とある朝のひと騒動
…とても暖かい、温もりを感じた。
私はまた夢を見ていた。いつもと同じ、過去の現実の夢。また朝になって目を覚ますまで、この悪夢を見続けなきゃいけないんだ。何度も見なれた夢の光景に耐えながら朝が来るのを待つ。…でも今日は少し違った。いつもはママとパパが轢かれてしまって、その後幼い頃の私が泣いている姿をみるはずなのに、だんだんその夢は終わっていき新たな夢を見たんだ。
それは幼い頃、私がいづみちゃんとお芝居を見ている夢。昨日であったこの寮のみんなと、楽しそうに笑っている少し大人になった私。
まるでこれからの未来を見ているような夢は、とても心地がよかった。
…もうすぐ眠りから覚める。
普段感じることのなかった心地のいい夢は終わってしまって、現実に戻った私は瞼を開けた。そこにはとても綺麗で大人の雰囲気な女性…ではなくて、男性だろうか。どちらと言われても納得出来てしまうような美しい姿に見蕩れてしまう。私はそのまま目の前の綺麗な人を見つめていると、その人はゆっくり瞼を開いたのだ。
「…そんなに見つめられるとさすがに恥ずかしいな。」
ただでさえ綺麗な顔は、少し意地悪そうな表情もとても似合っていた。
(…そ、そうじゃなくて!早く離れなきゃ…!)
さっきまでは寝起きで全然頭が回っていなかったけれど、なんで私とこの人は一緒に寝てるんだろう…!我に返って私を抱きしめているこの人から離れようとすると、逆にもっと引き寄せられてしまって、
「ん…じっとして?もう少しこのまま…」
私の耳元で、優しく囁いた。私は初めての感覚になんだか恥ずかしくなってしまって、自分でも顔が赤くなっていることは簡単に想像出来た。きっと目の前の彼にもバレてしまっているだろう。赤くなった私をみて彼は優しく微笑んだ。
「雛咲姫ちゃん、でいいのかな?昨日からここで生活をしていくことになったんだよね。昨日は出かけてていなかったんだけど、ボクは冬組の雪白東。ガイと同じ、この部屋に住んでるよ。」
「…雪白、東さん。ご、ごめんなさい。勝手にお部屋を借りてしまって…!その上雪白さんのベッドで眠ってしまって、」
「そんなに謝らないで。昨日は帰ってこない予定だったし、きっとガイがここで寝ることを勧めたんだよね。…姫、昨日はよく眠れた?」
「は、はい…いつもは嫌な夢を毎日のように見てたんですけど、昨日は途中からなんだか安心するような夢に変わって、とってもよく眠れました。」
「ふふっ、そっか。昨日は少し魘されているように見えたから、ボクが添い寝してたんだ。安心してくれたみたいでよかった。」
「あ…雪白さんの、温もりだったんですね。あんなに安心して眠れたのはとっても久しぶりだったんです。本当にありがとうございました!」
「うん。また眠れない夜はボクを呼んで?いつでも添い寝してあげるから。…それにしても姫の髪、とってもさわり心地がいいね。ずっと触れていたいくらい。」
「そうでしょうか…?でも雪白さんの髪も、すごくサラサラですよね…わぁ、毛先まで綺麗…」
「ふふっ、ちょっとくすぐったいな。それに姫は、髪も綺麗だけど瞳も綺麗だね…。オッドアイなのかな。透き通るような空色と、桜のような淡い桃色。」
「…雪白さんは、私の目を見ても変だって思わないんですか…?」
「…どうして?誰かにそう言われたのかな。少なくともここで生活しているみんなはそんなこと言う人はいないと思うけど。ボクはとっても綺麗だと思うよ。ねぇ、もっと近くで見せて…?」
そう言って雪白さんは私の頬に手を当てて、昨日の御影さんと同じように私の瞳を覗き込んできた。至近距離で見つめられるのは恥ずかしい。雪白さんの綺麗な瞳に見つめられて、不思議と私も目が離せなくなってしまった。
「姫が大切そうに抱えているそのぬいぐるみも、姫と同じ瞳の色なんだ。リボンもお揃いでとっても可愛いお友達だね。」
雪白さんは私のこの目のことだけじゃなく、モカちゃんのことも褒めてくれた。その上、説明しなくても変にとらえずに私の大切なものだと分かってくれる。…こんなにも暖かい人は初めてだった。ここの人達はみんな優しい。雪白さんもそれは同じで、昨日の不安とこれからの不安が少しずつ無くなっていく気がした。
「それに、ここには姫よりも変わってる人なんてたくさんいるよ。日本語を間違って使うどこかの国の王子様や、可愛らしい洋服が好きな男の子、見た目は怖そうだけど中身はとっても優しいお母さんみたいな人、常に大きな声でポエムを読み出す人。ふふっ、こうやって数人上げるだけでも随分と個性的だね。それでも、ここではみんな仲良くやっていけてるんだ。それは姫も同じ。ここにキミのことを拒む人なんて絶対にいないってボクが保証するよ。だからそんなに心配そうな顔をしないで。」
「…雪白さんは凄いですね…。私ずっとここに来る前も、来てからも不安が消えなかったんです。でも今の雪白さんの言葉で、今までの不安なんて全部消えちゃうくらい安心出来ました…本当に、ありがとうございます…」
私がそう言うと、雪白さんは綺麗に微笑んで、私を抱きしめていた手を離して起き上がった。
それまで暖かかった温もりがなくなって、私は少し名残惜しい気持ちになる。そんな気持ちが表情に出ていたのだろうか。
「…そんな寂しそうな顔されちゃうと離れたくなくなっちゃうな。」
雪白さんはまた少し意地悪そうな顔で私にそう言った。再び赤くなる私とは違って雪白さんは余裕があって羨ましい…。私もあとに続いて起き上がると、もう朝という時間には少し遅い時間になっていた。本当なら朝の食事の準備をしなくてはいけないのでもう少し早く起きていなければいけなかったけど、今日は伏見さんが朝食を作ってくれることになっていたため、少しだけゆっくりできた。
「朝ごはんの時間にしてはちょっと遅いけど、そろそろ談話室に行こうか。みんなも起きてきてる頃だろうし。」
雪白さんの言葉に頷いて、私は一緒に談話室まで移動した。今日は日曜日でみんなおやすみだからゆっくりしている人もいると思ったけどどうやら私たちが最後だったみたい。雪白さんと並んで2人でみんなに挨拶をすると、みんなはこっちを見た瞬間固まってしまった。あれ、どうしたんだろう。もしかして寝癖でもついてるかな…
「あれ、雪白さん…!?昨日は帰ってこないんじゃなかったんすか?」
「綴、おはよう。その予定だったんだけど早く用事が終わったから帰ってきたんだ。」
「ふむ。東さんは昨晩帰ってきていたのか。おや、昨日はそう言えば姫くんは東さんの部屋で眠ることになったのだったね。」
有栖川さんのその言葉に、焦った顔をする人や少し怖い顔をする人がいた。私は雪白さんを見上げるとまた少しからかうような表情でこういった。
「昨日は部屋に戻ったらガイがいなくて、その代わりに姫がボクのベッドで眠っていたから驚いたよ。…姫、昨日はとっても心地よかったね。」
「は、はい。あんなに安心できたのは初めてでした…。雪白さん、良かったらまたお願いします。」
「ふふっ、ボクでよければ大歓迎だよ。」
私たちがそんな会話をしていると、みんなの顔が急に赤くなってしまった。…さっきまで怖い顔をしていた人はもっと怖いことになっている。ほ、本当にどうしたんだろう。何か変なことでも言ってしまったのかな。
「…いやマジか。純粋そうに見えて初対面の謎の男と一夜を過ごす…ラノベのヒロインじゃなくてギャルゲの攻略難易度高めのキャラだったか。」
「おおおおい!!うそ、だよな。そんないきなり色々と段階を飛ばして、そそそんな…!」
「…東さんってやっぱ手早いのな。でも姫ちゃんがそれに応じるのはちょっと意外だわ。」
「…東さん。あんたはなんだかんだいって節度は守る人だと思ってたんだが違ったんだな…。」
みんなはなんの話しをしているんだろう。未だに何が起きているのか全然わからない…。幸くんはずっと真顔で椋くんの耳を塞いでいて、シトロンさんは咲也さんにおそらく間違っているだろう言葉を掛けている。兵頭さんたちは顔を赤くしてずっと俯いてしまっていて、御影さんは昨日のようにすやすやと眠っている。…うん、どういうことなんだろう…。
「ふふっ、じゃあボクはシャワーでも浴びてくるよ。昨日は暖かくてちょっと汗かいちゃったから。」
そう言って私をこの場において立ち去ってしまった雪白さんをみて、ずっと怖い顔をしていた古市さんの怒鳴り声がMANKAIカンパニーに響き渡った。…結局この場に残された私はみんなに質問攻めされて、雪白さんが戻ってきてから説明をしてくれたところでこの騒ぎはおさまった。
雪白さんの言葉にみんなが勘違いして騒ぎが起きてしまったみたいだけど、結局どんな勘違いだったのかは私には教えてもらえなかった。
…でも、こんなに賑やかなのは初めてで、ちょっと楽しいかもしれない。
これからも楽しいことが沢山起きるといいな。そんなささやかな願いを心に感じて…
私はまた夢を見ていた。いつもと同じ、過去の現実の夢。また朝になって目を覚ますまで、この悪夢を見続けなきゃいけないんだ。何度も見なれた夢の光景に耐えながら朝が来るのを待つ。…でも今日は少し違った。いつもはママとパパが轢かれてしまって、その後幼い頃の私が泣いている姿をみるはずなのに、だんだんその夢は終わっていき新たな夢を見たんだ。
それは幼い頃、私がいづみちゃんとお芝居を見ている夢。昨日であったこの寮のみんなと、楽しそうに笑っている少し大人になった私。
まるでこれからの未来を見ているような夢は、とても心地がよかった。
…もうすぐ眠りから覚める。
普段感じることのなかった心地のいい夢は終わってしまって、現実に戻った私は瞼を開けた。そこにはとても綺麗で大人の雰囲気な女性…ではなくて、男性だろうか。どちらと言われても納得出来てしまうような美しい姿に見蕩れてしまう。私はそのまま目の前の綺麗な人を見つめていると、その人はゆっくり瞼を開いたのだ。
「…そんなに見つめられるとさすがに恥ずかしいな。」
ただでさえ綺麗な顔は、少し意地悪そうな表情もとても似合っていた。
(…そ、そうじゃなくて!早く離れなきゃ…!)
さっきまでは寝起きで全然頭が回っていなかったけれど、なんで私とこの人は一緒に寝てるんだろう…!我に返って私を抱きしめているこの人から離れようとすると、逆にもっと引き寄せられてしまって、
「ん…じっとして?もう少しこのまま…」
私の耳元で、優しく囁いた。私は初めての感覚になんだか恥ずかしくなってしまって、自分でも顔が赤くなっていることは簡単に想像出来た。きっと目の前の彼にもバレてしまっているだろう。赤くなった私をみて彼は優しく微笑んだ。
「雛咲姫ちゃん、でいいのかな?昨日からここで生活をしていくことになったんだよね。昨日は出かけてていなかったんだけど、ボクは冬組の雪白東。ガイと同じ、この部屋に住んでるよ。」
「…雪白、東さん。ご、ごめんなさい。勝手にお部屋を借りてしまって…!その上雪白さんのベッドで眠ってしまって、」
「そんなに謝らないで。昨日は帰ってこない予定だったし、きっとガイがここで寝ることを勧めたんだよね。…姫、昨日はよく眠れた?」
「は、はい…いつもは嫌な夢を毎日のように見てたんですけど、昨日は途中からなんだか安心するような夢に変わって、とってもよく眠れました。」
「ふふっ、そっか。昨日は少し魘されているように見えたから、ボクが添い寝してたんだ。安心してくれたみたいでよかった。」
「あ…雪白さんの、温もりだったんですね。あんなに安心して眠れたのはとっても久しぶりだったんです。本当にありがとうございました!」
「うん。また眠れない夜はボクを呼んで?いつでも添い寝してあげるから。…それにしても姫の髪、とってもさわり心地がいいね。ずっと触れていたいくらい。」
「そうでしょうか…?でも雪白さんの髪も、すごくサラサラですよね…わぁ、毛先まで綺麗…」
「ふふっ、ちょっとくすぐったいな。それに姫は、髪も綺麗だけど瞳も綺麗だね…。オッドアイなのかな。透き通るような空色と、桜のような淡い桃色。」
「…雪白さんは、私の目を見ても変だって思わないんですか…?」
「…どうして?誰かにそう言われたのかな。少なくともここで生活しているみんなはそんなこと言う人はいないと思うけど。ボクはとっても綺麗だと思うよ。ねぇ、もっと近くで見せて…?」
そう言って雪白さんは私の頬に手を当てて、昨日の御影さんと同じように私の瞳を覗き込んできた。至近距離で見つめられるのは恥ずかしい。雪白さんの綺麗な瞳に見つめられて、不思議と私も目が離せなくなってしまった。
「姫が大切そうに抱えているそのぬいぐるみも、姫と同じ瞳の色なんだ。リボンもお揃いでとっても可愛いお友達だね。」
雪白さんは私のこの目のことだけじゃなく、モカちゃんのことも褒めてくれた。その上、説明しなくても変にとらえずに私の大切なものだと分かってくれる。…こんなにも暖かい人は初めてだった。ここの人達はみんな優しい。雪白さんもそれは同じで、昨日の不安とこれからの不安が少しずつ無くなっていく気がした。
「それに、ここには姫よりも変わってる人なんてたくさんいるよ。日本語を間違って使うどこかの国の王子様や、可愛らしい洋服が好きな男の子、見た目は怖そうだけど中身はとっても優しいお母さんみたいな人、常に大きな声でポエムを読み出す人。ふふっ、こうやって数人上げるだけでも随分と個性的だね。それでも、ここではみんな仲良くやっていけてるんだ。それは姫も同じ。ここにキミのことを拒む人なんて絶対にいないってボクが保証するよ。だからそんなに心配そうな顔をしないで。」
「…雪白さんは凄いですね…。私ずっとここに来る前も、来てからも不安が消えなかったんです。でも今の雪白さんの言葉で、今までの不安なんて全部消えちゃうくらい安心出来ました…本当に、ありがとうございます…」
私がそう言うと、雪白さんは綺麗に微笑んで、私を抱きしめていた手を離して起き上がった。
それまで暖かかった温もりがなくなって、私は少し名残惜しい気持ちになる。そんな気持ちが表情に出ていたのだろうか。
「…そんな寂しそうな顔されちゃうと離れたくなくなっちゃうな。」
雪白さんはまた少し意地悪そうな顔で私にそう言った。再び赤くなる私とは違って雪白さんは余裕があって羨ましい…。私もあとに続いて起き上がると、もう朝という時間には少し遅い時間になっていた。本当なら朝の食事の準備をしなくてはいけないのでもう少し早く起きていなければいけなかったけど、今日は伏見さんが朝食を作ってくれることになっていたため、少しだけゆっくりできた。
「朝ごはんの時間にしてはちょっと遅いけど、そろそろ談話室に行こうか。みんなも起きてきてる頃だろうし。」
雪白さんの言葉に頷いて、私は一緒に談話室まで移動した。今日は日曜日でみんなおやすみだからゆっくりしている人もいると思ったけどどうやら私たちが最後だったみたい。雪白さんと並んで2人でみんなに挨拶をすると、みんなはこっちを見た瞬間固まってしまった。あれ、どうしたんだろう。もしかして寝癖でもついてるかな…
「あれ、雪白さん…!?昨日は帰ってこないんじゃなかったんすか?」
「綴、おはよう。その予定だったんだけど早く用事が終わったから帰ってきたんだ。」
「ふむ。東さんは昨晩帰ってきていたのか。おや、昨日はそう言えば姫くんは東さんの部屋で眠ることになったのだったね。」
有栖川さんのその言葉に、焦った顔をする人や少し怖い顔をする人がいた。私は雪白さんを見上げるとまた少しからかうような表情でこういった。
「昨日は部屋に戻ったらガイがいなくて、その代わりに姫がボクのベッドで眠っていたから驚いたよ。…姫、昨日はとっても心地よかったね。」
「は、はい。あんなに安心できたのは初めてでした…。雪白さん、良かったらまたお願いします。」
「ふふっ、ボクでよければ大歓迎だよ。」
私たちがそんな会話をしていると、みんなの顔が急に赤くなってしまった。…さっきまで怖い顔をしていた人はもっと怖いことになっている。ほ、本当にどうしたんだろう。何か変なことでも言ってしまったのかな。
「…いやマジか。純粋そうに見えて初対面の謎の男と一夜を過ごす…ラノベのヒロインじゃなくてギャルゲの攻略難易度高めのキャラだったか。」
「おおおおい!!うそ、だよな。そんないきなり色々と段階を飛ばして、そそそんな…!」
「…東さんってやっぱ手早いのな。でも姫ちゃんがそれに応じるのはちょっと意外だわ。」
「…東さん。あんたはなんだかんだいって節度は守る人だと思ってたんだが違ったんだな…。」
みんなはなんの話しをしているんだろう。未だに何が起きているのか全然わからない…。幸くんはずっと真顔で椋くんの耳を塞いでいて、シトロンさんは咲也さんにおそらく間違っているだろう言葉を掛けている。兵頭さんたちは顔を赤くしてずっと俯いてしまっていて、御影さんは昨日のようにすやすやと眠っている。…うん、どういうことなんだろう…。
「ふふっ、じゃあボクはシャワーでも浴びてくるよ。昨日は暖かくてちょっと汗かいちゃったから。」
そう言って私をこの場において立ち去ってしまった雪白さんをみて、ずっと怖い顔をしていた古市さんの怒鳴り声がMANKAIカンパニーに響き渡った。…結局この場に残された私はみんなに質問攻めされて、雪白さんが戻ってきてから説明をしてくれたところでこの騒ぎはおさまった。
雪白さんの言葉にみんなが勘違いして騒ぎが起きてしまったみたいだけど、結局どんな勘違いだったのかは私には教えてもらえなかった。
…でも、こんなに賑やかなのは初めてで、ちょっと楽しいかもしれない。
これからも楽しいことが沢山起きるといいな。そんなささやかな願いを心に感じて…