『ですから、今日初めて彼等と会ったんです。それに、声をかけられたのは私じゃないですし』
「でもねぇ……被害者の彼女がそういってますから。男女の関係の縺れって……1番突発的に多いもんなんですよ」
『………はぁ。私、あくまで参考人なんですよね?確かな証拠もないのに、犯人扱いなんてやめて貰えませんか』
何故だろう、私の扱い酷くないか?
容疑者並の取り調べ受けてる気分なんだけど……そんなん受けたことないからよく知らないけどさ。
まぁこのまま犯人にされそうになったら………
私の持てる権力全て使って、社会的に潰してやる。
何気に恐ろしいことを決意したところで、状況が変わった。
「警部、ちょっと……」
「そうか……たった今、被害者が残したダイイングメッセージとその意味が分かったそうです」
『へぇ……で、その犯人とは?』
「犯人については……証拠を持って来ている貴方の友人が……」
よくあるこそこそ話をした刑事達がそういってきた。
園子達が、証拠をもって来ていると。
あぁ、きっとこれは心配かけたんだろうな……
そう思ったから早足に、取調室から出る。
すると廊下の先に園子達と、亡くなった男性の友人達がいた。
「真昼!!大丈夫だった!?」
『うん。それにしても、よくダイイングメッセージとその意味が分かったわね…』
「勿論、蘭の旦那に聞いたのよ」
「旦那じゃないって!!」
『漫才はいいから、犯人は誰か刑事達に教えてあげたら?そこでやきもきしてるよ』
やっぱり彼に聞いたのかと、納得した。
そして、今日何回目かも分からないやり取りを此処にきてまでも聞かされた。
とりあえず、恥ずかしいやり取りはおいといて、話を進めるように促せば、自信満々に園子が語り出す。
「えぇ、見山さんが残したダイイングメッセージ……ちょっと見えずらいけど、確かに残っているでしょう?」
「"teiu"の前に、句読点のようなものがついているでしょう?それに、これを書いた見山さんが、倒れていて部屋の中から書いたものだとしたら……」
「そうか!!ではこの文字を縦に起こし、裏返して読むと……」
「"かのう"……」
「そう……見山さんの大学の友人の嘉納さん、あなたよ」
園子は、私のすぐ後ろにいた嘉納さんを指差した。
少し俯いていて表情は伺えないが、諦めて自供するのかと思ったが私の予想の斜め上をついてきた。
『う"っ……』
「あぁ、そうさ。俺が殺ったんだよ!!……じゃぁ、俺らから離れてもらおうか……この女を傷付けたくなければなぁ」
「真昼っ!!」
「動くなって言っただろ!?」
まさか、人質にされるとは思っても見なかった。
まぁ別に、ナイフ1本しかもってない一般人なんかすぐに振りほどけるんだけど………
「そんなことをしても逃げ切れないぞ!!」
「あぁ、だが……この女とイイ思いだけはさせて貰おうか……」
『……っ!?ちょ、何処触ってるのよ……!』
「黙ってろよ。んな体して、色んな男引っ掻けてんだろ?」
どんな体だよ……と思い、呆れる。
というか、いつまで人の体撫でまわしてんだよ。
我慢ならなくなったので、そろそろ捕まって貰おう。
少しずつ後退りする男は、自分の足元が見えていない。
2,3歩後ろに下がれば数段の階段がある。
ちょっと無茶かもしれないけど………
『……お前はもう終わりだよ』
「なに!?………うぉっ」
『うぐっ……』
「ちょっ真昼!?」
背後にある段差に差し掛かったとき思い切り後ろに下がる。
そんなこと予想していなかったのか、受け身もとれず犯人は後ろに倒れる。
そのまま私の事を離して1人で落ちてくれれば問題なかったんだけど……あろうことか私にしがみつくように後ろに倒れていった。
『いった……』
「っ犯人確保!!」
「真昼!!……救急車!よばなきゃ!」
「あぁ、すぐに手配を……!」
『あの、大丈夫ですから……』
「大丈夫じゃないでしょう!?首から…そんなに血を流して!」
「そうよ、あんな無茶して!!こっちの心臓が止まるところだったじゃない!」
いや私もこんな怪我するつもりはなかったのだ。
だが、犯人が持っていたナイフは丁度私の首もとにあり、後ろに倒れた反動で横一線に切れてしまったのだ。
普段であればこんな傷、すぐに治せるのだが………流石にそれは不味い。
暫くこの傷と付き合うことになるのかと思うと憂鬱になる。
『まぁ、私は大丈夫だから……それより、工藤君に知らせてあげたら?犯人は無事捕まったって』
「あ、うん……」
「それより、あんただいぶ思いきった事をしたわね……」
『あのまま逃げられそうだなと思ったし、あれ以上体を撫で回されるのは我慢ならなかったからね』
「……大丈夫なの?」
『え?あぁ、特に気にしてないわ。別に減るもんじゃないし』
「真昼、あんたって………」
『男前でしょ?』
んなアホなこと言ってんなとつっこまれた。
怪我してなかったらきっと頭を叩かれてただろうな………
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