彼がお風呂に入っている間、綱吉に例の組織に接触したとだけ報告した。
何か言うことがあれば、また連絡してくるだろう。
そう思ってソファで寛いでいれば、彼がお風呂から出てきた。
『ゆっくり出来ました?』
「あぁ、気持ちよかったよ」
『何か飲みます?……といってもたいしたものは無いですけど…』
ソファから立ち上がり、キッチンに向かう。
お茶ぐらいはあったかな?と思いつつ冷蔵庫を開けるが、水しかなかった。
流石に水はないわ、と思い財布と鍵を手に取る。
『冷蔵庫空だったので買い物いってきます』
「…待った、俺も行く」
『湯冷めしたらいけないのでここにいてください。飲み物何がいいですか?』
「そんな柔な鍛え方はしていない。こんな時間に女の子が外を出歩くものじゃない」
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。
この世界に身をおけば、必然的に行動する時間帯は暗くなってから。
そんな事は百も承知のはず。
『私的には夜の方がありがたいんだけど……』
「………補導されるぞ」
『ネフライトまで馬鹿にする。これでも成人済みですー』
「あ、待て!」
皆して遠回しに幼いって言うんだから腹立つ。
これでもお酒買うのに年齢確認はされないんだからなと、声には出さずに反論する。
玄関を開けたところで腕を捕まれ、進めなくなったので振り返る。
『なにやってるんですか』
「お前が行くなら俺も行く」
『……素顔のまま歩き回る気ですか』
「帽子を被れば問題ない」
『帽子で顔を隠した男と見た目女の子が一緒に歩いてる方が職質される可能性高いよ』
職質に反応し、うっと言葉を詰まらせる
元公安の人間からすれば、それは避けたいのだろう。
それでも私を1人では行かせたくないのか、下を向いて唸っている。
『……じゃぁ、下にある自販機にするので手離してください』
「なら俺も行っても大丈夫だろ?」
『………分かりました』
長い押し問答の末、私の方が先に折れた。
私の事なんて心配しなくても問題ないと言うのに、女の子と言われたのは少し嬉しかったんだ。
柄じゃないと思い、そんな考えはすぐさま消し去る。
ちょっと待っててくれと言い、帽子を取りに部屋の中に戻っていく彼。
少し嬉しそうな背中に思わず笑みが溢れた。
エントランスを抜けて、マンションの外に出ると道路の向かい側に自販機が見える。
住宅街にぽつんとあるにもかかわらず、種類は豊富な方だろう。
………お酒はないが。
『ビールが良かったんじゃないですか?』
「炭酸入ってないのがよかったらこれでいいんだ」
『ならいいですけど……』
「ほら、部屋に戻るぞ?お前も早く風呂に入れ」
『うぃっす』
500mlのペットボトルを2本持って部屋に戻る。
玄関で持っていたペットボトルをとられて風呂場に押し込まれた。
ちゃんと温まって出てこいよって……ほんとに、兄みたいというか、世話好き?
きっとライとバーボンにもこんな感じだったんだろうな。
話を聞く限り、子供じみた争いが多かったようだし。
『なんか……楽しいかも』
誰かと談笑しながらご飯を食べるのも、ちょっとした言い争いをするのも。
そもそも、私は結構寂しがりなんだ。
でも、私が寂しがりって可笑しいでしょう?
柊真昼であったときも神流瑞希である今も、許されない罪を重ねてきている自覚はある。
そんな私が自分だけ満たされようなんて、虫が良すぎる。
右手で目元を覆えばチャプンとお湯が揺れる。
大丈夫だ、問題ない。
ざわつく心を落ち着かせ、風呂から出る。
真っ直ぐリビングに向かえば、テレビをつけてアダムにブラッシングをしているネフライトが目にはいる。
『……ネフライト?』
「あぁ、あがったのか。ちゃんと温まったか?」
『うん。喉カラカラになったけどね』
冷蔵庫の扉を開け、先程買ってきた飲み物を手に取り、リビングに戻る。
ネフライトの手で気持ち良さそうにしているアダムを横目にソファに座り、持ってきたペットボトルの蓋を開ける。
そのまま味わうことなく、一気に喉に流し込む。
1度で全部飲み干せるわけがなくて、半分ぐらいはまだ残っている。
冷蔵庫に戻すかこのままか。
なんとも下らないことを考えながらペットボトルを凝視していれば、視界が真っ白になり、頭をガシガシされる。
「髪はちゃんとドライヤーで乾かせよ」
『いつも乾かさないしドライヤーなんて置いてない』
「まじかよ」
『まじよ』
「綺麗な髪してるんだから、ちゃんと手入れしろよ」
めんどくさーといえば、頭をペチッと叩かれた。
別に乾かさなくてもと思っても、彼の好きなようにさせる。
大丈夫だといってもきっと解放してもらえないだろうし。
20分ほどして漸く乾いたようで、終わったぞとタオルを取られた。
『ありがとうございます。腕怠くないですか?』
「これくらい平気だ。それより、今日はもう休め」
『……まだ眠くないですけど』
「横になっているだけましだ。ほら、ベッド行け」
『待った、私がソファで寝る』
「女の子が体冷やしちゃダメだろう?」
『またそんなこと言う……ネフライトはお客様でしょ』
「その前に恩人だ」
『……やめよう。このやり取りは収集つかないやつだ』
不毛なやり取りになる前に止める。
でも、よく有りがちな一緒に寝ようなんて選択肢は端からない。
「お前はベッドで寝てくれ。頼むから」
『……分かりました。貴方って結構頑固ね』
「俺の新たな1面が知れてよかったな」
『あーはいはい』
そんな冗談をいっている彼に毛布をもってくる。
私は大して疲れていないが、長時間運転した彼には早く休んでほしくて、リビングには長居せずにおやすみと言って寝室に行く。
明日も学校は行けないな、と思いつつベッドに横になり目を閉じる。
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