「分からないか」


唐突にそんなことを言われても何も分からない……と言いたいところだが、きっと降谷さんの機嫌が悪い原因についてだろう。
こんなところで嘘をついてもしょうがないし、すぐにバレるから正直に分からないと伝える。



「俺は、お前の何だ」

『えーっと……こ、恋人……とか?』

「とか、じゃなく恋人だろう」

『ハイ』


え、なにこれ……何言わされてんの?
私の動揺など関係無いとばかりに話を続ける降谷さん。



「それなのに、お前から俺に連絡をくれた事は?」

『えー……』

「ゼロだ。それにポアロにも来ない」

『ポアロには行ってますよ………もしかして、降谷さん』


ここまで言われて漸く気付いた。
降谷さんと会ったのは、海に行ったあの日が最後。
まぁ、私は一方的に降谷さんの姿見たりしたから実感無かったけど……



「声が聞きたいと思っていたのは俺だけってことか」

『ポアロで顔を合わせて話す方がいいと思っているのは私だけってことですね』

「…………シフト教えておく」

『ありがとうございます』


よし、勝った!!
別に勝負をしていた訳じゃないが、ガッツポーズしたくなるほど嬉しい。
我慢できなくてにやける顔は許して欲しい。



「今日は何も予定は無いんだよな?」

『まぁ、人と会うような予定はないですけど』

「なら、これから少し付き合ってくれ」

『いいですけど……何処へ?』


降谷さんは少し口角をあげるだけで答えなかった。
というか、今まで行き先を先に告げられたことなんてあっただろうか?
無いな、という結論にいたり考えることを放棄して外の景色を楽しむことにした。






* * * * * *



降谷さんの目的地は、警視庁だった。
コナン君誘拐事件の事で事情聴取に来たらしい。



『どうして私を連れてきたんですか?事件の事全く知らないのに。というか、一緒に事情聴取受けていいんですか?』

「…………良くない」

『でしょうね』


眉間にシワを寄せて言葉をこぼす降谷さんに、苦笑いしか出てこない。
エントランスというか待合室というか、そういった場所で待ってればいいと思っていたのに、お連れ様もご一緒になんて……

ま、いいか。






* * * * * *



事情聴取中、私は降谷さんの横に座ってお茶をすすっているだけだった。
内容は、犯人の車に降谷さんの車をぶつけて止めたのがやり過ぎだって言うことらしい。

まぁ内容はそれだけで大したことはなく、すぐに解放された。
私的には世良さんの方がやりすぎだと思ったけどね……



「付き合わせてしまったので、真昼の用事に付き合いますよ?」

『(安室透バージョン………)じゃぁ、重労働頼んじゃいましょうかね?』


そんな事を話ながら警視庁を出た。




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