「…………」
『…………』
我らがボンゴレファミリーのボス、沢田綱吉の執務室に突入し、京子にお土産と言ってクッキーを渡すが、予想通り、良くならない彼の機嫌。
リボーンにしごかれていた頃の彼が恋しい。
こんなにも雰囲気で人を殺せるような人物だっただろうか。
『あの、綱吉…さま』
「ねぇ、瑞希?」
『はい、なんでしょう!』
名前を呼ばれるだけで恐怖。
背中に冷や汗が伝うのが分かる。
「デスクワークしなくてもいいから、行って欲しいところがあるんだ」
『え……なんか怖いんだけど。デスクワークしなくていいとか言うなんて』
「少し前に君がちょっかいを出していた組織について調べてほしくてね……場所は、日本。そして、帝丹高校に転入ね?手続きはしてあるから」
そういって詳細が書かれているであろう書類を渡される。
『……最初から拒否権なんて無さそう…てか私20歳よ?流石に無理でしょう、高校生は』
「拒否なんてしないでしょ?彼等のことも、2ヶ月以上も此方に戻って来なかった事もあるんだし。それに、君が20歳なんて知ってるよ。同級生なんだから」
『童顔って言いたいのかこの野郎………まぁでもやるよ。ちょっと興味もあるし…此方の組織も動かすけど、いいよね?』
「構わないよ。でも、何かあったら報告は入れてね。君の蝶でいいから。あぁ、あと任務を回す事もあるかもしれないからそこら辺はよろしくね」
『でも日本には雲雀さんが居るんじゃ……』
そうだ、あそこには並盛大好き人間が居るじゃないか。
日本という括りで好きかどうかは知らんが。
なのに何故わざわざ…
「雲雀さんは今別任務だよ。戻ってこないから他の皆が何やってるか分からないんだよ」
『すいません』
「まぁいいや。それに、君は知っているんでしょ?僕らの事を知っていたように」
『まぁ…ね。でも私が知っている世界ではなくなったけど』
そうだ、この世界に米花町があると気付いたとき驚きと喜びで心が震えた。
ならば、まだ間に合うならと、ある人物を助けてみたいと私の根底が強く願った。
綱吉達の時は流れに身を任せるように、原作を変えないようにする事が最善だと分かっていた。
裏の、闇の世界でも誰1人として欠けることのない、そんな世界だった。
でも、今から私が足を踏み入れようとしている世界は違う。
事件が関われば、本当に死んでしまう
主要人物だとしても、安全なんて保証はどこにもない。
別々の世界が融合してしまったのならなおのこと。
『…楽しみだ』
「それは、誰が?」
『その質問は意地悪だ』
「ごめんね。でも、君の居場所はここだから。いつでも帰ってきていいんだよ」
『………ありがとう。行ってくるよ』
幾つか前までの記憶がある事を知ってる綱吉は、欲しい言葉をくれる。
流石、全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空ってか?
いや、彼の人間性かな。
彼に心の中で感謝して、日本に、米花町に向け出発した。
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