水無怜奈の事件から早数日……コナン君の話ではまだ目覚める気配はなく、彼女の病室はFBIが四六時中見張っているらしい。
が、特にそれ以外は大したことはなく、平和な日々を送っているとのこと。
もし、コナン君達の正体がバレていたとしたら、とっくに何か起きているはずだから当面は大丈夫そうだ。
『よし、私にも平和な日々が……』
訪れると続けようとしたが、そんな空気をぶち壊すような音が部屋に響いた。
それは私のスマホが着信を知らせる音。
嫌な予感しかしないが、そーっとディスプレイに表示された名前を確認した私は、何かが起きる気がしてならなかった。
* * * * * *
「今日も平和だったわねぇ」
「いきなりどうしたの、園子?」
「平凡な日々にちょっとした刺激?が欲しいなーって」
私、鈴木園子は今平凡な日々に刺激を求めている。
ただ、親友達と他愛もない話をしたりするのも楽しいが、ちょっと日常から外れた出来事を体験してみたい気もする。
「蘭姉ちゃん達、道端で何やってるの?」
「コナン君、皆も…」
「なぁんだ、ただのがきんちょじゃない……」
「……どうしたの、園子姉ちゃん」
「平凡な日に刺激が欲しいんだって」
私の日常を壊す声が…と思ったが、蘭の家で預かっているがきんちょだった。
残念と思ったが、これ以上ここに突っ立っていてもしょうがない。
帰ろうと視線を前に向ければ、今度は………動けなくなった。
そんな私を不審に思った蘭が声をかけてきた。
「園子?」
「蘭…あれ………」
私の思考を一瞬にして持っていった原因を指差すと、子供達も一緒に視線を私の指の先に向ける。
その先にあるのは……居たのは、柔らかそうな金髪を風に靡かせて優雅に歩いている長身のイケメン。
「わぁ……モデルさんみたい!」
「じゃぁ後ろの人はマネージャーですかね?」
「……蘭、尾行しよう」
「えぇ!?」
「歩美達も一緒に行こう!」
あれほどのイケメンは出会ったことがない。
旦那がいる蘭でさえもほんのり頬赤らめている。
まぁ私にも真さんがいるんだけど……ね。
兎に角、あのイケメン行く場所が気になるのだ。
私は蘭の腕を引っ張り、彼の後を追った。
* * * * * *
「なぁボス……」
「なんだ」
「つけられてるぜ?」
「あぁ……ただの一般人だ。気にするな」
これから会いに行くやつも、今は一般人だからな……
ボスと呼ばれた人物はそう呟き、目的地だけを見据えて歩いていった。
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