本部に到着し、直接綱吉の執務室に向かう。
扉の前で一瞬動きが止まったザンザスを見て、手で扉を開けるのかと思ったが、彼は何処までいっても彼だったようだ。


『ザンザス、一応ボスの部屋なんだから手で開けようよ』

「めんどくせぇ」

「瑞希、いまだに一応ってつけるのやめて」

『それより、仕事ってなに』

「……なんか怒ってる?」

『いいえ?穏やかな日をぶち壊されたからって怒ってなんかいないわ』


怒ってるじゃん……とぼやくも、私の隣にいるザンザスが早く用件を話せと言わんばかりに殺気を出せば、そそくさと要件を書いた紙を私達に差し出した。
イタリア語で長ったらしく書いてある文章に読む気が失せ、2人が詳細を話始めるのを待つ。


「瑞希、僕たちが話始めるの待たないで読んで。今の君の任務に影響ある内容なんだから」

『………まじかよ。誰だよそんなめんどくさいことやってるやつは』

「早く読め」


双方から文句が飛んで来る。
渋々目を通せば、不味そうな状況だが面白い内容だった。
一通り目を遠し、2人に目を向ければ意味ありげな目線を向けてきた。
それと同時に、3人を取り巻く空気が一気に変わった。



「てめぇ、今まで何してやがった」

「結構不味い状況だと思うんだよなぁ」

『……物事には順序ってもんがあんだよ。この事に関しては口出ししないでもらおうか』

「はっ、それで面倒なことになったんじゃねぇのか」

『これはこれで面白いと思う』

「そんな事言ってる場合じゃ無いんだよ」

『はぁ……我らがボスはこの状況はお気に召さないようですね。分かりました、このファミリーを全滅かバミューダに頼んで牢獄送りにすればいいんでしょう』


私が綱吉の意向通りに動こうとするも、あまりいい返事をしない。
はっきりしない物言いに若干イラつきながら理由を問う。



「書いてあるでしょ?君の任務に関わりある組織。それと関わってるんだ」

『それで?』

「此方の存在を知られるわけにはいかない」

『成る程……月白鬼動かせってことか』

「君らの存在は既に知られているから問題ないだろう?後始末はヴァリアーにお願いするね」

「こいつの尻拭いとか御免だ」


後始末というのに不満を覚えたのか、反発するザンザス。
確かに、私も後始末を頼まれてもやりたくない。


「今は瑞希をいつまでもイタリアに置いておくわけにはいかない。目処がついたらヴァリアーに引き継いでもらう。異議は認めない」


まさに鶴の一声。
あんなに怯えていたザンザスにこうも言い切れるようになったとは……
ザンザスも舌打ちをしながらも、結局は従うようだ。
一方的に毛嫌いしていてどうなることかと思ったが、仕事上は納得いけば従うようだ。
いつもならここでだらけ始めるのだが、長期間イタリアに居るわけにはいかない。
すぐに蝶を動かし、情報を集めさせる。



「今回、結構本気だね。面白そうとか言ってた割に」

『まぁね。5日……いや、3日でケリをつける』

「よろしくね」


書類は月の炎で無に還し、部屋をあとにした。





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