you could be my





君はとても遠いところにいる人だった。高校時代よく話していた人だったけれど、同じ教室にいるのに離れたところにいるような感覚を覚える人だった。君とはいつも噛み合わなくて、すれ違う時にガラスに映る君を見ているような感じだった。一度、君が私に触れたことがあって、その手ひらの大きさを何度も思い出す。確かめるように君を繰り返すのだ。

「おー、久しぶりじゃん。覚えてる?俺のこと。」

同窓会で会ったのは、あの頃の君だった。成宮くんは相変わらず眩しい笑顔で私を見て、誰よりも早く話しかけてきた。今日彼が来るというのは知っていたから、鏡の前で何度もやり直した格好で会いに行ったのだ。成宮くんは私を覚えているようで、あの頃より何倍もかっこよくなった姿で私に笑いかける。何も言えない代わりに、頷いてみせるしかない。何だよそれ、覚えてないじゃんと拗ねたような顔で私の名前を呼んだ。やっぱり私はあの頃と変わらず、大した話は出来なかった。成宮くんの大きな目とか、金色の髪とかを見るだけで胸が締め付けられるから、遠くのテーブルに座ってる君を見るしか出来ないんだ。

それから駅まで歩く道で、後ろの方を歩いてる私の隣に来て、意地悪そうに笑っていた。「ねえ、今日会えるの楽しみにしてたの俺だけ?」お酒に酔ってそんなこと言うのだろうか、君はそこまでお酒のにおいがしないけれど。成宮くんは私の前髪を少し触って、じっと見る。

「ねえ、今日これからって空いてる?」



君の手に触れたのは、その時が二度目だった。初めて入る君の部屋を見ていると、後ろから引き寄せられ成宮くんの腕の中に収まる。ドキドキして上手く言葉が出てこないうちに、ぎゅうっと力が強まった。ああ、そうか。私たちはそうなる年になってしまったんだな。でも、どうなってもいいんだ。その大きく乾燥した手のひらに触れたら、良いの?帰らなくてと君がきく。俺、何するか分かんないよ。

「大丈夫、成宮くんだから。」
「ふーん、そっか。」

ベッドに座ると、ゆっくりと押し倒されてキスが落ちてくる。ボタンを外され、首元に痛みが走り痕をつけられていると分かった。何個もつけられ、次第に胸元に近づいていく。

「そ、んなつけたら、」
「ねえ。脱いでよ。」

成宮くんが服を脱ぐと、その鍛えられた体が大きな影となって私に覆いかぶさる。私が下着姿になると、満足そうに触れて可愛いと言う君。こんな風になるなんて思ってなかったけど、そう期待しながら選んだから。指が背中に這い、ホックを外す。探すように私も彼の腕に手を伸ばした。久しぶりに会ったのに、なんて全部どうでもよくなる位にしてほしい。指先で先端をつまみ、ころころと潰す。

「もっと声きかせて。」

その感覚で頭が支配されて、目を瞑ると首に顔を埋められる。吐息のあたたかさと、疼く腹部に耐えかねて足をすり寄せると腰を押し当てられ、その硬くなったものを嫌でも感じた。興奮してるんだと思うと少し嬉しくて、でも少し怖かった。これが終わったら、私はもう彼に二度と会えないんじゃないかと思うと。充分な程触られた後、湿った太ももに手が触れる。撫でて、間に入るように指先がそこに触れた。

「ん、そんな気持ちよかったの?」

男の人ってずるい。指がそのまま入ってきて、頭がくらくらした。だめ、だめ…と止めようとしても、より一層動きを速めるから、水音がどんどん大きくなっていく。溢れて、恥ずかしくてもやめてもらえない。そして、濡れた指を見せて、もういいよねと言うのだ。

火照った体に異物が入ってきて、成宮くんの汗ばんだ背中に抱きついて密着する。痛くないのに、苦しくて涙が出そうだった。足先が痺れて、私の中はもうぐちゃぐちゃで。もっと優しい方が好きなのに、今は酷いことをしてほしくなった。奥まで入ると、その圧迫感に耐えている間にも次へ次へと向かっていく。荒い息が私の唇にかかって、もうそれ以上は望まないと決めた。ただただ快感に溺れて、揺さぶられるだけでいい。それから中が激しく擦れて、終わりに向かっているのを感じ逃げる私の肩を掴んで押さえつけ、彼は私の一番奥に吐き出した。

「…。」

終わった後は、狭いベッドに二人で寝転がり何か特別なことは話さなかった。けれど、今日は泊まっていきなよと乱れた髪を直してくれるだけ。あの時、俺たちこんなことしていたよなってそんな話をして、また前髪に触れた。

「名前にずっと会いたかった。」
「うん。」
「もうこのままここに居なよ。」

冗談で言ってるのかな、なんて俯くとおでこにキスをされる。太ももに手が置かれ、優しく撫でる。

「俺の気持ち分かってんの?」
「分かんないよ。」
「鈍感すぎ。」

これ以上その話をされたら、心臓が破裂してしまいそうになるだろうと目を逸らすと、腰から抱き寄せられる。

「じゃあ、分かるまでするから。」

さっきよりも強引に唇を奪われ、深く深くシーツに沈んでいくのだった。


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