今日は、園子がショコラを食べに行こうと言っていた日。
流石に徒歩で行ける距離ではないので、電車に揺られている。


「楽しみだわー。世界大会で金賞を受賞した辻元由紀彦のショコラが食べられるなんて」
「お店のプロデュースをした佐倉真悠子さんて若くて美人」
「辻元さんの成功は真悠子さんのアシストなしにはありえなかったって言われるほどなのよ。そして二人は結ばれるのぉ!!」
「お似合いだよねぇ」
「はぁ…世界的ショコラティエと」
「美人ショッププロデューサーが作る!!」
「「ラブロマンスショコラ!!」」
「好きな人と一緒に食べれば恋がかなうのよ!!」
「素敵…」




女子トーク全開ね…
しかもかなりのマシンガントーク。
蘭の隣にいるコナン君も同じこと思ってそうだが、居心地の悪さもプラスされてそう。


「はぁ…真さんと食べたかったなぁ」

「いいじゃない。おいしいものは誰と食べても幸せだよ?」

「んなこと言って、自分だって新一君と一緒に食べたかったんじゃないの?」

「なっ…そんなことはない」


照れちゃってまぁ。
押しつぶされてるコナン君も嬉しそう。
コナン君がっていうより工藤新一かな?

『(実は一緒に食べちゃうんですーって思ってるわね、あの顔…)って、真さんて?』


一応知らないことだと思われる内容には反応をしておかないと、後々面倒なことになる。

「あぁ、真昼は知らなかったわね。京極真さんっていって園子の彼氏よ」

『え!?あのイケメンに目がない園子に特定の人がいたの!?やっぱイケメンなの!?』

「真昼…私のことそんな風に思ってたのね…」

「日頃の行いのせいなんじゃない?」

「煩いよ、がきんちょ」


やっぱみんなそう思ってるのね…
まぁ私はずーっと言ってみたかったことが言えてすっきりしたんだけど。
どうして付き合ったかは記憶にないけど……いつか聞き出すか。


「確かにイケメンよね。まぁでもイケメンて言うより男前って感じだけど…」

『へぇ…金髪のキザな野郎かと思った』

「真昼…」

『ごめんごめん。冗談よ』




そんな軽い感じに園子をからかっていれば、ふとコナン君が視界に入った。
居心地が悪そうにしていたと思ったが、案外もう馴染んでる。
この2人と一緒にいるならいつかは慣れるだろうけど、高校生の割に順応性高いよね。
きっと1番難解で、信じ難い状況に自分が置かれているからだろうな。
普段は、何も感じていないように普通の小学生として生活しているが、きっと孤独感はふとした瞬間にあらわれるはずだ
自分は工藤新一なのに、そう名乗ることが出来ない。
誰も、自分を見ていないと思うことだってあるだろう。
私自身、そんな孤独は身に覚えがある。
1人で全て抱え込んでしまう彼の、力になれたらと思わずにはいられなかった。







* * * * * *



「真悠子さん、ご無沙汰です!!」

「お招き、ありがとうございます」

『ありがとうございます』


さっき園子達が美人だと騒いでいたが、実際見ると本当に美人だ。
向こうでも結構美人を目にしてきたが、彼女も中々の美貌の持ち主だ。

「ル・トレゾール・ド・フリュイへようこそ。おまちしてましたわ」

「素敵なお店ですね」

「鈴木財閥が全面的にバックアップしてくださったからインテリアも一流のものが揃えられたわ。明日開店だから、園子さんたちが最初のお客さまよ」

「お店でも辻元さんのショコラが食べられるんですか?」

「うちはできたてのショコラを召し上がっていただくのがコンセプトなの」


コナン君は店内が気になるのか、好奇心なのか、店内をキョロキョロ見回して、真悠子さんに話しかけた。

「ねぇ、あの瓶ってお酒なの?」

「え?あぁ、あれはナフレカって言ってね、強いお酒に果物を漬け込んで作った果実酒なの」

真悠子さんの説明に、ふぅんと返事を返したコナンを横目に、園子たちはガラスケースの中にあるショコラに目を奪われていた。

「…わぁ!!どれも綺麗で美味しそう!!」

「ホント!!食べちゃうのがもったいないくらい!!」



『コナン君って、好奇心旺盛よね』

「え?そ、そうかなぁ?」

『うん。だって普通気にならないものだと思うよ?だってほら…2人はすでにショコラに釘付けだもの』

そう言うと、蘭たちの方を見て少しあきれたような表情をしている。
正直、私もあの中を見てみたい。
まぁでも男の子だからね。
他に興味がいってしまうのも仕方ない。


「当店のショコラはどれも宝石に見立てた形をしているの。お店の名前はフランス語で果実の宝って意味なのよ」

「このフルーツのはなんですか?」

「棚の、果実酒の実の部分をショコラにしたの。どう?試食してみる?」



そう言ってガラスケースから3つ取り出して差し出してきた。
アルコールを気にしている蘭の隣で、既に園子はショコラを口に頬張って、両手を頬に当てて幸せそうな笑みを浮かべている。
蘭も、真悠子さんのアルコールは火でとばしてあるから大丈夫だという言葉に安心して手を伸ばす。



「あ、じゃぁ私も…おいしい!!真昼も食べて」

『うん…!!やば…おいしい…』


思ったよりおいしく、驚いた。
アメジストとアクアマリンに教えたら喜びそうだ。


この店のショコラにはまってしまった。
いつも頑張ってくれている部下に教えてあげようと思いつつ、口の中に広がる上品な甘さを堪能した。





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