「お、開いたぞ」

『ご苦労さま。じゃぁ後の事はよろしくね?』

「へいへい。お前こそへますんなよ?」

『あら、誰に言ってるのかしら?』


毛利探偵事務所の扉の前でそんなやり取りをしながら、私は持っていた狐の面をつける。
それつけるなら変装しなくてよかったんじゃないのか?なんていうが、普段素顔をさらしているのだ。
その顔が奴らにばれるとコナン君達に被害がでないとも限らない。


「それもそうだな。じゃぁ俺も自分の仕事をしますか」


そういって彼は事務所の階段を降りていった。
私はイヤホンを取り出しながら扉を開け、"探"の文字がプリントされた窓を開けて座る。

ブロンドの髪が風に靡くのが少しだけ煩わしい。
イヤホンを耳に入れているが、その先は何も繋がっていない。
向かいのビルには私の蝶をおいてある。
奴らが来たことも、盗聴器に話しかけてもすぐにわかる。


そのまま待っていれば来たようだ………奴らが。



「ねぇジン……毛利小五郎って男だろう?彼処にいるのはどうみても女じゃないかい?」

「もしかしたら助手か何かじゃないんですかい?イヤホンを耳にいれてやがる……」

「フン……毛利小五郎の助手に託つけてアイツが仕掛けたようだな。ならば望み通りこっちの声を聞かせてやろう……聞こえるか?女……動くなよお前の背中は完全に取った……その体に風穴を空ける前に聞きたいことがある……」



私が毛利探偵の助手だって?笑わせる……
その推測が間違いだってことをすぐに分からせてやろう。


「お前とシェリーの関係だ……お前が仕掛けた発信器と盗聴器……前にあの女に仕掛けられた物とよく似ている…偶然だとは言わせねえぜ…………10秒くれてやる…答える気になったらそのイヤホンから手を離して上に上げろ…」


私は見えないことをいいことにニヤリと笑う。
そのまま立ち上がり顔だけ振り替える
私のつけているお面に奴らは動揺している……楽しい。
さぁ、まだまだ私に翻弄されてもらおうか。



私はつけていたお面はずし、正面から顔を晒す。


「……ベルモット!?」

「そんなわけないでしょう?私はここにいるんだから」

「生け簀かないねぇ…このまま撃っちまいそうだよ……」


流石に撃たれたくはなくて、私は持っていたお面を長髪の男……ジンに向かって投げる。
それを易々と掴んだ彼は、内側に書かれた文字に気付いたようだ。


「フン………後ろに気を付けろだと……?笑わせる」

「ジン…!どうすんだい!?」

「まぁいい……奴は迂闊にも指紋を残しているようだ……少々時間はかかるかも知れねぇがあの女が何者か分かるだろうよ……」


それはコナン君というか工藤新一のものだけど……と思っていれば、彼の指先ほどの盗聴器は背後からの狙撃で弾かれた


「後ろ…8時の方向……」

「あのビルだよ!」

「バ、バカな、700ヤードは離れて………」

「貸せ!!…………赤井……秀一!?」


やはり現れたか、組織のボスが恐れる……シルバーブレット。
奴らは分が悪いと早々に退散していった。
私は……ベルモットに扮した顔を剥がして髪を纏め事務所を後にする。
すると外には……




「貴方ね!自分が何をしたのか分かってるの!?私たちの車を妨害するなんて……!毛利小五郎が撃たれてたかも知れないのよ」

「FBIは日本で勝手に捜査しているんだろう?好き勝手やっているのはお互い様だ」

「2人とも落ち着いて…」



言い合いをしているFBIと柊旭、それをおさめようとするコナン君。
全く、どっちが大人か分かりゃしない。


『兄さん、なにやってるの?近所迷惑よ』

「真昼さん!?どうしてここに……」

『おじ様ならここには来ていないわ』

「だって、家を出たって電話が……真昼さん、もしかして奴らと顔を合わせたんじゃ……」

『そんな事するわけないでしょ?そうなれば……周りに被害が出かねないし』


兄さんはそういう私にいけしゃあしゃあと……と言いたげな顔をしている。
私はFBIにはあまり関わりたくないと言いたげに、ストラダーレに乗り込めば、兄さんも運転席に乗り込む。
私は窓からコナン君に手を振っていれば、車が発進したためすぐに姿は見えなくなった。





* * * * * *


少し遠回りをしてアジトへ戻る車の中で、兄さんが目的はなんだったのか聞いてきた。


『まぁ盗聴器と発信器を仕掛けたのは毛利小五郎じゃないと思い込ませること』

「それだけじゃないだろう。わざわざ顔を変えて、FBIも遠ざけて……」

『……まずは狐のお面をつけたラピスラズリと名乗る人物の素顔は謎。あと、その人物はFBIと繋がっているかもしれないということ』

「そんな事どうやって………」

『赤井秀一が奴らの後ろにいることを匂わせただけよ。後ろに気を付けろ…ってね』

「なるほどね……FBIにはその存在を疑わせ、組織からはFBIと繋がっていると思わせる。そんな事してどうするんだ?」

『………特に意味なんてないかな』


正直にそういえば、なんだそれと呆れられた。
私の行動にいちいち意味があるなんて思わないで頂きたい。
基本、何も考えないで生きているのだ。
思うのはその時々の欲求を満たすにはどうするかぐらい。

でも今は月白鬼とボンゴレの元で好き勝手やっているからその欲求は満たされているけどね。

次に注意すべきは……13日の金曜日。
カレンダーを見ればいつか分かるだろう
とりあえず、その日まではのんびり出来るはず。



そう思っていた私の予想は、最悪の形で裏切られることになった。





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