翌日、ホテルを出る前にコナン君に電話を掛けた。
心配してくれていたようなのでお礼を兼ねて、だ。
『ありがとね。犯人つきとめてくれて』
「それは構わねぇけど……お前人質にされて首怪我したって……」
『あぁ、たいした傷じゃない。だからそんな気にしないで?それに、蘭や園子が人質にされなくてよかったよ』
「………それは真昼さんだって」
『ふふっ………ありがとう、じゃぁまたね』
まだ何か言っていたようだが構わず電話を切る。
まぁ正直いうと、あまり首を動かせないのが現状だ。
けど、そんなことを彼が知る必要はない。
「真昼!!そろそろチェックアウトの時間だよ。準備できてる?」
『出来てるよ。すぐいく』
「あれ?電話してたんじゃないの?」
『もう終わったよ。それより、電車の時間もあるんでしょ?早く行こ』
「そうね」
忘れ物がないか部屋見渡してから、1階にあるフロントに向かった。
* * * * * *
「はぁ……」
「どうしたのよ、園子?」
「だぁって!!結局事件起きちゃうし、イケメンゲットし損ねたしぃ」
『園子は何処にいてもぶれないねぇ』
「もう……園子ったら………」
駅のホームまで来て園子は、目的であるイケメンがゲットできず落胆している。
まぁいつものことだと私でも思うのだから、蘭はもう呆れてなにも言えないはずだ。
園子の嘆きを眺めていれば、マナーモードにし忘れた私のスマホが着信を知らせてくる。
誰だろうとディスプレイを確認すれば、安室透の名前が表示されていて、蘭と園子から離れて電話をとる。
『もしもし、安室さん?』
「えぇ、こんにちは。今日の事なんですが、何時ごろ着きそうです?」
『16時頃、米花駅に到着する予定です』
「分かりました、楽しみにしてますね。では、また後程」
『はい、じゃぁまた』
電話を切り、マナーモードにしたことを確認してから園子と蘭のところに戻る。
「あ、もうどこ行ってたのよ」
『電話がかかってきたの。で、何の話をしてたの?』
「今日この後何処かで夕飯でもどうかなぁって」
「うちの車迎えに寄越すから、何処か行きたいねって」
『あー……私先約があって……』
「え、そうなの?……あぁでも確か出発前なんか言ってたわね」
『またそのうち行こう?…………ほら、電車も来たよ』
帰りは行きと違って時間に余裕ができて、良かったと思う。
流石にこの首で走るのは避けたかったんだ。
傷に響くっていうのもあるけど、首に巻いてある包帯とストールが暑くて汗をかきたくないってのが1番の理由だ。
はじめは、包帯すら巻かずに帰ろうとしたんだが……流石にこの傷口は見てられないからと、無理矢理巻かれた。
安室さんと出掛けるというのに、この首はちょっと……と思ったが仕方ない。
時間に余裕があったためか、座ることができた蘭と園子は私に先程の電話は誰からだったのかと問い詰めてきた。
「で?誰とどんな予定があるの?」
『えーっと……最近知り合った人とご飯かな?』
「真昼ってそんな人とご飯行くような人だっけ」
「確かに、イメージないかも」
『私の事なんだと思ってんのよ……って言いたいけど、確かに』
「もしかして男?」
『………男だけども』
「うっそ!余計信じらんない!!」
「しーっ!園子、声大きい」
興奮して声が大きくなる園子だが、ここは電車内。
一瞬車内の視線を集めたよ……
立ち上がりそうな勢いだったが、何とか蘭が押さえてくれたようだ。
「どんなイケメン!?どうして教えてくれなかったの!!」
「園子、落ち着いて……でも、私も気になる。真昼が誘いに乗るくらいだもん」
『待って、なんで私が誘いに乗ったら相手がイケメンになるの』
「だぁって、あのお兄さんよ?絶対目肥えてるでしょ」
「そうよね……あのお兄さんを見せられたら真昼の隣が似合う人ってそうそういないわよね」
「まさに、高嶺の花って感じ!こりゃクラスの男子どもじゃ手が出せないのも頷けるわ」
『何その高嶺の花って……まぁでも確かに相手は格好いいけども』
「ほらぁ!!真昼がそういうなら相当よ!」
安室さんは確かに格好いい。
外から見ていた時からずっと思っていたことだ。
そんな人が誘ってくれたってだけで舞い上がってしまう。
まぁ彼が私なんかを誘うなんて、きっと何かあるんだろうけどね。
それでも嬉しいし、楽しみなのは変わらない。
であれば、今は何も知らない風を装って流れに身を任せるのも悪くないだろう。
私よりテンションが高くなった2人を横目に、駅まで迎えに来てくれる彼を思った。
安室透としてくるなら恐らく、脇道に停めたRX-7に寄りかかって待っているだろうな。
なんとも絵になりそうな光景が見られることを期待しながら、早く着けと思わずにはいられなかった。
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