『まさかいきなり現れるとは思ってなかった』

「すぐにでも接触するって言っただろ?」

『まぁそうだけどさ』

「そんな不機嫌になるなよ……お前の行きたいところに連れていってやるから」

『じゃぁ……ファミレスね』

「……そんなとこでいいのかよ」

『文句あるの?………家族で行くなら、ファミレスでしょ?』

「……っ!行くか、ファミレス」


これでもファミレス好きなんだ。
前の"瑞希"であった時、家族でよく行った。
食べたいものが1つに決められないとき、父さんが片方頼んでくれて半分こした事もあった。
妹とはパフェを一緒に食べたかな。
母さんはそんな私達を見て優しく笑ってた。
本当に仲の良い家族だった…とても、暖かい場所だった。

そんな仲の良い家族でいられたことが嬉しくて、感謝もしていた。
いつか両親みたいな夫婦になって、暖かい場所を作りたいと思ってた。

でも、多分叶わなかったような気がする……


『1番の望みって、ありふれたような幸せだったりするのかな………』

「……どうした」

『いや………それより何処に行くの?』

「近場にダニーズがあったからな。別のところが良いか?」

『そこがいい』

「じゃぁあと5分ぐらいで着くな」



店についたのが少し遅い時間だったため、人も殆どいない。
自由な席へと言われたので、迷わずドリンクバーの近くの席に座る。
ドリンクバーなんて頼まないのになと思い、苦笑する。


「で?あんな時間まで学校で何やっていたんだ?」

『あぁ………幽霊騒動の犯人暴こうとしてたのよ』

「七不思議か?」

『いや……事故で亡くなった生徒が居たんだけど、その生徒がイジメによって殺されたと思い込んだ幼馴染みが起こした騒ぎだったよ』

「へぇ〜でもお前よく行ったな?お化けとか嫌いだろう?」

『……うるさい』


可愛いとこあるんだな、なんてからかってきたのでか向かいに座る彼の足を蹴飛ばした。







* * * * * *



「ファミレスも侮れねぇな」

『うまかったー』

「美味しかった、だろ?」

『……兄というより口煩い姑みたいだね』

「なんとでも言え………あ、俺今日お前ん家泊まっていいか?」

『別にいいけど……なんかあったの?』

「いや?幽霊騒動で恐がる妹が安心できるようにと……」

『………追い返すわよ』

「冗談だよ。そろそろ出るか?」


これ以上長居する必要がなくなったので、早々に店を後にする。
駐車場に止めていた車まできて、ずっと思っていた疑問を口にする。



『ねぇ……なんでマセラティなの?』

「最初フェラーリに乗せられそうだったんだぞ」

『あぁ……それは正しい判断かも。どこぞのへなちょこみたいになるところだったね』

「……仮にもファミリーのボスだぞ」

『仮にもって言う方が失礼よ』


うるせーよ、早く乗れと言われたので置いていかれないように急いで乗り込む。
まぁそんな事はしないだろうが……

でもネフライト……旭兄さんがそう思うのも頷ける。
マフィアのボスにしては優しすぎるというか人が良い。
まぁそれは綱吉もだけど………自分の命を狙っていた相手に背中を預けるなんて、普通できやしない。


「あっちの組織とは比べ物にならねぇな」

『………それは誉められたと受け取って良いのか?』

「おう……まぁ元警察関係者からすれば良くないんだけどな」

『それはそうでしょうね』


本来の私たちの立場からすれば、出会うことはまずないのだ。
ましてや、一緒に行動するなんて………
すべてが終わったとき、もう彼等と会うことはないだろう。
寂しく思う気持ちが無いわけではない。
それでも歩む道が違うのだから、本来いるべきところへ帰るのが自然だ。

いつになるかも分からない先の事ばかり気にしていてもしょうがない。


今は、数年ぶりの高校生を楽しもうと心に決めた。






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