ベランダで日向ぼっこするアダムとイヴを眺める。
2匹でじゃれたり、太陽に向かってお腹見せてごろごろしていたり。
こんな風に2匹を眺めるのは久々だと一息ついていれば、シャワーを終えた降谷さんが戻ってきた。



『サッパリしました?』

「あぁ、真昼は?」

『いやぁ……もう少し後で』


動くのが億劫になったからとは言えず、曖昧に返す。
特に追求はされず、降谷さんも私の隣に腰をおろした。

降谷さんが髪を拭く音だけが耳に入る。
休日の昼過ぎ、ここまで穏やかに過ごせるなんて初めてではないだろうか。
ファミリー以外の気配のするところで、こんな気持ちになることがあるなんて数ヵ月前の自分に言ったところで信じないだろう。

それよりも………



『眠い』

「昼寝でもするか?」

『………口に出してました?』

「あぁ、はっきりとな」


頭の中で考えていただけなのに、声に出していたようだ。
だって、しょうがないだろう?
労働後で、14時過ぎの暖かな日差しを浴びれば眠気を誘われるしかない。



「1,2時間ぐらい寝たらどうだ?」

『いやぁ……降谷さん来てるし………』

「………なにもしないさ」


何をどうとったのか、頓珍漢な事を言う降谷さん。
てか、それ言う方が余計に怪しいと思うんですけど……



『降谷さんと会ってるのに、寝るのは勿体ないって意味で言ったんですけど……盗聴器でも仕掛けられる心配をしてると思ったんですか?』

「あぁ…」

『別に心配してないですよ。それに、そんなものをこの部屋に仕掛けたとしても、即使い物にならなくなります』

「そんな仕掛けがあるのか?」

『ありますよ』


原理は企業秘密ですと言うと、そうかとだけ溢したのち黙ってしまった。
仕掛けについて考えているのだろうけど、答えはでないだろう。
機械仕掛けと言うより生物仕掛けだし。

ちょっとした優越感に浸っていれば、降谷さんに腕を引かれた。
特に拒絶する必要もなかったので、されるがままにしていた。

最終的に、降谷さんに膝枕をしてもらっている体制になった。



『これは……絵面的にどうなんですか。普通逆では?』

「俺がしてみたかったんだ。寝心地はどうだ?」

『良くはないですけど……………安心はします』

「なら、よかった」


恥ずかしさと少しの意地で返事をしてしまった。
だが、それすらも想定内だと言わんばかりに返してくる。
想定外の事が起きたときの降谷さんがみたくて、からかってみる。



『降谷さんもどうです?今なら、頭を撫でるというオプション付きですよ』

「それはいいな。後で頼む」

『…………ところで、何故頭を撫でてるんですか』

「なんだ、撫でて欲しいんじゃないのか?」


自分の発言が自分に返ってきた。
完敗だと口を閉じたが、降谷さんの手は未だに私の頭を撫でている。
優しい手つきで、時折髪に指を絡ませたりしている。
紅桜鬼をつけている関係で、髪を下ろさないから珍しいのだろうか。

頭を使ったからか、疲れたからか。
それとも、降谷さんといるからなのか。
寝るつもりは無くても、いつの間にか意識を飛ばしていた。



「簡単に寝るとは…………無防備なのは俺の前だけにして欲しいものだな」


そんな事を降谷さんが呟いたのなんて、知りもしなかった。





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