「折角来たんだ。食べたいもの頼んでくれ」


お前は何者だ、なんて物騒な話はやめだと言わんばかりにメニューを私の方に向けてくる。
そんないきなり切り替えられるか……と思ったが、私は欲に忠実だった。


『……南国風だなって思ってましたけど、メニューは居酒屋みたいですね』

「店の内装とメニューのミスマッチが面白いでしょう?というか…………真昼さん高校生ですよね?居酒屋のメニューなんて知ってるんですか?」

『………本当に高校生だと思ってます?』

「女性に、年齢を訊ねるのは失礼だろう?」

『色々調べといてよく言いますね…………』


目の前でいい人そうな笑みを浮かべる彼は、きっと私の本当の年齢も把握済みだろう。
でも、20歳にもなって制服着てるなんてイタすぎるし………これってバレたら物凄く恥ずかしい……………



『あの、黙っていてくれると嬉しいんですが………』

「いいですよ?貴女が約束を守ってくれるなら」

『……誰にも言いませんよ』

「お願いしますね?……さぁ、料理頼みましょう」

『お肉食べたいです』

「ははっ……真昼さんのそういうとこ、いいと思いますよ」


飾っていなくてと続けられたが貶された感じしかしない。
少し鋭い視線を向けるも、そんなもの痛くも痒くもないという風に店員に注文する彼。
そんな彼の口から出る料理名は肉中心だったため、まぁいっかと思ってしまった。









* * * * * *



「真昼さん……貴女よくこの量食べましたね」

『お金は持っているので大丈夫です』

「そうじゃないんだが……」

『………降谷さんも結構食べますね。そんなイメージ無いですよ?』

「安室透はあまり食べるイメージじゃないが、俺は結構食べる」

『やっぱり食べてくれる人との食事が一番楽しいですね』

「あぁ、遠慮して食べてくれないのは此方も気を使ってしまうからな」


確かにと思いながら手元にあるケーキをつつく。
ふと、目の前に座る彼を見れば本当に格好いいなと思う。
そんな人はボンゴレにも結構いるから見慣れたと思っていたけど…………なんだろう?
胸の奥がざわつくようなくすぐったいような、この言いようもない感じは。


そんな答えの出そうにない疑問を抱えていれば、彼が前髪を少しはらう。
その奥に見えたのは、伏せ目がちになっている彼の青い瞳。
男性に使うのは少し違うかもしれないが綺麗だな、と思った。
ずっと見ていたいような気もするし、それは流石に恥ずかしい気もする。
そんなおかしな思考に囚われていた私を引き戻したのは、彼の声だった。




「そんなに見られたら穴が開きそうです」

『…………そんなに見てないです』

「あそこまで熱い視線を受けたのは初めてだったんだけどな」

『いや、絶対嘘でしょう。女性受けする容姿をしてるくせに………』

「では、貴女にもこの容姿は有効と受け取っても?」

『一般論です。そこ私の意見は入っていません』


それは残念と肩をすくめるが、目も口許も笑っている。
なんか、悔しい。
もう気にしないとケーキ視線を落とせば、何度もフォークで刺されたあとが……………
唖然としていれば、今度は笑いを耐えるように、貴女、僕の方を見ながら何度も刺してましたよって言ってきた。
恥ずかしさを誤魔化すように、無残な姿になったケーキを口に運んだ。





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