『おぉ………』
「気に入っていただけました?」
『はい!』
ドライブの後、案内されたお店は南国を思わせるレストラン。
それに、案内されたのはReserved seatとプレートがかけられた個室。
現金あったかな………
『こんなお店があるなんて知らなかったです』
「偶々見つけたんですよ。内緒話をするには……もってこいの場所でしょう?」
『………』
バーボンが垣間見えた気がした。
ここまであからさまに態度を変えてきたということは、此方のことについて何か情報を得たのだろう。
話の前に座りましょうと言われるがまま、奥の席に腰を下ろす。
『私と、どんな内緒話をしたいのかお聞きしても?』
「貴女たち兄妹について調べさせてもらいました。ですが、貴女に兄がいるという情報は出てこなかった。それどころか………」
『………他になにか?』
「貴女の出生から中学までの情報が出てきませんでした」
『私が生まれたのがこの国でなければ、出生なんて分からないですよね?』
「正確には正しい情報が出てこなかった。後付けされたような情報なら出てきましたよ」
それはそうだ。
あの情報はリボーンが作ったもで、後付けも何もそれらの情報はすべて偽り。
それにしても、目の前に座る彼の情報収集能力は凄まじい。
あれを偽りだと見抜くことができるなんて、私の組織に何人いるだろうか。
欲しい………純粋にそう思う。
『私の情報がどんなものか知りませんが、原因があるとすれば……兄でしょうね』
「言ったでしょう?貴女に兄は…」
『血の繋がりが、情報がそんなに大事ですか』
まぁ情報が大事なのは重々承知してるんですけどね?
柊旭と血の繋がりがないなんて、当然のこと。
彼の存在を隠すために取った手段の1つにすぎない。
本当の兄と思ってくれていいと言われたときは嬉しかった。
こんな得体の知れない奴を妹なんて………
「失礼な言い方でしたね………すみません」
『いえ……貴方のような方なら、疑って当然ですよ』
「……何のことです?」
『深く知ろうとすればするほど、相手にも自分の事をさらけ出しているものなんですよ。そうですね………例えば、安室さんの本名と職業……とか知ってますよ』
「っどこでそれを!!」
彼がこれくらいの挑発にのってくるとは思わなかった。
だが、今は感情を剥き出しにしてこちらを睨み付けている。
『意外と感情の起伏が激しいんですね?』
「っ失礼しました。ですが、その情報……何処で手に入れたのか教えていただいても?」
『無理に安室透を作らなくてもいいですよ。紳士的なのはあまり好きじゃないですし。それに、先程の貴方の方が凄く魅力的です』
「そんな事言われたの初めてですよ………」
『紳士的な人が嫌いなんて、普通は思わないでしょうからね』
「全く……貴女の前だと安室透は形無しだな…」
『では此処にいるのは、降谷さん……ですね?』
「久々にその名前で呼ばれたよ……」
そういった彼の表情がどこか切なくて、今にも消えてしまいそう。
彼がこんな状態になるなんて思っても見なかったけど、本当は凄く脆い人なのかもしれない。
「真昼さん………また2人で会ってくれますか?」
『勿論です。私も降谷さんともっと話してみたいです』
「奇遇ですね」
俺もそう思ってますよと続けた彼の表情は自信に溢れ、不敵な笑みを浮かべていた。
初めて見るその表情は、きっと降谷零としての顔なんだ。
トクン……
その胸の高鳴りには、気付かないふりをした。
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