私が無残な姿になったケーキを食べ終え、店を後にする。
少し散歩でもしませんかと言う彼に賛成し、近くにあった公園内を歩く。
「夜風が気持ちいですね」
『……そうですね』
「ははっ………やっぱり真昼さんは上辺だけの会話はどうも苦手なようだ」
『………車での会話、わざとだったんですか』
夕方、車で彼と交わした言葉を思い出す。
わざとじゃないのかと思ってはいたが………本当にわざとだったとは。
「えぇ……会話の中で何か口走ってくれないかとね。ですが、分かったのは貴女が内容のない会話を苦手としているってことですね」
『……私だって内容のない会話ぐらいしますよ』
「でも、今日は雨ですね?なんて言われたら一瞬でも返答に困るでしょう」
『まぁ………』
そんな膨らみそうにない言葉をかけられても返すことなんてそうですね、ぐらいだろう。
あとは週末あそこに行ったんだよーってやつ。
へーとしか答えようがないんだよね。
私が行きたいところだったらいいなーぐらいは言うだろうけど。
「僕も、プライベートではそんな内容のない会話はそんなにしたい方ではないから丁度いいよ」
『それは分かりませんよ?降谷さんに会える喜びで変なこと口走っちゃうかもしれません』
「それは是非見てみたいですね。次会うときを楽しみにしています」
『言うか言わないかは別として、会えるのは私も楽しみです』
ちらっとお互いに視線をあわせて笑いあう。
随分時間がたってしまったようで、殆ど人の姿を見かけない。
もう遅いですからね、送りますよと言う彼に素直に甘えることにした。
帰りの車の中は特に交わす言葉もなく、静かな空間が広がっていたが、気まずいなんてことは全くなくて心地よかった。
* * * * * *
「真昼さん、起きてください」
彼の声と揺すられる肩に、自分が寝ていたことに気付いた。
目を開けて彼の方を見る。
『…………………もしかしなくても、寝てました?』
「えぇ、ぐっすりと」
その言葉に頭が真っ白になった。
うそだ、そんなこと、ありえない。
なにも言えずに、ただ降谷さんを見ることしか出来なかった。
「どうしましたか?」
『っなんでもないです。送ってくれて有り難うございました』
「いえ、おやすみなさい」
少し、恥ずかしくて逃げるように車を降りた。
エントランスに入り、入り口の扉のロックを解除する。
一瞬だけ外の方を向けば、何故か車から降りた彼が手を降っている。
私は頭を下げ、逃げるように部屋に向かった。
やきもきしながらエレベーターが30階に着くのを待つ。
下を向いていた私の耳に、シャラン…というなんとも夢の国に入国するような到着音が聞こえた。
扉が開くと、一目散に自分の部屋に向かい玄関に飛び込んだ。
『…………っはぁ』
「ガゥ…!」
『アダム……ただいま』
「お帰り、真昼」
『あれ、きてたの……って、私がこの子達世話を頼んだんだっけ……』
「忘れてたのか…………それより、お前顔赤いけどどうかしたのか?」
『な、なんでもない!………アダムおいで』
そのまま部屋に逃げ込んだ。
もう今日は何も考えたくないと、アダムにしがみついて目を閉じた。
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