浮遊感が無くなったからそっと目を開けた。
するとそこは学校だった。
もう意味がわからんわ。
「今どういう状況?」
「なっ五条先生! どうしてここに」
「や」
目隠し兄さんが座り込んでる男子に話し掛ける。
それで私は黒髪ツンツンな人を認識した。
やべぇ、突っ込まん方がいいやつ。
今の私はクラッチバッグ。
そう言い聞かせて周りを見るとまぁまぁの惨状。
そして………………
『悠仁!?』
「柚希!! なんでここにいんだよ?」
『………………誘拐された。それより、いつから露出狂になったの』
「ちげぇよ!! 色々あったんだ!! てか、誘拐?」
『有無を言わさず連れてこられた私は今クラッチバッグ』
あっちはあっちで喋ってるし、こっちはこっちで喋らせてもらった。
恐らく私の誘拐という単語を聞いて、知らない2人がぎょっとした。
「先生、それは流石にまずいと思います。気に入ったからって……………」
「違うって!」
『だったらそろそろ離して下さい』
「え〜」
『どうして渋る?』
でもちゃんと下ろしてもらえた。
そして意味のわからない会話を再会させた。
「で、特級呪物見付かった?」
「………………」
『とっきゅうじゅぶつ………?』
「あのー、ごめん。俺、それ食べちゃった」
ツンツン男子が黙ってると悠仁が口を挟んで、とんでもないことを言い出した。
「マジ?」
「「マジ」」
『悠仁、犬じゃないんだから拾い食いはやめようよ…………』
「そんな哀れんだ目で見ないで、柚希」
イマイチ事の重大さが分かってない私を放置して、先生と呼ばれた人が悠仁をじっと見つめる。
だから、それで見えてるんだろうか。
「ははっ、本当だ。混じってるよ。ウケる」
何もウケないと思う。
「体に異常は?」
「特に………」
「宿儺と代われるかい?」
「スクナ?」
「君が食った呪いだよ」
「あぁ、うん。多分できるけど」
なんかもう理解しようとするのに疲れた。
「じゃあ10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」
そう言って準備運動始めた。
渋る悠仁に最強だからとか言ってる。
大丈夫かな、この人。
自分で言うとかどうなんだろう。
そして喜久福は見知らぬツンツン男子に。
あ、人が死にかけてるときにお土産買ってきやがったって言いたそう。
私は巻き込まれちゃたまんないから、皆からそろっと距離を取った。
でもこれ判断間違ったっぽいんだよね。
悠仁と混じった? 呪いは女がいるなって言いながらこっちに向かってきた。
まじ勘弁。
ツンツン男子と先生?が慌ててる気がしたけど、気にする余裕はなかった。
『っ"鏡花水月"!!』
でも一瞬発動が遅かったようで、首にピリッと痛みがはしった。
触っても大した出血はしてなかったから一安心だ。
「女………お前、面白いな」
『……………………っ』
あっぶねぇ!!
よく防げたね私!!
偉い!!
おばあちゃんのお陰だよ、ありがとう!!
「相手は僕だよ」
そう聞こえて背に庇われた。
不覚にもホッとして漸く息が出来るようになった気がする。
それでも目は離さずにゆっくり後退した。
その後10秒、悠仁に戻った。
「おっ、大丈夫だった?」
「驚いた。本当に制御できてるよ」
「でもちょっとうるせーんだよな」
「それで済んでるのが奇跡だよ」
そう言って悠仁の額に指をトンと当てると倒れた。
悠仁が心配で駆け寄りたいけど、腰が抜けたのかガクンと地面に膝を打ち付けてそのまま座り込んだ。
『はぁっ………はぁっ………』
「おい、大丈夫か?」
ツンツン男子が心配して背をさすってくれた。
いい人だ。
でも、膝の方が痛い。
「危ない目に合わせちゃってごめんね」
『全くです』
「正直だね……………でも、指1本分だけだとしても宿儺の攻撃を防げたのは凄いよ。恵なら大怪我してた」
「それより首の手当てが先でしょう」
なんか色々言ってるけどもう言い返す力は残ってなくて。
そのまま気絶してしまった。
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