夢中で走ってたら学校の近くまで来てしまった。
あ、傷心でってことじゃないの。
呪霊に追い掛けられてるんだよね!!
周りに人がいたから慌てて人のいない方に向かった。
じゃないと対処出来ないから。
『もういいかな!? 人いない!? いないよね!! よし!!』
もう自棄だよ自棄。
あともうこれ以上走れないから。
立ち止まって来た道を振り返る。
『神境呪法…………"破鏡不照"』
左手をあげてそう唱えると、周りに鋭い鏡の破片が現れる。
住宅地だから威力は低め。
呪霊はまっすぐ突っ込んでくるようで、丁度いい。
余計なこと考えなくて済むから。
あげた左手を呪霊に向けて振り下ろすと破片が物凄い速さで飛んでいき呪霊を貫いた。
--ギャァアアァアァアア--
耳をつんざくような悲鳴をあげて呪霊は消えた。
『はぁ……まじありえない。疲れた。もう今日は大人しく帰ろ』
「おっと、そうはいかないよ」
ポンと肩に手を置かれた。
振り向くに振り向けない。
終わった。
もう私の頭にはこれしかない。
心臓の音がやけに大きく聞こえる。
走ってでた汗なのか、冷や汗なのかも判断つかない。
よし、逃げよう。
そう思って足に力を入れたら、逃がさないとばかりに肩に置かれた手に力が込められた。
『痛い痛い痛い痛い』
「無視は流石に傷付くなぁ」
意を決して振り向くと、想像以上にやべーやつがいた。
全身黒服に目隠し白髪。
それは見えているんだろうか。
そして片手に喜久福。
いや、美味しいけどさ。
『な、なにかご用でしょうか………?』
「君、呪術師?」
『じゅ……?』
「あれ、違うの?」
『普通の女子高生ですけど』
「まぁそうだろうね」
なんなんだろう。
ちょっと癪にさわる感じ。
「君、この後予定は?」
『めっちゃ忙しいです』
「一緒に来てもらうよ。ちょっと急ぐからトぶね」
『は?』
予定聞いた癖に無視、そしてトぶとはこれいかに。
ボケッと突っ立ってたのがいけなかったんだよね。
気付いたらクラッチバッグのごとく抱えられた。
こちとら花も恥じらう女子高生だぞ。
米俵のごとく抱えられるのも嫌だけどさ。
姫抱きならいいのかって?
それもよくない。
この人変な人だけどイケメンだと思う。
目見えないけど。
女の勘。
そもそも、初対面の男に抱えられるとかやめて欲しい。
イケメンでも許されないことはあるんだからな!!
ちょっとの浮遊感を感じて思わず目を閉じた。
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