんじゃねぇのか?」

スクアードが苦笑しながらボソッと耳打ちしたのに、クロムは目をギョッとさせて冷や汗を流した



『いやいや、やらかしてない…はず…』

「おいおい、語尾に力入ってないぞ?」
『まッ…まぁ!大した用じゃないだろ!そういう訳だからあたしオヤジんとこ行ってくるな!また来いよ、みんな!』

足早に慌てて立ち去るクロムにスクアード海賊団一同は相変わらずだな、と苦笑しながら見送った








◇◇◇ ◇◇◇









オヤジの部屋の前に来て、すぐに扉を開いた。部屋内にはオヤジの他にマルコとサッチがいた。2人の手には1枚の手配書



『あれ、何だよ。2人も来てたのか』

「ん?あぁ、クロムかよぃ」
「よぉ、クロム」

2人の反応にオヤジは手配書からクロムの方へ目を向けた




「おぉ、クロム」
『急に呼び出したから何かやらかしたかと思ったぜ。でも、見た感じそんな大した用でもなさそうだな?』

マルコとサッチが持っている手配書の事だと予想は着いたが、一応聞いてみる




「あぁ、急ぎって訳ではねェが、面白い奴がこのグランドラインに入って来たみたいだからな」

予想した通り、オヤジはマルコとサッチが手にしているのと同じ手配書を手渡してきた



『ポートガス・D・エース?』

手配書にはテンガロンハットを被り、上半身は裸。首には赤い首飾りを身に着けている青年が載っていた

よく見ると顔にはそばかすがあり、左腕には「ASCE」と書かれ、Sの文字にだけ×印が付けられたらタトゥーを入れてある

懸賞金は5億5000万ベリー





「そいつを知ってるか?クロム」
『いや…詳しくは知らねーけど。でも、今この海で派手にやってるスペード海賊団の船長…だよな』

以前に甲板で新聞を見ていたクルー達が話題にしていたのを思い出した。その時は興味がなかったからか、どういう奴なのか聞こうと思わなかったが…




「七武海の勧誘を蹴ったらしいよぃ」

『へぇ、七武海ねぇ…』

「お前と同じじゃねェか?」

サッチが愉快そうに笑って言うと、クロムは懐かしそうに目を細めた

あー、確かにあったな。そんな事も…




『昔の事だろ。あの時はまだフリーの海賊だったしッ…ってΣうぉッ!ちょッ、何だよ、サッチ』

突然肩に腕を回され、サッチに話を中断されてしまった



「なぁなぁ、オヤジ。もしもだけどよ?」
「何だ?」

「クロムが海軍に攫われたら、どうする?」
『Σはぁッ!?何言ってんだよ、意味わかんねぇ!』

「まぁ、真面目にそうなりかねないかもよぃ」

まさかの正統派のマルコまでも、サッチの言葉に真剣な返しを送った。いやいや、おかしいだろ



『おいおいおい、考え過ぎだろ。もう済んだ事だし』

「七武海に勧誘されて断った後も、しつこく勧誘を迫られたと聞いたが?」

『だから、それ昔の話ッ…』
「海軍がそれ程までに欲した戦力だった証だよぃ」

マルコにいつになく険しそうな表情で言われたからか、言葉が詰まった。サッチも少しばかり真面目な表情になっていた




「今じゃ海軍に標的にされてる俺ら白ひげ海賊団に入ったから、欲しい戦力でもあっちからしたら厄介な戦力になっちまった…てな感じだろ?」

「海軍は力を拡大してきてる。油断は出来んよぃ」
『待て待てッ!お前ら絶対におかしいだろッ!』

真面目に説明してくる2人を見て、思わず呆気に取られていた。今更一度拒否した相手をもう一度勧誘する事なんてあるわけッ…

すると、突然のオヤジが大笑いしだして、3人は思わずオヤジを見上げた


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