ポットの水がそそがれると、火花が散り始める。
自分の思っていたのとは違ったのか、辻元さんが戸惑った表情を浮かべたのが見えた。
次の瞬間一気に炎が大きくなる。
「…!?これは…うわぁっ!!」
その熱風で吹き飛ばされた辻元さんは壁際の棚にぶつかり、飾ってあったナフレカの瓶が床に落ちて割れる。
瓶の中のアルコールに反応したのか、さらに大きくなった炎が彼に襲いかかる。
「逃げて!!」
「園子!!」
『コナン君!?何を?』
「真昼姉ちゃんも逃げて!!蘭姉ちゃん、消防に電話!!」
「由紀彦さん!!」
コナンは辻元さんの火を消そうと試みるがさらに炎が燃え上がりあきらめて店の外まで逃げてきた。
スプリンクラーが火を消すところをぼんやりと見るだけだった。
「弓長警部。共同経営者の佐倉真悠子さんです」
「どういった経緯で火が?」
「突然、ショコラの果実酒に火がついて…驚いた辻元が壁にぶつかって瓶が落ちて…そして…そして…辻元が…」
両の掌で顔を覆い泣き出してしまった。
すると彼の部下が瓶について警部に話す。
「中身はナフレカというフルーツをスピリタスで漬けた果実酒です」
スピリタスって結構ヤバいイメージあるよね。
燃えやすい素材を選んだ私のせいだ…と彼女は泣き崩れてしまった。
蘭は彼女を心配して向こうで休ませていいか警部に許可をとり、入り口付近に立っている私のところまで彼女を連れてくる。
「警部、火元が静電気ってことは考えられませんか?」
「ん?揮発した果実酒のアルコールに衣類の静電気で引火。驚いた辻元さんが棚に衝突したその拍子に瓶が落ちて酒が床に広がり、炎が一気に上がった。さらに燃えやすい服を着ていた辻元さんに燃え移ったってことか?」
「ねぇ、警部さん。他に火元がないからって静電気って決めつけるのは早くないの?」
警部の発言に疑問を感じたコナンが動き出した。
画面の外から見ていたときはなんとも思わなかったけど…
警部の言葉を無視して現場をうろちょろするコナン君をみているのは心臓に悪い。
ちょっと驚かそうと、棚の近くで何かを考え込んでいるコナン君に近より声をかける。
『コナン君、なにかあったの?あ、それってなんかの殻?』
「ピスタチオの殻みたいだよ」
そう言って棚にも目を向けた。
『瓶の下にそれを置いて倒れやすくしていた…って感じかな?』
「っえ?あ、多分そうだとおも……うわっ」
私の言ったことにちょっと驚いたようだった。
その顔に満足していればコナン君が急に宙に浮きぎょっとした。
「坊主、何度も言わせんじゃねぇ。現場は公園じゃねぇんだぞ?嬢ちゃんももどんな」
おこられたー。
まぁあとはコナン君に任せましょう。
決してめんどくさいからではない。
「真悠子さん、痛みますか?」
その蘭の声を聞き、弓長警部がどうしたのか尋ねながら向こうに歩いて行く。
…コナン君を猫の子ごとく、首根っこをつかんだまま。
「ねぇ、どうして真悠子さんの服も燃えたのかなぁ?僕たちは何ともなかったよ?」
…君はどこからその声を出すのかというほど無邪気な声を出す。
警部にどうして火がついたか聞かれたが、火の粉が飛んだのだろうと話す彼女。
「確か、辻元さんに銀のポットを渡した後は園子のそばに」
「警部、遺体の近くでスチールウールが燃焼したものが発見されました。」
その言葉にコナン君はさらに考え込むしぐさを見せ、また動き回り、無邪気に質問をぶつける。
「ねぇ、おじさん。これ何かなぁ?」
「よく脱臭剤の袋なんかに使われるんだよね」
コナン君て、逆に何が知らないのかが気になるよね。
ファッションとか疎そう?いやいや、あの女優が母親よ?待てよ、短パンに赤い蝶ネクタイに青いジャケットよ?……どうなんだろ?
全く事件に関係ないことを真剣に考えてしまった自分が少し可笑しかった。
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