『おはよー、悠仁、五条先生』

「おはよう、柚希」

「柚希!? なんで!?」

『え、聞いてないの?』


待ち合わせ場所で待っていると、悠仁と五条先生がやってきた。
悠仁だけ分かっていないようだったけど。

これは聞かされてないな。



『私も高専行くことになった』

「そうなの!? え、なんで? でも………」

「はーい、詳しい話は新幹線乗ってから!! 乗り遅れるよ」

『そりゃまずい、急ごう』

「えぇ!?」


話し込みそうになったとき、五条先生にぶった切られた。
私は即ホームに向かって歩く。
悠仁と先生も後ろから着いて来てるのを確認しながら。

私達が乗車口に着くのと新幹線が到着するのがほぼ同時で、焦った。


新幹線が珍しいのか、悠仁はキョロキョロしながら進む。
座席は3つ横並び。



「なぁ、先生って乗り物酔いする?」

「しないよ」

「俺、窓側がいい!!」

「僕は構わないよ」

『はよ座れ』

「っしゃ!!」


目をキラキラさせながら窓側がいいという悠仁に先生はニヤニヤしてた。
私は、そう言うと思ってたからなにも言わずに座るように促した。


順番は、

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窓 | 悠仁 私 先生 | 通

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こんな感じ。
発車して10分程で落ち着いた悠仁は、さっきの話を蒸し返した。



「で、なんで柚希も高専に行くんだよ」

『呪霊を祓ってるとこ見られた』

「見ちゃった☆」

「えぇ!? いつから見えてたんだよ!!」

「あら、スルーなの?」


ちょっと先生がしょんぼりしてたから、スッと萩の月を差し出したら嬉しそうに受け取った。

チョロくね?



『子供の頃からずっと。呪霊の祓い方はおばあちゃんに教えてもらった』

「まじか、全然気付かなかった」

『そりゃ隠してたもん』

「まぁ俺も直接見るまでは実感無かっただろうけど………言えよ」

『ごめんよ。で、悠仁はなんで行くのよ』


そうだ、1番の謎はそこ。
見えるようになったから?
でもなんで?

先生に聞いてもそこは教えてくれなかったんだよね。



「ほら、宿儺の指食ったから」

『………………?』

「まぁ、めっちゃ強い呪いの器になったんだよ。で、呪術規定にのっとると死刑なの」

『悠仁………そんなの食ったの』

「そうするしかなかったんだよ」

『はぁ………で、東京には死にに行くの?』

「いや、執行猶予がついた」

『…………………………指全部食わせて殺すとか言うんじゃないですよね』

「大当たり〜。はい、喜久福1個あげる」


何故だか分からないけど、くれるなら貰う。
ずんだ生クリーム味は食べたこと無かったから丁度いいや。

個包装を開けて食べる。

正直なんて言っていいか分からないんだよね。



「幼馴染の死刑を聞いたのに、冷静だね」

『実感が無いんですよね。無いからなんて言ったものかと思いまして』

「まぁ、俺も実感無いもんな」

『私が悠仁に手を下したいって言ったら叶いますか?』

「…………………………叶うよ。でも、させたくない」

『やれるならやりたいです』

「柚希がいいなら俺も柚希がいい」

「はぁ……かわいい生徒のお願いだもんね。任せなさい」


私が手を下すと言ったときの先生の雰囲気が変わった。
冷たい………とはちょっと違う気がしたけどよく分からなかった。

でも結局聞き入れてくれた。



「2人って幼馴染ってだけなの?」

「『?』」

「え、分かんない? 恋人じゃないのって聞いてるんだけど?」


おぉ………この先生結構デリカシー無いというかなんというか………
いや、分かってたことか?



「ちがうよ、ただの幼馴染」

『うん。恋人では絶対無いし、これからもない』

「兄妹って方がしっくりくる」

『姉弟でしょ』

「え〜。先生はどっちだと思う?」

「双子っぽい」

「『あー、かも』」


双子と言われて納得してしまった。



「殆ど一緒に過ごしたよな。俺は爺ちゃんしかいなかったし」

『私もおばあちゃんだけだったから。どっちかの家に泊まることもしょっちゅうだったね。まぁ、それはいまもだけど』

「風呂もまとめて入れられてたよな」

『あ〜入れられた』

「今も入ってるとか言わないよね!?」


先生が吃驚したように言ってきた。
まぁ、双子っぽいと言っても他人は他人だしね。
年頃の男女だし。



『入ってるわけ無いでしょう』

「うん、ない」

「だよね、良かった!!」


あれかな、自分の受け持つ生徒の不純異性交遊を心配したのかな。



『先生知ってる? 悠仁、左足の付け根に黒子が2つ並んであるんですよ』

「そーなの!? いや、柚希だって……………うーん………」

『無いんかい』

「覚えてるわけなくね?」

『まぁ私の話も嘘だけど。先生がどう反応するか見たかっただけ』

「柚希、人をおちょくる才能あるよ」

『いやぁ先生には負けますよ』

「ほら、そういうとこだよ」

『支倉焼ありますよ。悠仁も食べる?』


両側にお菓子を差し出したら、どっちも受け取ってモグモグしだした。



「柚希さ、お菓子買いすぎじゃない?」

『食べ納めです』

「結構早く駅についてたのか?」

『うん。1時間前には』

「真面目だねぇ」

「柚希、食うことには全力だもんな」

『まぁね。新幹線では食べて寝てを繰り返すのが至福』

「確かにずっと食べてるね」


そう、実はもう今までの会話の中で4つ平らげたあと。
そういう先生も結構食べてるけどね!?



「柚希は、新幹線初めてじゃないの?」

『はい。何度か東京に行ってますよ』

「…………………………1人で?」

『はい』

「1回も誘われたこと無いんだよ、先生!! どう思う!?」

「意外だね」

『だって、東京めっちゃ呪霊いるんですもん。絶対ちょっかい出されるし。誰かと一緒なんて行けない』

「なるほどね。まぁ正しい判断だと思うよ」


そう先生がいうと、悠仁はちょっと拗ねた。
どら焼きを差し出したら機嫌がなおった。

そしたら逆の人の機嫌が悪くなった。



「柚希、僕にどら焼きはないの〜?」

『えぇ………』


生徒にたかる教師…………
でもなんか垂れた耳が見える気がする。

幻覚なのは分かってるけどさ〜しょうがないよね。
諦めも大事。



『……………どうぞ』

「ありがと、柚希」

『いーえ』


差し出した瞬間耳が消えた。
やっぱ幻覚だった。


これを見た悠仁がお菓子をねだってきた。
伊達絵巻を差し出すと嬉しそうに食べる。
それを見た五条先生が…………

もうループに陥った。
気分は餌付け。
無心でお菓子を差し出し続けた。


結構買っていた筈なのに、東京につく頃には全く残らなかったし、私の口にも殆ど入らなかった。







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