駐車場に向かう途中で最近よく聞くようになった声を聞き、降谷さんは即座に方向転換した。
私はめんどくさそうな雰囲気を感じたので、そのまま車に向かいたかった。

向かいたかった………ということは、向かえなかったということ。
降谷さんに腕を捕まれて方向転換し、腰を抱き寄せられた。
そのまま声が聞こえる方に誘導させられる。



『ちょ、安室さん!!逃げないので、少し離れてくれません?』

「離れたいなんて、傷付くこと言いますね」

『そういう意味じゃないって分かってますよね?せめて腰に回してる腕退けてくださいよ……』

「では、手を繋ぎますか?」

『…………いえ、このままで』


何故だろう、手を繋ぐ方が恥ずかしく感じる。
腰を抱かれるのは私の意思でやってる訳じゃありませんってスタンスでいけるからか。
それとも、イタリアじゃ何かと腰を抱かれる事が多いからか。

後者な気がする。
でも断然降谷さんにされる方が緊張するし、恥ずかしい。

両手で顔を覆いたくなるが、しない。
こういう時は堂々としている方が良いというのは向こうで身をもって体験している。

今、私に出来るのは無心で降谷さんの誘導に従うこと。
そう自分に言い聞かせている間に、降谷さんはコナン君に話しかけた。



「僕も残念だよ……せっかく噂の阿笠博士に会えると思ったのにね……」

「あ、安室さん………に、真昼姉ちゃん」

『おはよー』


驚くコナン君にのんびりと朝の挨拶をする。
少年探偵団の皆はまだ降谷さんと接触していないのか、黙ったままだ。



「毛利先生から聞いていたんだ…今日、君達少年探偵団が阿笠博士の車で警視庁にパンフレットの撮影をしに行くって……丁度、僕も警視庁に来るように言われてたから……もう終わったけど……」

「え?何で呼ばれたの?」

「この前、君を誘拐した犯人が乗った車に僕の車をぶつけて止めたあの一件さ……やり過ぎだったんじゃないかって再度事情を聞かれたんだ……」

「そうなんだ。真昼姉ちゃんはどうして安室さんと?」


おぉ……空気でいるつもりだったのに、コナン君に声をかけられた。
私はコナン君に目線を合わせるためにしゃがむ。



『朝早くに呼び出されたんだよ。呼び出しというより拉致に近かったけど』

「人聞きが悪いですね……予定は確認しましたよ。それに、彼女をデートに誘うのは当然でしょう?」

「え……彼女………?」

『何その反応。私に彼氏が居ちゃ可笑しいか?』


コナン君は目を見開いたまま固まってしまった。
目の前で手を振ったり、頬をつついたりしていれば、漸く意識が戻ってきたらしい。

そのまま、変わらず目の前にいた私の胸元を掴み、すごい剣幕で問い詰めてきた。



「どうして安室さんなの!?今まで興味ないって言ってたのに!!それに、おみくじは!?あれってあたってた!?」

『ちょ、落ち着いて……何をそんなに取り乱してるの?』

「あ、いや……あはは…」

『まぁいいや……じゃ、またね』

「うん…またね」


コナン君の珍しい言動も気になるが、さっきチラリと見た降谷さんの目が笑っていない事の方が重要な気がしたので、早々に会話を切り上げた。

コナン君達に背を向けて歩きだすと、すかさず腰に腕を回す降谷さん。



『目が笑ってないですよ』

「あの少年と仲が良いんですね」

『まぁ会う回数も多いですし、家に泊まりに来たことだってありますよ………なんです?ヤキモチですか?』


冗談で言ったのに真剣に考え込む降谷さん。
すると何をおもったのか、とんでもないこを言い出した。




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