今日は蘭の部活が休みだから、最近出来たカフェにでも行こうという話だったが、私はそれを断ってポアロに来ている。
……しかも1時間はここにいる。

ちょっと欲しいものがあったから、ネットを見てました……といっても流石に飽きてきたし、目も疲れてきた。
少し休もうとスマホから視線をずらせば、メッセージが届いたことを知らせてくる。

普段なら何も思わないのだが、今日はタイミング悪いなと悪態をつく。
そうは思っても内容を確認するあたり、随分律儀だと自分で思う。
内容はあと5分程で着くというもの。
漸くかと思い、既に冷えてしまった紅茶を飲み干す。
カップを置いたとき、来店を知らせる鈴が店内に響く。


「いらっしゃ……!?い、いらっ…しゃ…いませ………」


梓さんの途切れ途切れないらっしゃいませに疑問をもち、目を向ければ、メッセージの送り主が立っていた。


「よっ!元気だったか?」

『………まぁまぁです。ディーノさんは相変わらず元気そうですね。ロマーリオさんも』

「あぁ、真昼嬢ちゃんもな」

『では……こんなところに私を呼び出しておいて1時間も遅刻してきた誰かさんは、どんな用事があったんですかね』

「頼むからそんな怒るなよ」


そう言いながら私の手の甲にキスをする
あぁ、絵になるなと思った。
部下のいないところでは半人前でへなちょこだが、そこがいいんだと思う。
とはいえ、身の危険にさらされるようなことに遭遇したくはないので、ロマーリオさんがいてくれて助かった。
居なければ、店の真ん中で滑って転けるかぐらいはしただろう。
そもそも、今日中にここに辿り着けていたかも怪しい。


『怒ってませんから、早く用件を』

「あぁ、実はな……」

「あー!真昼お姉さんだ!」

やっとディーノさんが本題に入ってくれる気になったというのに、そんな空気を壊す声が店内に響いた。
しかもその声は私の名前は叫んで……


『歩美ちゃん…?てか、皆揃ってなにやってるの。蘭と園子はカフェに行くんじゃ……』

「うっそ……そのイケメン真昼の知り合い!?何々、どういう関係!?」

『……私の友人のお兄さん?』

「あんたの周りイケメン多すぎよ!」

「園子、興奮し過ぎ!ちょっと落ち着いて」

『蘭、貴女も顔にやけてるわよ』

「お兄さんかっこいいなぁ」


ディーノさんを前にした女子高生2人はもう手がつけられないほどテンションが上がってしまっている。
歩美ちゃんももうずーっと彼を見つめたままで、哀ちゃんは言わずもがな。

目をハートにしている女性陣とは別に、面白くなさそうな顔をしている男性陣。
特にコナン君。
蘭を見て焦り、ディーノさんには威嚇し私には説明を求める様な視線を向けてくる。
私はコナン君に口パクでドンマイと告げれば、額に青筋を浮かべた。

うん、君のそんな怒った顔はあまり見たくなかったな。



「君達は真昼の友達か?」

「はいっ!大親友ですぅ!」

「真昼の事、これからもよろしくな」


ディーノめ……園子達ノックアウトしてどうするつもりなんだか。
まぁであの2人からしたら道端で有名人に会ったような感覚だろう。
それでも男からしたら気が気じゃないだろうが…


彼女等が漸く席に座ったところで、ずっと聞きたかったことを再び訪ねる。



『で?用事ってなんだったんですか?』

「あぁ、そうそう…………これだ」


そういって取り出したのは白い封筒。
なんだろう、物凄く受け取りたくない。
ただの任務なら喜んで受け取る。
でもそういったものは直接綱吉から受けるもの。


『受け取らないという選択肢は……』

「無いな。まぁ内容を見ればお前も行く気になると思うぞ?」


恨みを込めた視線を送るが、本人は何処吹く風でコーヒーを飲んでいる。
全く、いつの間に頼んだのやら。
覚悟を決めて、封筒を開けて中の紙に目を通す。
そこには、予想だにしなかった文字が並んでいた。


『うそ……』

「な?吃驚だろ?まぁ俺はあいつの真意が分からないでもないが……」

『今まで事あるごとく中止にさせてきた人が……』

「まぁそうだよなぁ。で、行くよな?」

『……行かなきゃ不味いから持ってきたんですよね?』

「まぁな。遅くとも明日の朝には出発するからな」


それは聞いてないうえに、いきなり過ぎて言葉もでない。
何故こうも自分勝手な奴ばかりなのだろうか。
まぁ私がこれをいうと絶対お前がいうなと言われそうだから黙っておく。


『……それでいいですよ。その代わり!今日は私の買い物に付き合ってくれますよね?』

「まさかお前……準備していなかったのか?」

『送るつもりだったから手元にないんですよ』

「じゃぁ行くか。でも、店は案内してくれ。まだこの土地初めて来たからな」


別に私も詳しいわけじゃないんだけどなと思いつつ、とりあえずデパートか酒屋だなと目星をつける。


「あれ?真昼もう行っちゃうの?」

『ちょっと急用ができたから。じゃぁ皆またね』

「学校で話聞かせてもらうわよ!」

『…お手柔らかに』


きっと、物凄く問い詰められるだろう。
数日は学校を休む予定なのだから……







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