御幸と再び話したのは冬休みのあけた始業式の日だった。この前の事で、と切り出された時やっぱり聞こえてたんだなと思った。あの日の帰り道には無視されたのだろうか、聞こえてなかったのかもしれないとか、振られたのか。とか色々考えて結局何もなかった事にしたのに。御幸は中々言い出そうとしなくて、もどかしいと言うよりかはもうこのまま誤魔化された方が楽なのにと思いながら、ただただ。この場をやり過ごすうまい言い訳ばかりをずっと考えていた。

「ここのお店、まだ残ってたんだね。」

あの日二人は息が白くなる程に寒い空気と一緒に歩いていた。御幸は私が冗談で言った中学校の近くにあった公園に行くという口約束を律儀に守り、おい。行くぞとすっかり忘れていた私を連れ出したのだ。

ねえ絶対黄色だったよ、いやちげえ赤だよ赤、黄色だった、赤、黄色だって、赤、黄色…。

私たちは賭事をしていた。遊具の色がどっちだったかなんて本当は御幸もどうでも良かったんじゃないかと思う。でもなんでかずっと言い争って、じゃあ冬休み一緒に確かめようと言った。そう言ったのが私だったらしい。そうして水たまりの凍った道路を歩いて、他愛もない話をしていた。高校のクラスの雰囲気、部活、課題の提出日、先生のワイシャツが透けていること。私の不意に指さしたお店は待ち合わせの目印によく使われていた。

「いつか変わっちまうだろうな。」

きっと。それでも御幸のことが私にはよく分からなかった。公園に着きその遊具を真っ先に見にいったが撤去されたようで、色褪せた低い柵に腰掛けしばらく灰色の空を二人で眺めていた。地面を蹴ってみると、御幸も同じように蹴ってみせたり、ポケットから手を出して冷えて赤くなった私の手に触れたりした。御幸の中学の頃より前のことを知りたくなったけど、それより今のことが知りたかった。でもなんて切り出せばいいのか分からなかったから私は黙っていたけれど。御幸は黙る私を気にしないみたいに話すから、なんだかとてもつまらない気持ちになったのだった。この公園は無くならないでほしいよな。
御幸は笑っていた。


御幸が息を吸った音にはじかれ顔をあげ、自分が随分長い間息をしていなかったことに気が付いた。そしてやっと御幸は伏し目がちに尋ねるのだ。

「なあ俺のこと好き、なんだよな。」

私は御幸の顔が見れなかった。




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