‐灰原side‐


先日、工藤君から気になる人物について話を聞いていた。
そして今日その人物に遭遇した。


『柊真昼です。よろしくね?』

そういった彼女はにっこり笑う。


「…どうだ、灰原?」

「組織内じゃ確かに見たことないわ。それに、雰囲気も一般人と何も変わらないように見えるわね」

「やっぱお前もそう思うか」


私たちが視線を向けていても何も感じてる風には見えず、見られていることにも気付いてなさそう。
工藤君とそう話している間に公園でサッカーをすることが決まり、彼女も付いてくることになった。



公園では私と彼女はベンチに座っているだけだった。
そのうち彼女が話しかけてきた。


『君はサッカーしないの?』

「えぇ。今は本読みたい気分だから」

『そっか』


それっきり何も話しかけてはこなかった。
工藤君とともにいる毛利蘭はよく話しかけてきたりする。
だが彼女は必要以上に話しかけてこないし詮索もしてこない…
正直彼女のとなりは居心地がよく感じる。




彼女に電話がかかってきて離れたときにサッカーをしていた子供達が戻ってきた。

「あれ?お姉さんどうしたんですか?」

「電話がかかってきたみたいよ」




「…灰原」

なにが聞きたいかわかったが、そのまま言うのも癪に障るので何もない風に、特に何もないわと答えた。


『ごめんね、用事が出来たから帰るね。みんなも遅くならないように帰るんだよ?』


電話が終わった彼女はそういうとこちらに手を振って公園の出口に向かって行った。




「(確かに、気になることもあるけど…彼女はどこか大丈夫な気がするわ…)」

去っていく彼女の簪が夕日に照らされて輝き、私の感は当たっていると教えてくれてるような気がした。







* * * * * *



「では、報告いたします」


内容を聞く限り、大きくは原作から反れてはいないようだ。
江戸川コナンの正体は高校生探偵の工藤新一だということ。
とある組織が開発した薬、アポトキシン4869によって体を縮められたということ
その薬を盛った人物の乗っている車がポルシェ356Aだということ。
そして…灰原哀の本名は宮野志保。
アポトキシン4869を作った張本人で組織を抜ける際に薬を飲み、体が縮んだということ。
現在は小学1年生として生活していること。





『……じゃぁやっぱりその組織って綱吉が言っていた組織と同一ってわけだ?』

「えぇ、少し前瑞希様が命を救ったシトリンとネフライトが所属していた組織ですね」

『やはりそうか…』


「当時瑞希様が調査は必要ないとおっしゃっていたので、詳しいことはまだ判りませんが…裏の組織としては中々の規模を誇っているようですね。まぁうちとは比べるまでもありませんが」


アクアマリンが誇らしげに語る。


『まぁ大した脅威はないということか』

「はい」

『だが、もうそうは言ってられないな…その組織のトップが誰なのかはつきとめておいてくれ。後々、役立つかもしれないからな。後は薬だな。情報はスぺサタイトとトルマリンに渡せ。解毒薬を作ってみろとな』

「かしこまりました。それでは失礼いたします」

一通り報告を終わったアクアマリンは一礼をして出ていく。





『原作とそこまで変わってない…か。まぁ彼女等は死んだことにしているからな。変わらないのも頷ける』


綱吉の言うとおり、あの組織が本当にこちら側に足を踏み入れていたとしたら彼等…復讐者に連れてかれる可能性もある。



はじめて接触したのはシトリンが死んだことになったあの倉庫か。
さぁ、私のこと覚えているかしらねぇ?



『ふふっ…楽しくなりそう』

そう呟いたことは誰も知らない。





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