図書室に向かう途中で数美先輩の同級生の世古って人に出会った。
体調が悪くてずっと保健室で横になっていたらしい。
図書室に着いても、中を見回ることはせずに入り口の近くで話し込む。。
「朝来たら本が出しっ放しになっていたんですか…」
「えぇ……それも前に保坂君が借りた事のある本ばかりね……しかも4日連続よ、4日連続!!どー考えても読み返す事ができなくなった保坂って人の恨みだと思わない!?」
「「「シーッ」」」
『園子、興奮しすぎ』
「でも、本が出てたら、図書委員の人が鍵掛けるときに気づくと思うけど……」
「それが、4冊とも本棚の陰とか机の下とかに置いてあったらしくて……」
「まぁ、幽霊騒ぎに便乗した誰かのイタズラだとは思うけど……そんなふざけた奴、今日こそ絶対に尻尾をつかんでボコにしてやるから…その時は毛利も手伝ってよ!」
「あ、はい……」
蘭は気が乗らないのか、驚いただけなのか、返事にキレがない。
図書室を後にすると同時に数美先輩と別れ、最後の問題の場所………呪いの階段と呼ばれる場所にきた。
なんとなく、噂の内容が分かるような気がするけど…
「た、確か、生徒の誰かが朝来た時に階段の下が水浸しになってたんだよね?」
「う、うん…その人が落ちたって、この階段だったらしいし……恐らくその保坂って人の呪いの涙が……」
「前の日に雨が降ったのに、窓がちゃんと閉まってなかったんじゃない?」
「ガキじゃあるまいし、窓ぐらい閉めてるわよ!!それに、それだけじゃないわ!この階段は数える度に数が違うって噂でね…」
あ、でた。
学校の七不思議でよくある階段の段数が違う話。
こればっかりは何処にいっても一緒なのね。
「じゃぁ、3人で数えてみれば?」
「え?」
「い、いいわよ、数えてやろーじゃないの!」
『私パス。上がって下りるの面倒』
そう言えば、あんた怖いだけでしょ!?と馬鹿にされたが気にしない。
2人は慎重に数えながら階段を上がっていく。
上りきったところで園子が恐る恐る蘭に訪ねる。
「ら、蘭はいくつ?」
「わたし12段……」
「え、こっちは13段よ!!」
「うそ!どーして!?」
『正解は12段。園子、上りきって両足を揃えたときに1回余分に数えたんでしょ。それに、こういうのって数え方なんて人それぞれでしょ』
「そうそう。怖い怖いって思ってるから……」
「わかったわよ!もう一度ちゃんと数えればいいんでしょ?」
『園子、幽霊の謎解く気あるの?』
「あんたが1番怖がってたんじゃない!!学校来ないなんて言ってたくせに!!」
『いや、予想と違ったからもうどうでもいいかなと』
階段の踊り場でぎゃーぎゃー騒いでいれば、すぐ横にある美術室からすごい剣幕で人が怒鳴ってきた。
まぁ騒いでた私らも悪かったとは思うけどイライラしすぎでしょ……
「す、すみません……」
「あら!雨止んだみたい……」
「じゃぁ、とりあえず今日は帰る?」
「そ、そうね……コナン君の話聞いてたら、そんな事ないってちょっと勇気出て来たし…それに、辺りももう薄暗くなって………」
言葉が途中で止まった蘭の視線の先が気になって外を見れば、中庭に机ポツンと置かれていた。
それを見た途端、走り出したコナン君と新出先生の後を追う。
そのまま中庭に出て紙に書かれている文字を確認すると…
「"我が恨み…未だ消えず……"」
「い、一体誰がこんなイタズラを!?」
「紙は濡れてないから、雨が止んでからここへ運んだんだろうけど……」
『でも、イタズラにしては度が過ぎてるわね。だって、犯人の足跡が無いんだもの』
校舎の中に戻り、美術室の前から動けないでいる園子と蘭に机の事を告げる
「や、やっぱり…やっぱりあの中庭の机とイスって、体育倉庫に置いてあったヤツだったのね!!」
「うん!2年前にこの高校で亡くなった保坂英彰って生徒の机とイスに間違いないよ!机の右下に同じサインが書いてあったから……」
「じゃぁ誰かがイタズラで中庭に…?」
「えぇ……机の上に紙が載せてあって、それが濡れていなかったので多分、雨が止んだ後、中庭に運んだんだと思うんですけど…そう考えると変なんですよ……中庭の土は雨でぬかるんでいたはずなのに、机に駆け寄ったときの僕とコナン君と柊さんの足跡しか残っていなくて…」
「ゆ、幽霊よ!!きっと保坂って生徒の霊が運んだのよォォォォ!!!」
「あ、ありうるわね……幽霊には足がないし……」
『幽霊が机なんて触れる訳ないでしょ…』
「ね、ねぇ、ちょっと……机とイス、なくなってるわよォ!!」
「ウソ!どーして!?」
もう恐怖で私の声さえ聞こえていない彼女達に溜め息が出る。
足跡が体育倉庫に向かってるのが見えるでしょうに……
『体育倉庫に戻したのよ。これ以上騒がれるの鬱陶しいし』
「机の上紙には妙なことが書いてありましたしね…」
「みょ、妙な事って?」
『"我が恨み…未だ消えず"って筆で書き殴ったような字で書かれてたのよ』
「じゃ、じゃぁ、紙が濡れてなかったのは……」
「雨の中、その霊が机に覆いかぶさってその恨み文を書いてたから……」
「うわあぁぁ!!!」
園子と蘭の妄想話が膨らむ中、横にある美術室から悲鳴が聞こえてきた。
こっちの方がよっぽど恐怖なんだけど………
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