長時間の移動の末、辿り着いたのは東京都立 呪術高等専門学校。
京都と2校しかないらしい。

なるほど、京都なぁ〜納得。



「スゲー山ん中だな。ここ本当に東京?」

「東京も郊外はこんなもんよ?」

「伏黒は?」

「術師の治療を受けて今はグッスリさ」

『待って、伏黒って誰?』


そう言うと2人がぎょっとしたようにこっちを見た。
吃驚して肩はねたわ。



「あの時一緒にいた子だよ」

『あぁ、あのいい人』

「いい人?」

『背中さすってくれたから』

「体調悪かったのか?」

『そういう訳じゃないけど、色々あったんだよ』


それよりも、敷地が広すぎて迷う自信しかない。
迷った場合はどうしたらいいのか。



「2人にはとりあえず学長と面談ね。下手打つと入学拒否られるから気張ってね」

「ええっ!? そしたら俺即死刑!?」


「なんだ、貴様が頭ではないのか。力以外の序列はつまらんな」


拒否られるのも吃驚したけど、悠仁の頬から口が出てきたのには更に吃驚した。

悠仁は慣れたように手でバチッと叩いた。



「悪ぃ先生、柚希。たまに出てくんだ」

「愉快な体になったねぇ」

『本当にな』

「貴様には借りがあるからな」

「あっまた!!」


今度は左手の甲に出てきた。



「小僧の体モノにしたら真っ先に殺してやる。その次はそこの女だ」

「宿儺に狙われるなんて光栄だね」

『嘘やん。先生勝って』

「なんで柚希狙うんだよ」

『先生が勝てば狙われないからセーフ』

「セーフか? まぁいいや。やっぱコイツ有名なの?」


五条先生が珍しくちゃんと答えてくれた。
いやまぁ、当たり前か。

そっちに気が向いて、腕が4本とか顔が2つあるとかしか聞き取れなかった。



「紛うことなき呪いの王だ」

「先生とどっちが強い?」

「うーんそうだね。力全て取り戻した宿儺なら、ちょっとしんどいかな」

「負けちゃう?」

「勝つさ」


そう言って、目の前の扉を開いて中に入る。



「遅いぞ悟。8分遅刻だ。責める程でもない遅刻をする癖、直せと言ったハズだぞ」


中では、いかついオッサンが可愛いぬいぐるみをチクチク作ってた。



「責める程じゃないなら責めないでくださいよ。どーせ人形作ってんだからいいでしょ8分位」

「……………その子達が?」


あ、スルーした。



「虎杖悠仁です!! 好みのタイプはジェニファー・ローレンス。よろしくおなしゃす!!」


よく言えたな、お前。



「何しに来た」

「………面談」

「呪術高専にだ」

「呪術を習いに……?」

「その先の話だ。呪いを学び、呪いを祓う術を身に付け、その先に何を求める」

「何っていうか、宿儺の指回収するんすよ。放っとくと危ないんで」

「何故」


あ、この面接めんどいやつ。
壁際に移動した五条先生に続いて、私も移動する。



「不合格だ」


まさかの不合格。
すると横にあった人形が動き出した。

"呪骸"って言うらしい。
名前はキャシィだって。


すると、キャシィは悠仁に攻撃をした。
学長の納得のいく答えが出るまで続くらしい。

え、私もあれやんのかな。


やだなぁと思ってたら、悠仁の方は合格がでた。



「生き様で後悔はしたくない」

「合格だ。ようこそ呪術高専へ」


どうやら、納得のいく答えだったようだ。



「次は君だ」


おぉっと、順番が回ってきた。
キャシィが準備運動してるぅ…………



『加々見柚希です』

「君はここへ何しにきた」

『普通に生きるため』


まぁこれだろう。



「さっきの話は聞いていなかったのか?」


そう問われた瞬間、キャシィが飛んできた。
術式は使わずに、避ける。

敵じゃないから叩き落とす必要はないし、当たらなきゃ問題ない。



『私にとって、呪いは見えるもので、命を奪おうとするなら排除する。それが普通です。あの場所は私にとっては普通じゃない』

「隠したまま今まで生きてこられたのだろう。そのままの生活を続ける選択肢もあったはずだ」


考えなかった訳じゃない。
でも、今までの16年を振り返って思った。

視界の端にチョロチョロしてる呪霊を知らん振りして、たまに目の前に飛び出て来るものにビックリして。
見られたら、誤魔化す。

そんな生活をこれからも続けるのかと。


私が出した結論は、こうだ。



『隠すのって案外疲れるんですよ。精神を磨り減らしながら長生きするなんて地獄です。例え短命でも心穏やかに生きる方がいい』

「呪術師に悔いのない死などないと言っただろう」

『呪術師じゃなくても悔いのない死などないですよ。それなら、楽しく、自分らしく生きることができる場所にいたい』


そういって、向かってきたキャシィを思わず学長に蹴り返してしまった。

悠仁が五条先生の横でサッカーボールじゃねぇんだから………って言ってるのが聞こえた。
そして、それを聞いて笑ってる五条先生の声も。



「合格だ。ようこそ呪術高専へ」


無事、合格できて良かった。







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