今日は日曜で、任務も何もない平和な日
…といってもコナン君が事件に巻き込まれれば報告が来るんだけど。
そんなわけで私はいま、アダムとイヴを風呂場に押し込んでシャンプーしている。



『ちょ、アダム!!イヴを見習って大人しくしなさいよ』

「ガゥ!」

『あぁもう!!あんたが暴れるから時間がかかるんでしょ』


この2匹の毛並みがごわごわしてきたように感じたため、重い腰をあげて毛並みの維持に従事しているのだ。
いつも夜は一緒に寝ているため、ほぼ自分の為であるが。
まぁでもイヴは風呂嫌いじゃないようだ
だが、日曜日にやらなければよかった。
普通の豹でも大きいというのに、それよりもさらに大きいのだ。
大人2人乗っても平気だろうというぐらいには。
それ故結構な重労働になる。



『明日休もうかな………いった』

そういった私の足をイヴが尻尾で叩く。
サボるなって言いたいのかこの子は。
私に似らずに真面目だこと。
まぁシトリンに似てるよね、最初の方は結構世話頼んでたから。


『これでこの子があの人になついたらいよいよ本物ね』

まだ会ったことはない、目付きの悪いニット帽を被った彼。
シトリンがきっと今でも愛しているであろう男。
原作では彼の方も本気だったっていう描写があったけど、実際はどうなんだろう?
全てが終わったとき、もし2人が今度こそ一緒に生きていこうと決めたら…



『一途な愛……なんてものが本当に存在するってことか』

なんて呟いてみて、ふと"柊真昼"のことを思い出した。
そういえば、真昼の時は一途だったよね……
といっても、本当に彼を愛していたか、といわれても即答はできない。
執着も愛だっていうんならそうなんだろうが……
まぁでもあれは壮大なドキュメンタリー映画見てる感じだったな。
自分であって自分でないって感じ。
まぁ、最近はもう自分が誰かもわからないし、誰として見て欲しいのかも分からない。
よく生きていられるなと思うけど、死んで別の世界で生まれ変わってしまうかもしれないと思うと、それも出来ないのも事実。


『………力は強くなっても、心は弱すぎるな』

少し弱気になりながらも、アダムとイヴを洗い終える。
そのままベランダに出せば、体を震わせて水気を飛ばしている。
今日は天気がいいから1時間ほどで乾くだろう。
じゃれあう2匹を部屋の中から眺めていれば、テーブルに置いてあったスマホが着信を知らせる。
面倒だなと思い、ディスプレイを確認せずに出る。



「やぁ、瑞希。久しぶりだね」

『…雲雀さん?どうしたんですか?』

「沢田綱吉から君が今日本にいると聞いてね。今から行ってもいいかい?」

『え…ここ並盛から結構距離ありますよ?』

「知っているよ。さっき空港出たからね、あと1時間ほどで着くから」

『え、ちょ、雲雀さん!?…………切れてるし』


並盛大好きな彼が今日中に戻らないなんて珍しい。
しかもなんでわざわざ此方に来るんだか。
でもとりあえず買い物にいかないと、冷蔵庫からっぽだ。
ベランダの扉を開けたまま、鍵をもって部屋を出る。


『ハンバーグと和食どっちにしよう?ここは和食かな』

ハンバーグでもいいのかもしれないが、今日日本に戻ってきたなら和食の方がいいだろう。
まぁでも一応ハンバーグの材料も買っておくか。







* * * * * *


『到着するの1時間後って言いませんでしたっけ』

「君に会いたくて飛ばしてきたんだよ。チャイムならしても出てこなかったのは、予想外だったけどね」

『買い物に行っていまして……とりあえず、中入りましょう。任務後なら少しは休んでください』


マンションのエントランスでそんな会話を交わす。
真っ黒なスーツを纏った彼をこのまま人の目に触れそうな所にいつまでも居させられない。




「へぇ、結構いい部屋だね」

『雲雀さんにそう言って貰えるのは嬉しいですね……ソファにでも座って寛いでてください』

「うん、そうするよ。で、あの2匹はどうしてベランダに出してるの」

『さっき洗ったんですよ。もうそろそろ乾く頃だと思いますけど』

「ふぅん」


ソファの背もたれに無造作に置かれた彼のスーツを手に取りハンガーにかける。
彼がここに来たのって、あの子達を触りに来たんじゃないのかな?
動物好きだし、あの子達も結構なついてるし。
実際、雲雀さんに気付いたあの子達此方に入ってきたそうにそわそわしてるし。
………仕方ない、入れてやるか。
もう乾いてるだろうと思い、ベランダの扉を開ければ一目散に雲雀さんの所にとんでいく。



『雲雀さんによくなついてますよね…』

「小動物は嫌いじゃないよ」

『…小動物には見えませんけどね』

アダムとイヴを小動物と言い切るとは…
少し異様な光景に背を向け、放置したままになっていた食材を冷蔵庫に入れる。

「そうだ、今日は泊まるからね。明日も出掛けるよ」

『……はい!?』

「何か文句でもあるの?」

『……イエ、アリマセン』


殺気立って言われれば従う他ないよね。
戦えば私の方が強いんだけど、綱吉と一緒でどうにも逆らえない。
それに、1人で居なくて良くなったことにほっとしてるのは絶対に言えないが………






ALICE+