あの後、長話をしすぎておじさまとコナン君が蘭を迎えに来た。
もう夕飯はポアロで済ませようと、おじさまとコナン君も隣の席に着く。
園子は迎えの車を呼んだようだけど、私は一緒に夕飯を食べることにした。


「あ、コナン君。今週末って何か予定ある?」

「ううん。なんにもないよ?どうしたの?」

「真昼の家に泊まりに行こうかと思ってるんだけど、一緒にどうかなって」

「真昼姉ちゃんの家?ボクもいいの?」

『勿論いいよ』

「じゃぁボクも真昼姉ちゃんの家にお泊まりに行く!!」



蘭やおじさまがいるからなのか、子供モードで私の方を向いて聞いてくる。
それでも私をみる目は、探りをいれるチャンスだと言っているようだ。

「なっ!!小僧、お前だけずりぃぞ!」

「コナン君は小さいんだからしょうがないでしょ!?お父さんこそ、なんでそんなこと言うのよ!!」

「あ、いや……」

「全く………娘の友達にちょっかい出さないでよね」

「そなんじゃねぇっての」

『まぁまぁ。じゃぁ今週末待ってるね』


既に食べ終わっていた私はそれだけをいうとお金を払って店を出る。
暗いのに1人で大丈夫かと言われたが問題ない。
むしろ私に手を出そうとする相手の方を心配すべきだろう。
まぁそんなことあるわけないかと思いながら暗がりの道を歩く。




『…あれ?』

まさか、とは思った。
平和な日常に身を置きすぎたかと少し危機感を覚える。
これは気配を隠せない一般人てとこだろうか。
立ち止まったり走ったりしたが、どうやら私をつけてきているようだ。
今はただの女子高生として過ごしているし、何より制服を着ているためあまり派手な事はできない。
別にマンションを特定されたとしても、入ってくることは絶対叶わないだろうが………気分的に嫌だ。

……よし、走るか。
そう思うと同時に走り出す。
不自然にならないようなスピードで走るが……



『あれ、結構身体能力高いの?引き離せてない気がする』

体力には自信があるし、いざとなれば姿をくらますことは可能だが……どうするか。
まっすぐマンションに向かうことはせずに、迂回して走りながら考える。
もう1度大通りまで出るか、と思っていれば向こうを歩いている人がいる。
ちょっと利用させてもらおう。


『あ、あの……!』

「……はい?」

『私の後ろ……誰か、いたりしますか?』

「特に見当たりませんが……どうしたんですか?」

『いえ、なんか誰かにつけられているような気がして……すみません、いきなり声をかけてしまって』

「それは大丈夫ですが……こんな時間に女性が1人で出歩くなんて感心しませんね」

『普段は全くないんですけどね……でも、ありがとうございました。引き止めてしまってごめんなさい。それでは失礼します』


人に声をかけたことで、私をつけていた人物は何処かに行ったようだ。
そんなことは気配で分かるが、声をかけてしまった手前、訳を言わないのはどうかと思ったので簡単に理由を告げる。
でも、なんか聞いたことあるようなないような声だな。
どこで聞いたんだっけ?と考えながら立ち去ろうとすれば、腕を捕まれた。


「もしよろしければ、自宅近くまで護衛しましょうか?」

『え!?あ…でもそこまでしてもらうわけには………』

「気にしないでください。僕はプライベートアイ……探偵ですから」

!?何故気付かなかったんだと、自分に呆れる。
この台詞で気付くなんて……で、どうする?ポアロにバイトでくるなら今のうちに顔見知りになっておくのも悪くはないか……





「あの、大丈夫ですか?」

『あ、はい。じゃぁあの……お願いしてもいいですか?』

「えぇ、勿論。僕は安室透といいます」

『私は柊真昼です』


どうしよう……実際会うと物凄く格好いい。
赤井秀一といい……この2人って規格外だよね、いろんな意味で。
まぁこっちにも規格外はたくさんいるけども…


「真昼さんはどうしてこんな時間に?」

『友人と夕飯を済ませたらこの時間になりまして……』

「そうだったんですか……でも、例え誰かに追いかけられているからといって、見ず知らずの、それも男性に声を掛けるなんて警戒心無さすぎですよ?」

『それもそうですよね……でも、いたのが安室さんでよかったです』

「……っ!!」

『どうかしました?』

「いえ………なんでもありません」


たとえ夜目の利く私でも彼の頬が少し赤くなっていることには気付かなかった。






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