May Be





「コラ、ちゃんと下見て歩けって。」

足を縺れさせると、咄嗟に御幸に支えられた。夜のネオン街がやけに心地よく思える位には酔っていて、頭がふわふわして体が言うことをきかなかくてしょうがない。つい先ほどまで馴染みの店で飲んでいたけれど、急に御幸に帰るぞと腕を引っ張られ連れ出され。そしてそのしっかりした腕にしがみつくみたいにして歩いていたのだ。別れたばかりの彼氏の愚痴を散々にぶちまけたくて無理矢理連絡つけて会ってもらった今日は、御幸もめんどくさそうにしながらたまに口を開いたと思えば、それはひでえなと言うだけだった。ちゃんときいてないでしょ、と不貞腐れるとお前も暇だなとため息をつかれたので「御幸は数少ない男友達だから」と笑うと睨まれた。恐らくいつもの様に帰り賃持たされてタクシーに乗せられるみたいだが。夜の風は少し肌寒い位で。相変わらずつまらなそうな顔している御幸に寒いと文句を言えば気が紛れるかと思ったけど、全く酔いは覚めない。そして、道を曲がる。いつものタクシー乗り場を避ける様に。

「あれ、道間違ってない。」
「ところで明日俺オフなんだけど。」

襟元を掴まれると、強引に引き寄せられて。影が重なった。

・・・

水の滴る音が反響して鼓膜を揺らして震え、体に指が触れた。頬に手が添えられて上を向かされると唇が覆われ、柔らかい感触が降ってきて一瞬鼻が触れる。吐息を間近に感じて目をゆっくり閉じれば口の中に熱いものが侵入してきた。
舌の絡む水音が静かな部屋に大袈裟に響く気がするのは何だろう。そういうものなのだろうか。角度を少し変えては何度も何度もキスをされる。舌を吸われて、どちらのかも分からない唾液が口の中で回っては滴る。ぽたりと床に弾けた。御幸は興奮しているのか、唇を甘噛みして楽しそうに笑った。

「じゃ、挿れるぞ。」

御幸はおもむろに曇った鏡、私にそこに手をつかせて後ろに性器を宛てがい濡れた膣に埋めていく。異物感と粘膜を擦られる快感が同時に流れてきて、情けない顔をした私の顔が視界に入る。ぎゅう、と突き抜けそうな位深く入り込んで、硬いそれが私の中を掻き回していく。御幸の指が結合部に触れ、広げようとぐっと横に陰唇ごと開く。それにより少しは楽になったのかゆっくり何度も抜き差しを繰り返しながら進んでいった。みちみちという音が聞こえる。擦られる度背中に滲む汗は冷たかった。

「っは。全部入ったな。」
「あ、やだ。」

後ろから胸を刺激され腰が揺れた。御幸は顔が見たいのか鏡に水をかけたものだから目の前に鮮明に二人の体を映しだされる。いやらしく摘ままれる自分の胸も。途端に恥ずかしくなって顔に熱に集まるのが自分でも分かる、鏡越しに目が合うと意地悪く笑った顔が言うのだ。何目逸らしてんだよ、はは。お前まじ可愛いわ。ジトジトする室温は一向に良くならないままインサートが再開されて、内側の壁を外側に引きずり出される様な感覚が襲う。カリの部分で押し込まれる部分が痺れる様に蕩ける甘い快感を授けて、それが潤滑液となって溢れる。深くまで入ると肌がぶつかる音がする。ぱちゅんと水気のある震動がバスルームに響いて、足が震えてくる。出てくる声がいつもより甘い、床に落ちた液体が流れていく。流れて、また。ギリギリまで引き抜かれて、押し込まれ溢れる。御幸が背中に口付けをして舐め、吸う。何個も何個も内出血が、背中に付けられていくのが見なくても分かる。そのせいで膣中で硬いものが、彼が態勢をずらすだけで、圧迫される部分が全然違くて混乱する。尿道側の方にぐっと押し付けられる様に寄った肉がそんなことを知らずに行き来して、また脳が、ぐちゃぐちゃになって潰れそうだ。

「やらしい顔してるぜ。名前。」

もっと可愛い声出せ。もっときかせろよ。腰を掴まれて奥を抉るように突かれ、一際大きな声が出た。水気で滑る鏡を掴めるわけもないのに必死に指に力を入れている。感覚や思考能力が著しく低下していっていくもんだから恋人でもないのに求めてしまいそうになる、恋人ではない。ただの飲み仲間。そんな男に抱かれるのが心地よくて壊れそうなのは何でだろう。体だけのお付き合いなんて求められると思ってもいなかった。彼氏と上手くいかないとか上司も休日出勤も消えろとかそういう話をたまに聞いて貰う位だったのに、どうしてこんなことになったのか。送り狼だってされたことはなかった。のに何で。

「、ん。御幸ぃ、無理…っあう。」
「ここが?」

子宮をぐっと押される。圧迫されて、淫らな声が一層大きくなる。弱いとこをせめられて頭のネジが外れそうになり、子宮が揺れる。中から押し上げられ、何とも言いがたい痺れできゅんきゅんする。どんどんとそこがジリジリ熱くなって、一気に限界に昇りつめていく。だめ、そこだめと言っても全く聞く耳も持たずに、腰を掴んで固定し逃げられない様にされて。揉みくちゃにされる自分の大事な所がより一層感度を上げて、御幸を飲み込んでいく。男の局部が膣壁を擦り上げて最奥の入り口を叩く。その度彼の鋭利な先端が触れた所が冷たくなる位に電流が走って、その時張りつめた糸が切れたみたいに体が痙攣した。弾けるみたいに声が出されて、馬鹿みたいに溢れる液がぐじゅぐじゅと音を立てさせる。収縮する膣を何回か往復すると御幸も切羽詰まった表情で引き抜いてそのまま果てた。焼ける様に熱いものがかけられていて、私が体を捩るとそれが腰を伝っていくのだ。

「名前…。はぁ、名前…。」

ホテルに入ったときに言われた言葉がふと記憶の海から浮かぶ。

俺のこと。二度と友達なんて呼べなくしてやるよ。


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