ホテルに戻ってから暫くして、2人が部屋に入ってくる気配を感じたため、目を開けて起き上がる。


「あ、真昼……起きてたのね。大丈夫?」

『結構寝たからね、大丈夫』

「よかった………寝起きのところ悪いんだけど、夕飯食べに行こうかと思ってるんだよね……」

「寝起きで食べられる?」

『……たべる。準備する』


たいして食欲もないが、行かないとまた心配かけるだろう。
そう思って、行くと返事をした。
まぁ準備といってもたいしてすることもないので、10分ほどで身なりを整え3人で部屋を出る。


「ここはバイキング形式で種類も豊富だから、期待していいわよ?」

「楽しみね!」


バイキングであれば食べた量は正確に分からないため、ラッキーだ。
デザートも、食べられるだけ好きに食べられる。
心を踊らせていれば、エレベーターが1階につき扉が開く。
外に出てみれば、何やら騒がしい。


『……何かあったのかな』

「あ、警察……?」



「警部さん、あの子達です!」

「矢沼さん!?それに嘉納さんに尾藤さんまで……何かあったんですか?」

「それが、見山が部屋で誰かに殴られて………死んでたんだ」

「えぇ!?」

「そんな……どうして……」


「きっとあの子よ!あの子が彼を殺したのよ!!」



そう言った彼女が指差す先には……


『え、私……?』

「おい待てよ……あの子は今日俺等と知り合ったんだぜ?そんな子が………」

「口論になったのよ!!あの子が彼のことを気に入って……!!」

「真昼がそんなことするわけないじゃない!」

「そうよ!それに真昼はブラコンなんだから!!」

『いや待て園子………誰がブラコンなんだよ』


女の嫉妬はめんどいなと聞き流していれば、園子からとんでもない言葉が飛び出てきて思わず口を挟んでしまった。


「貴女は死亡推定時刻、どちらにいらっしゃいましたか?」

『死亡推定時刻がいつかは知りませんが……今の今までホテルの部屋で寝ていました。1人なので、アリバイなんて無いでしょうね』

「そうですか……とりあえず、被害者の友人3人と、貴女は署までご同行願います」

「ちょっとまって下さい!真昼がそんなこと………」

『いいよ、蘭』

「いいって、あんた行くつもりなんじゃ……」

『やってないのにビクビクする必要ないし。じゃぁまた後でね?』



そういって手を振ってパトカーに乗り込む。
うん、初めて乗ったかもしれない。
当たり前だけど………








* * * * * *



「……蘭」

「分かってる」

真昼が連れていかれ、残された私達が出来ることと言えば……もうあれしか残っていない。
携帯を取り出して発信履歴の1番上にある番号を迷わず呼び出す。



「はい、もしもし?」

「あ、新一?……お願い助けて!!」

「え?」

「人が殺されて……真昼が……容疑者の1人として連れていかれちゃったの……」

「なっ!?って、真昼って……誰?」

「最近転校してきたクラスメイトよ!!えっと……殺されたのは同じホテルに泊まっていた見山って男の人で……その人の彼女が殺したのは真昼だって……」

「あー……コナンがそんなこと言ってたな。んな言いがかり……アリバイあるんなら関係ねぇだろ?」

「それが……彼女寝不足って言って1人でホテルに戻っちゃったのよ……それで、夕飯時になって彼女を起こしてレストランに向かう途中で事件に遭遇して………」


アリバイはねぇってことか………と落胆した新一の声が電話口から聞こえる。
お互いに黙ってしまい、沈黙が訪れる。
その時、私の携帯を掴んで園子が電話口で叫ぶ。


「そうよ!男の人が殺されてたホテルの部屋の窓ガラスに変な文字が書いてあったのよ!!きっと犯人を示す暗号みたいなのが!!」

「あ、暗号か!?」

「ちょっと!!真昼連れてかれちゃったのに何喜んでるのよ!?」

「あ、悪い……それで?その文字っていうのは……………」




私の知らないところで、私のために彼らが頑張っていたことなんて、想像もできなかった。







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