「ようこそ、我がアトリエ。ル・トレゾール・ド・フリュイへ」

「彼がショコラティエの辻元由紀彦よ」


厨房と店内の境にある扉が開き出てきた辻元由紀彦さんを、真悠子さんが紹介してくれた。
園子がキラキラしているのは気のせいではないだろう。
私的にはなんか胡散臭いけど…

「金賞受賞、おめでとうございます!!」

「お会いできて光栄です!!」

そう言って頭を下げる2人に合わせて頭を下げる

「Merci.こちらこそ光栄です。こんな可愛らしいお嬢さん方にそんな風に言われるなんて」


『(やっぱり胡散臭い…)』
「(キザな奴…)」

そう思った時コナンと同じことを思った感じがしたので視線を向けると顔がむすっとしており、やっぱりな…と思った。


「紹介するわね。こちらが毛利蘭さん」

「はじめまして」


「こちらが柊真昼さん」

『はじめまして』


「そして鈴木園子さん。鈴木財閥のご令嬢よ」

「はじめまして!!」

園子は頬を赤らめている。
お前は彼氏いるんじゃないのか。

「Enchant* mademoiselle.さすが高貴な気品をお持ちだ。さぁ、どうぞ。僕は準備があるのでこれで」

そう言って園子の手をとり席まで誘導する。
なるほどね、お金と権力のためってわけか……分かりやすい男。


「はぁ…」

まぁ園子はそんなの気にしないと、メロメロだ。

「存分に楽しんでください」

そういうと準備のためか、厨房に戻っていく。



「さぁ、準備にかかるわね。明日のオープン取材で披露する金賞受賞作を皆さんに御賞味いただきますから」


「わぁ」
「やっりぃ。もしかして明日は婚約発表もあったりして」


やっぱ園子はそういう話好きよね…
真悠子さんもなんか嬉しそうな表情。
やっぱ女性はそういう幸せがいいのかな
"真昼"もその幸せを手に入れるためにあんなことをしたわけだけど……

「…!内緒」

「またまたぁ、羨ましー!っくふふふ」


『園子…その笑いは気味が悪いよ』

私の言葉を園子は気にしていなかったが、コナンと蘭はうんうんと頷いてるように見えた。








* * * * * *



「なんだよ、ご令嬢って。高校生のガキじゃねぇか」

そう言ってグラスに入った水を飲む。

「……まぁいい。娘に気に入られれば財閥から金を引き出すのも容易くなるだろう。だが…あの柊真昼って子は高校生のわりに大人びていて美人だな」







* * * * * *



……っ!?なんか悪寒がした。
別に気にするほどのものでもないけど…
園子は厨房にいる彼の写真を撮ったようだ。
蘭に何やってるのかって言われているが気にせず独身最後の記念写真とか何とか言っている。

「だって辻元さん素敵だもん」

「そぉ?ちょっとイメージ違うな」

『私も蘭に1票。胡散臭い』


「あんた…案外はっきりものを言うのね…」


褒められたのか貶されたのかわからないコメントをいただいた。
真悠子さんはテーブルクロスを直し終わり、さぁ始めましょうかと言い、厨房へ向かう。
ポットを辻元さんに手渡され戻ってきた。


「ただいまよりル・トレゾール・ド・フリュイ、オープニングセレモニーを開催いたします。このたび世界で栄誉ある世界大会で金賞を受賞したショコラティエ。辻元由紀彦の登場です」

真悠子さんを照らしていたスポットライトが消え、ショコラを照らし出した。


「うわぁ」

「綺麗…」

『確かに綺麗…(でもあれ…どっかの堕王子の関門海峡のワルツって氷の彫刻に似てる気がする…)』


「こちらが日本初公開となる、"ドレスパス(de l'espace)宇宙(そら)へ"と題したショコラになります」


さすがのコナンも彼の作品の美しさに見惚れて拍手をしている。


「材料には最高級クリオロ種のカカオとココアバターを使用。厳選したフルーツを使用した果実酒がショコラの風味を最大限に引き立てています」



「まるで彫刻みたい…」
「ホント、素敵!!」

2人は美しいショコラにうっとりしている。


「でも本番はこれからなのよ?」


真悠子さんはそう言って持っていたポットを辻元さんに渡す。



「それでは皆様を夢の彼方、遥かな天の川へお連れしましょう」

そう言ってポットの水をショコラの下へ注ぎ込んだ。





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