今日は雨か……
月白鬼にある自室で外を見てそう思う。
執務机について書類を眺めていたが、集中が途切れてしまい、やる気がなくなった。
座り心地のいい椅子から立ち上がり、隣の部屋に移動する。
そこにはベッドがあり、そのまま倒れ込む。


『ねむい………』

誰に言うわけでもないが、そう呟く。
眠れてないのも、眠気が無くならないのも理由は分かってるのだけど。
何処でも熟睡できない自分に嫌気がさしていれば、隣の部屋にアクアマリンがきた気配がする。
彼等が何の用も無しに此処に来ることはない。
仕方ないなと思いながら体を起こし、部屋を移動する。



『何か用か?』

「はい。例の組織の幹部……ジンがこの町にいるようです。彼だけではなく、コードネームを持つ者数名も一緒に。目的は暗殺」

『へぇ……で?標的は』

「今度初めて衆議院選に出馬する土門康輝です」

『……もしかして、やつらの幹部の中にキールのコードネームを持つ奴、いた?』

「はい。アナウンサーの水無怜奈……彼女はCIAからの潜入捜査官で本名は本堂瑛海」

『そうか………とりあえず、標的と江戸川コナン、毛利小五郎の3人をマークしておいてくれ』


そう指示しながら過去に思いを馳せる
この事件でキールがFBIの手に落ちるはず。
それに、コナン君も赤井秀一には接触はしていないはず。
となれば、今やることは1つ………





* * * * * *



『この辺のはずなんだけど……』


あれからすぐにコナン君の居場所を探らせると、既に阿笠博士と合流しているようだった。
そういえば私、まだ博士と会ったことないんだよな。
周りを見渡しつつ歩いていれば………見つけた。

コナン君と、一緒に話すジョデ・スターリングの姿も。
車に乗り込まれるのも時間の問題だろうと早足で近付き、声を掛けた。



『コナン君?こんなところで何してるの?』

「………真昼さん!?」

「あら、貴女は……」

『えと、はじめまして、ですよね?』


とりあえず、何も知らない風を装う。
彼女と初めて対峙した時は私顔見せてなかったし。
切羽詰まっているこの状況で呑気な話をしていれば、コナン君がキールの居場所を確認していた。
……………が、どうやらこっちに向かっているらしい。


「…っとりあえず2人とも乗って!」


そういわれるのを待ってましたとすぐさま傘を畳んで車に乗り込む。
するとジョディさんだけが驚きを隠せていない。
きっと博士と哀ちゃんはコナン君を通じてある程度知っているからさほど驚かなかったんだろう。
さて、これからどうするか………


助手席に座っていれば、後ろから彼女はいいのかという会話が聞こえてきた。
まぁここは聞こえないフリをしておこう
そう黙りを決め込んでいれば、コナン君が前に来たそうだったので、抱えて膝の上に乗せる。
これに他の3人は驚いているが、コナン君自身はさほど気にしていない。
コナン君かわいい……なんて思ったが、中身は高校生だ。
哀ちゃんならこのちぐはぐ感を分かってくれるかと思ったが、今はそんなこと言える状況でもない。

その時、現実に引き戻すように、私のスマホ着信音が鳴る。


『もしもし?』

「瑞希様、キール……ではなく、水無怜奈がインタビューする場所は杯戸公園です」

『そう。ありがと』


電話を切ってもコナン君はまだ場所がわかっていないようで、頭を抱えている。



「一体どこなんだエディPって……」

『……杯戸公園じゃない?』

「っえ?なんで………」

『どうしてエディPが杯戸公園になるかは分からないけど、水無怜奈がインタビューする場所は杯戸公園だから』

「待って、貴女……どうして彼女のことを知っているの」

『それよりコナン君、先に目的地に向かわないと間に合わないよ』


ジョディさんの言葉を流すように、コナン君にもっともらしいことを告げる。
そうだなと言わんばかりに博士を車に呼び戻し、目的地を告げ、ビートルは出発した。






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