『……ん"ぁ"』
少しの息苦しさを覚えて目を覚ます。
昨日は雲雀さんがベッドを使っていたから私はリビングのソファで寝たはず。
なのに何故私は今ベッドの上にいるんだろうか。
目線を下げて自分の体を見れば、何か色々絡み付いている。
纏めると……何故か雲雀さんの腕枕で寝ている私に雲雀さんとアダムとイヴの腕やら足やらが乗っかっている。
こりゃ苦しいはずだわ……
『アダム、イヴ』
とりあえず起こしても無害な2匹を唯一自由になっている右手で押し返す。
そうすれば、割りと寝起きのいい2匹はベッドから降りてリビングに向かう。
そして残るは……………寝起き最悪の隣の男。
『あの、雲雀さん………』
「うるさいよ」
『いや、うるさいとかではなく………』
離して欲しいんですけどって言っても離してくれる様子はない。
それどころか更に腕に力をいれてきた。
私は抱き枕じゃないんだけど……と思いつつもまだまだ寝足りない私はうとうとして、結局彼の腕の中で寝てしまった。
* * * * * *
「結局君も寝るなんてね」
『雲雀さんが離してくれなかったんじゃないですか』
「その割には気持ち良さそうに寝てたけどね」
いいじゃん別にーとぼやく。
熟睡なんて暫く出来てなかったんだから、とは心の中に留めておく。
『今日は何処に出掛けるんですか?』
「ドライブだよ」
『え…どうやっていくんですか。私今高校生ですよ』
「何馬鹿なこと言ってるの。車なんだから君は助手席にのってるだけだよ。文句ある?」
『いえ、ありません……』
そんな事よりご飯食べるよと、言いながら既に座っている。
まぁ朝というよりもう昼だが。
昨夜から続くこの異様な空間では特に会話なんてなくて。
それでも、誰かと穏やかに食事ができるだけでもいいものだ。
朝食兼昼食の片付けをした後でソファに寝転がってのんびりしていれば、出掛けるよと声をかけられ慌てて準備を始める。
彼は既に着替えていて、スーツなんだ…と思いつつ何も言わない。
彼を待たせると後が怖いので身支度を素早く整える。
といっても、髪をとくだけの簡単なもの
彼は群れるのが大嫌いだから、人気の多いところには行かないだろうと思って服装はショートパンツにパーカーという何とも色気のない格好に落ち着いた。
そんな私に彼は気遣うことなく地下の駐車場に向かう。
そもそも、彼が車を運転するところなんて見たことがないし、イメージも湧かない。
車と雲雀さんを交互に見てボーッとしている私に、早く乗りなよと彼に促され慌てて乗り込む。
『目的地とかないんですか?』
「ないとドライブしちゃいけないのかい?」
『そんなことはないですけど、珍しいですね。雲雀さんがこんなことするなんて』
「……ちょっと君が心配になってね」
『大丈夫ですよ、私は』
「君の大丈夫は信用ならないけどね」
『あははっ……でも、本当に大丈夫ですよ。雲雀さんが来てくれたので』
「そう」
その後は特に会話なんて無くて、外の景色を眺めてるだけだったが、あることに気付いた。
『雲雀さん、もしかして……』
「何?」
『ここ周辺地域を確認するために来たんじゃ……』
「そうだよ。来た事ないところだからね」
『雲雀さんは並盛以外興味ないと思っていました』
「興味はないけど君がいるからね。君に何かあった時、何も知らないと困るだろう」
『私に何かあるとも思えませんけど…』
「無いとも言い切れないだろう。君が誰かを守りたいと思うように、君の事を守りたいと思う人がいることを忘れないでよ」
その言葉には返事が出来なかった。
雲雀さんや綱吉、ザンザスにはいつも助けられてる。
彼等の傍でなら意識なく眠ることができる。
まだ、ここにいてもいいんだと思うことができる。
それだけで、充分だ。
戦闘力だけなら誰にも負けないし、負けるつもりもない。
3人が私の心を支えてくれているなら、私は彼らを取り巻く全てを守る。
彼等が少しでも笑っていられるように、幸せを感じられるように。
このときの私は守りたいと思う人が増えるなんて思いもしなかった。
まして、彼と一緒にいるところをあの子達に見られたなんて………………
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