園子のどうしても幽霊が原因だっていう話をしていれば、美術室の中からただならぬ悲鳴が聞こえ、新出先生が扉を開ける。


「ど、どうかしましたか?」

「や、やっぱりアイツ恨んでいたんだ……この幽霊騒ぎはやっぱりアイツの……保坂の呪いだったんだあああ!!!」

「もしかして、保坂っていう生徒さんの事知ってるの?」

「あ、あぁ……僕と同じ美術部員だったよ……2年前のあの時……アイツが階段から落ちるまではな……」

『あの時ってことは、その場にいたんですか?』


私がそう聞けば、なにかを思い出してるように口を噤んでしまった。
結局、問いかけに答えることなく私達を美術室から追い出した。



「ねぇ、中庭に机があった事、数美先輩にも言っとこうか?」

「う、うん…」


体育倉庫前で出会った先輩に、今起きたことを知らせようとする2人の横でコナン君は何かに気付いたらしい。


「ん?」

『どうかしたの?コナン君』

「これってロウかな?」

美術室のすぐ横にある消火器の下の部分床に爪を立てながらそう仮説をたてる。


『ねぇ園子、階段の下が水浸しになってたのって、ここ?』

「そうよ!床一面ドバーッと!この階段で亡くなった保坂って生徒の呪いの涙が……」

「それ、見つけたの誰?」

「朝早く来た美術部の誰かって聞いたけど……」

「ふーん…」

「ホラ行くよ、コナン君、真昼!」

『あ、ちょいと私別行動するわ。何かあったらスマホ鳴らして』

「え、ちょ、真昼!?」








* * * * * *



戸惑う彼女達の声を背中に聞きながら、目的の場所である保健室に直行した。
私の記憶が正しければ、確かあれが証拠の1つのはず。



『先輩、少しいいですか?』

「あぁ、なんだ?」

『私達と別れた後、中庭に誰か居たりしませんでした?』

「さぁなぁ?まぁ居たとしてもここからじゃ中庭なんてほとんど見えねーだろ?」

『まぁ、それもそうですね……あ、でも校長先生だったら出てたかもしれませんよね?いっつも真ん中で立ってますし……』

「いや、職員会議だったから多分出てないんじゃないか?」

『そうなんですか?……じゃぁ私はこれで』


そういって保健室を後にした私はそのまま中庭に向かう。
確か、傘の骨の先端が地面にあたった細い筋が何処かに残っていたはず。
ぬかるんだ地面を見ながら机があった場所に向かって進む。


『……腰辛いな』

歳には勝てないと思う。
20歳なんてまだまだ若いなんて言うが、実際は曲がり角。
後は衰えていくだけ。
なんて自虐的なことを考えていれば、お目当てのものを見付ける。
とりあえず、写真撮っておこうとスマホを取り出してカメラを起動する。
通常アプリでは消せないカシャッとした音を鳴らす。
さて、これからどうするか……と考えていれば、コナン君がスリッパなのも構わず中庭に飛び出してきた。
お互いにビックリして動きが止まるが、彼の探しているものが何かは分かっている。
私は視線をコナン君に向け、例のものがある足元を指差す。


「真昼……姉ちゃん、どうしてここにに?」

『雨上がりの中庭に足跡を残さず机を置いた仕掛けが何となく分かったからね。証拠を探しにきたんだ』

「………なるほどね」

『でも、流石だね』

「真昼さんも凄いよ」

『よくあるじゃない?雨降りの中、捨て猫に傘をあげる情景が。それで気付いたのよ』

「………もしかしてやったことあるの?」

『あるわけないでしょ。そんな猫見付けたら連れて帰るわ。まぁ先に貰ってくれる人を探すけど……………そんな事はどうでもよくて。どうするの?犯人あぶり出しちゃう?』

「………悪い顔してるよ」


お前に言われたくないわと密かに思う。
バレやしないかと、ビクビク怯える犯人をじわじわと追い詰め……言い訳を出来なくしたところで止めを刺す。
そんな光景を画面の外からずっと見ていたんだから。


「じゃぁ真昼さんは蘭達を美術室に連れていってくれるか?」

『……はいはーい。じゃぁ後でね』


あ、スリッパは履き替えなさいよとだけ忠告して、互いに背を向け歩きだした。





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