雲雀さんが私を連れて米花町を走り回ったのが昨日のこと。
今日は大人しく、学校に登校した筈なのだが……



「おっはよー真昼!!」

「おはよう、真昼」

『…おはよう。なんか園子、テンション高くない?』

「真昼、あんた放課後暇よね?ポアロに行くわよ!!」

『……はぁ?』


いつもの如く時間ギリギリに教室に滑り込んだ私に、園子がそんな事を言ってきた。


「だから、ポアロ!!ちょーっと話したいことがあるのよ。ねぇ蘭?」

「そうなのよ。ねぇ園子?」

『………蘭までニヤニヤしてて何か怖いんだけど』

「気のせいよ。放課後、忘れないでよ?」

『はーい』



何故朝っぱらからそんな捲し立てるように言ってきたのだろう。
別に昼休みでもいいじゃないかと思いながら席に着き、自然と寝る体制になる。
彼女達の判断が正しかったと気付いたのは、"起きて"と"帰るわよ"言葉だった。







* * * * * *



『ふぁあっ……ねむ……』

「あれだけ寝といてよく言うわよ」

『寝る子は育つのです』

「あと何処育てたいのよ」

『…………胸』

そう言えば何故か園子から叩かれた…………解せぬ。
そんなやり取りをしていれば、いつの間にかポアロの前だった。
顔がにやけそうになるのを必死で我慢していれば、園子は早々に扉を開けて店に入っていく。
もう少しこの感動に浸りたかったなと思っていれば、予想だにしない声が聞こえてきた。




「真昼お姉さんだ!!」

「ちゃんと連れてきてくれたんですね!!」

『………皆してどうした』

「この子達があんたを連れてこいって言ったのよ。面白い話があるからって」

『…………帰ってもいいかな』

「ダメに決まってるでしょ」

私の呟きにすかさず園子が反論する。
そして、何故かコナン君と哀ちゃんから疑惑のような視線が送られてくる。
これは、変にこそこそする方が危険かなと思い、渋々指定された席に座る。




「ではまず園子さん、昨日真昼さんは学校に来ていましたか?」

「いいえ?来ていなかったわ。メールしたのに」

『え、ごめん、見てなかった』

「何のための携帯よ…」

「まぁまぁ園子……でも、どうしてそんなこと聞くの?」

私の疑問は蘭が代わりに聞いてくれた
そもそも、なんでそんなこと聞くんだろうか。


「だって、真昼お姉さん昨日男の人と車に乗ってたもん!!」

『!?』

「ちょっと、真昼!!どういうことよ!!」

「じゃぁ昨日は学校サボってデートだったんですね!?」

『人違いじゃないの?』

「そんな事ありません!!信号で車は止まっていましたし、コナン君に確認してもらいましたから!!」

その言葉に思わずコナン君に目を向けてしまう。
そうか、その眼鏡使ったんだなコノヤロウ…………




「イケメンさんだったよねー!」

「ちょっと、なにそれ真昼!!あんた男には興味ないふりしてたくせに!!」

「恋人がいるなら他の人に興味なんてあるわけないじゃない?ねぇ真昼?」

『……じゃぁそれは蘭にも言えるってことなのね。愛しの工藤新一君しか興味はないって』

反撃と言わんばかりに、蘭に攻撃すればいつの間にか標的は蘭と新一君の話に移っていた。
上手い具合に話がそれて良かったと思い、紅茶を飲んでいれば納得してないような表情を浮かべる子が2人。
今のところ何かを聞いてくる様子はないが、その疑問が解消されない限りは疑われ続けるだろうね。
まぁ、素性が知られれば此方に飛び火しかねないから気を付けるが。



「で、結局昨日一緒にいた男は誰なのよ?」

「そうよ、それ聞いてなかった」

「やっぱり恋人さん?」


このまま忘れてくれればと思ったがそうはいかなかったようだ。


『……中学時代の先輩。今日日本を発つって言ってたから、その前にちょっと会ってただけ』

「怪しいわね…中学時代の先輩となんて会ったりするもん?」

『結構お世話になったからね。本当にそれだけよ』

「なぁんだ、美男美女でお似合いだと思ったのになー」

『…まぁ彼には愛しい愛しい恋人さんがいるからね』

「そうなの!?真昼はその人と会ったことあるの?」

『あるよ。そこそこ仲良いと思う』

「………略奪愛ね」

「園子……」


もう乾いた笑いしか出てこない。
なんでも恋とか愛とかに繋げたがる……園子は特に。

「じゃぁ、恋人さんはいるの?」

『いないよ。特に作ろうとも思ってないし』

もったいないよーやら、あんたを狙ってる男どもは血の涙を流すわねやら、言いたい放題だ。
恋人なんて作る気もないし、誰かを好きになるとも思えない。
やっぱり付き合うなら好きな人がいいと思う私は結構な乙女思考の持ち主のようだ。
そんな自分に鳥肌が立つが……





結局6時近くまで話していて、蘭の夕飯作らなきゃの一言で解散となった。






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