『やっぱプライベートジェットはいいですね。一般旅客とは段違いです』
買い物を済ませた後、その足で空港に向かった。
今は飛行機の中で滑走路に向かっている状態だ。
「日本に行くとき使わなかったのか?」
『私1人が移動するのに出すのもなと思ったんですよ』
「お前が遠慮するなんて珍しいな」
『………私のこと何だと思ってるんですか』
まぁ細かいことは気にすんなと笑われた。
別に何でもいいかと思い、窓の外に目をやる。
まだ離陸する訳じゃないため、外の景色の移り変わりは割りとゆっくりだ。
「……あの2匹が心配か?」
『世話は頼んであるから問題はないです』
「そうか……まぁ他に心配事があるなら誰かを頼れよ。お前の力になりたいと思っているやつは周りに沢山いるんだ」
『考えておきます』
正直なところ誰かを頼る予定はないが、曖昧な回答をしておく。
でも、ディーノのあの顔はこちらの考えが分かっているようだけど。
それ以上は交わす言葉もなく、飛行機はイタリアに向け飛び立った。
* * * * * *
『あーここに帰ってくるのひさびさー』
ボフッとボンゴレ本部にある自室のベッドに倒れ込む。
真昼の家のベッドもいいが、やはりここにあるのは格が違う。
そのまま何をするわけでもなくゴロゴロしていてば、バンッと大きな音をたてて扉が開く。
誰だと思い入口に目を向けると、そこには少し想像と違った人物が立っていた。
『わぁ……君らがそんな風に扉を開けるとは思わなかった』
「ツナさんから瑞希ちゃんが帰ってきてるって聞いて、いてもたってもいられなかったんです!」
「私達がいないときに日本に行っちゃうなんて…」
「……吃驚した」
『いや……あれは半分綱吉も悪いんだからね?』
「でも!瑞希ちゃんいつも本部にいないから……」
『あぁもう分かった!今回の滞在中は出来るだけここにいるから』
私がそういえば、押し掛けてきた女の子3人はとても嬉しそうな反応を示してくれた。
そんなことで喜んじゃって……といいつつも私も表情がほころぶのを感じていた。
「じゃぁまずは今夜のパーティーの準備ですね!ハルと京子ちゃんに任せてください!」
「はい!それに守護者の皆さんは2時間後に召集がかかってますから、スピーディーにいきますよ!」
………前言撤回。
表情がほころんだのは気のせいだったのかもしれない。
あれから私とクロームは京子とハルの着せ替え人形状態だった。
準備が終わる頃には、私の機嫌は悪いとしか言いようがなかったと思う。
それでもお構いなしの2人はある意味勇者だ。
「わぁ……やっぱり瑞希ちゃんは(黙ってると)美人ですね」
「ほんとだね!」
『表に出てこなかった言葉まで聞こえた気がしたんだけど』
「気のせいです!ほら、早く行かないとツナさんに怒られます!」
そういってクロームと一緒に部屋を追い出され、2人並んで綱吉の執務室に向かう。
『パーティーって19時辺りからじゃなかったっけ?何でこんな時間に準備を終えて集まりゃなならんの?』
「瑞希……落ち着いて」
『あの2人の着せ替え人形になるのは骨が折れる……クロームは平気なの?』
「あの2人が、楽しそうだから……」
『クロームは本当にあの2人が好きだね』
「瑞希のことも、好き」
『……ありがと』
綱吉の執務室に続く長くて静かな廊下で友人でもあり仲間でもある彼女と久々に言葉を交わせた。
大丈夫、私の帰る場所はここだと思うことができた。
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