「っしゃあ4キル!!」

あー休日万歳。

完璧エリートも堅苦しい接待も全部この瞬間のために仕方なくやってる分さらにご褒美感増すわ。

この流れでガチャったらSSR出たりしないかな。


「…確定SR1枚とか。」


この上なくドブ。調子乗りすぎたな。やっぱ咲也がいる時に回せば良かった。

ま、後日課金すればいいし10連くらい仕方ないか。課金は裏切らない。金ならあるし…


今日のイベ走るためのお供でも取りに行こうかな。万里もいるだろうしとことん付き合ってもらおう。





✩.*˚



「…コーラとポテチ、あー部屋にこもってたいし昼飯もいるかな…」


サンドイッチとかおにぎりとか、ゲームやりながら片手に食べれるものがいいんだけど。生憎今はそれといったものはなさそう。…コンビニ行くか。めんどいけどしかたない。



「茅ヶ崎さん?おはようございます。今日はお早いんですね。」


「あ、姫ちゃん。おはよう。待ちわびた休みだし、今日は早めに起きて1日中ゲームしようと思ってね。」


「そうだったんですね!今週も忙しそうでしたもんね。お仕事お疲れ様でした。今日はたくさんゲームしてリフレッシュしてくださいね。」


「…ありがとう。あ、俺ちょっとコンビニ行ってくるね。」


「コンビニですか?もしゲーム中に食べる物をお探しでしたら私でよければ何かお作りしますよ!」


「いや、大丈夫だよ。休日なんだし、姫ちゃんもたまにはゆっくり休みな。…って言っても朝食の準備とかはあるかもだけど。」


「私は大丈夫ですよ!今からちょうど朝食の準備をしようと思ってたので、そのついでだと思ってください。」


え、何この子天使なの?1日中ゲームするとか言ってる廃人に嫌な顔せず笑顔で軽食作ってくれるとか天使通り越して女神かよ。いい子すぎて逆に不安になってくるわ。女の子版咲也。


「…じゃあ、お言葉に甘えて。」


「はい!今から取り掛かるので、ソファで待っててくださいね。」


お言葉に甘えちゃったけど、姫ちゃんって休日でも全然休んでなくね?本人は好きでやってるんだろうけど、給料も出ないのによくそんなに頑張れるよな…。え、てかあんなに働いてくれてるのに給料ゼロとかブラックじゃね?MANKAIカンパニーブラックかよ。いやでも住み込みで3食つき条件だしトントンなのか?まぁ、でも監督さんがお小遣いは少しあげてるみたいだしいいのか。今どきのJKがお小遣いなしは可哀想だしな。




「茅ヶ崎さんお待たせしました!お好みを聞くのを忘れちゃったので色々作ってみたんですけど、サンドイッチです!摂津さんの分もあるので、良ければおふたりで食べてくださいね。」


至れり尽くせり。
カツとかガッツリ系のもあるけど野菜で栄養バランスを取ってあるのも色々あるしちゃんと考えて作ってくれたんだな。


「あ、あとこれも良かったら。コーラばかりでは体に悪そうなので…。お手製の野菜ジュースです!飲みやすくしてあるんですけど、お口に合わなかったら残して頂いても大丈夫なので!」


控えめに言って嫁に欲しい。料理出来て優しくて可愛いギャルゲヒロインみたいな子が現実に存在するとは思わなかった。


「ジュースまで作ってくれたんだ。ありがとう。姫ちゃんって料理もできて気遣いもできるし、いいお嫁さんになれそうだよね。」


「お、お嫁さんなんてそんな…!」


照れた。可愛い。やばい俺おじさんみたいなセリフしか出てこない。


てか姫ちゃんなら物欲センサー無さそうだしSSR出してくれそうじゃね?


「…ねぇ姫ちゃん、ちょっとこっち来て?」


「?はい、お隣失礼します。」


「ちょっとここの10連ってとこ押してみてくれない?」


「え、ガチャですか…?でも私いいの引ける自信は…!」


「大丈夫大丈夫。出なくても怒ったりしないから。」


「…じゃあ、押しちゃいますよ?」


恐る恐るタップする姿も天使かよ。
え、てか確定演出来たんだけど。まじ?10連でそれは強い。あ、でも通常SSRだ。いや持ってないやつだしこれはこれであり。

「っしゃSSR!姫ちゃんもう1回いい?」


「え!?もう1回ですか?もう出ないですよ多分…」


…いや出てんじゃん!咲也並に強い。あんなに俺が回して出なかった限定SSRが今ここに来た。物欲センサーってやっぱあるんだな。


「…ありがとう姫ちゃん…!!やっと出た。これから咲也か姫ちゃんに頼むことにするよ。」


「今回はたまたまです…!私もいつも出ないタイプなので…。」


「え、いつもって姫ちゃんもゲームとかやるの?」


「私もゲーム好きですよ!茅ヶ崎さん達みたいに戦ったりするようなのはあんまりやらないですけど、ほのぼのした雰囲気のゲームは結構ハマっちゃって…。」


「まじか。意外だね、あんまりやらなさそうに思ってたけど。どんなゲーム?」


「えっと、このくまを自分好みに着せ替えたりお庭を手入れしたり、お部屋も自由に模様替えできるゲームなんですけど…茅ヶ崎さんは
こうゆうの、やらないですよね?」


「そんなことないよ。結構なんでもやるし。てか俺も今それハマってる。」


「えっ!茅ヶ崎さんもやってるんですか…!?楽しいですよね。このゲーム。お庭の手入れが楽しくて、料理もできるし色々できることが多くて…」


「着せ替えとか結構アイテム多いから飽きないよね。確かにこのゲーム姫ちゃん好きそう。あ、なら姫ちゃんこのミッションクリアした?新婚ミッションってやつ。」


「新婚ミッション?そんなのもあるんですか?」


「育ててるくまが大人になると開放されるミッションなんだけど…。あ、姫ちゃんのはまだ大人になるまでレベルが少し足りないね。大人になるとほかのユーザーのくまと結婚ができるようになるんだけど、結婚するとさっきの新婚ミッションが達成できるんだ。それのクリア報酬のアイテムが姫ちゃんが好きそうだなって思ったんだけど…あぁ、これこれ。」


「…わぁ!とっても可愛いです…!これ、ペアルックのくまのぬいぐるみですか?」


「そうそう。このぬいぐるみのくまも自由にカスタムできるんだけど、オッドアイとかにも設定できるし、リボンとかアクセもつけれるからカスタムしたらモカに似せれそうじゃない?あとベッドとかペアカップもパステルピンクと水色のカラーだから姫ちゃん好みかなって。」


「好みです!可愛い…今使ってる家具よりもこっちの方が可愛いなぁ。茅ヶ崎さんは、このミッションはクリアしてるんですか?」


「いや、俺は主に釣りとかハント系のミニゲームの方をやりこんでるから、くまは大人になってるけど結婚ミッションは放置してるよ。」


「そ、そうなんですね…。あの、茅ヶ崎さん、もし良かったらなんですけど…!」



心做しか、姫ちゃんの顔が赤い気がする。ここで「え?大丈夫かな?もしかして熱でもあるんじゃ…」とかいう鈍感主人公みたいなことなんて思わない。これはまさしくギャルゲ攻略ヒロインが主人公に告白をする前の表情みたいな…




「私を、茅ヶ崎さんのお嫁さんにしてくれませんか…?」




…俺が攻略されたわ。
満天の星空のような色違いの瞳を潤ませて上目遣い。不安なのかさっきより俺に近くなった距離から香るふんわりとした嫌味のない桃の香り。おまけに小さな両手で抱きしめている愛くるしいくまのぬいぐるみ。完全なる甘えた妹属性の女の子にしか見えない。いやそうでしかない。



「…可愛すぎて理解が追いつかないんだけど。」


「え?」



不思議そうに首を傾げる姫ちゃんも可愛い。
もう可愛いしか出てこない。語彙力のないオタクかよ。可愛すぎて押し倒すかと思ったわ。リアルJKにそれはやばいおじさん捕まる。


「…もちろん姫ちゃんなら大歓迎だよ。」


「本当ですか!?えへへ、ありがとうございます。私頑張って早く大人になるので、それまで待っててくれますか?」


ねぇこれゲームの話だよね?今のセリフここから聞いた人は完全に勘違いするわ。最初から聞いてた俺でも勘違いするわ。今の俺絶対気持ち悪い顔してる。万里に見つかる前でよかったわ危ない。


「うん。それまで、姫ちゃんが大人になるまで待ってるよ。」


…今はゲームの話だけど。


完全に落ちた。恋愛で先に俺が落ちることなんてはじめてだ。自分で言うのもなんだけどエリート商社マンで周りから言われるとおり顔はいい方だし。女なんて本当の内面なんて知らないくせに、外面しか見てなくて王子様の俺がブランドとして欲しいだけで。今まで信じるのは自分だけだって、ずっと思っていた。

それが、キミに出会って変わる気がしてる。


姫ちゃんは初めて会った時からゲーム廃人の俺を見ても驚かずに普通に接してくれて、いつだって俺の内面を見てくれていた。それが今までにない安心感や心地良さがあって、姫ちゃんといると素の自分でいられる。そんな人をずっと探していたのかもしれない。今までろくに真剣な恋愛なんてしてこなかった。女なんて面倒だし彼女とか金もかかるしいらないと思ってた。…でもキミなら、姫ちゃんなら。


大人になるまでなんて、大人しく待ってられるほど俺はできた大人じゃないから。今度は俺が姫ちゃんを攻略してみせる。
…今までの女と違って姫ちゃんは簡単に落ちてくれなさそうだけど。その方が燃えるし。



キミを手に入れるためなら、いつだって理想の男になってみせるから。