『さて、どうしたものか……』
綱吉とザンザスの前では面白いとか言ってはいたが、正直なところ、楽しんでる場合ではない。
今までSISMIがこの組織について関わらなかったのは、イタリアで活動をしていないから。
もっと言えば、ボンゴレファミリーと月白鬼が睨みをきかせているこの国で何かをやろうなんて馬鹿なやつは殆どいない。
それでも全く無いわけではないから、こういうことが起きるのだ。
今回ばかりはちょっと厄介だが。
『コルヴォファミリーねぇ………奴等とつるむにはもってこいのファミリーってか』
イタリアで本格的に活動が始まる前に阻止しなければ。
そう思い、早足で本部を後にした。
* * * * * *
「ねぇ、蘭?真昼から何か連絡来た?」
「ううん……ほんとどうしちゃったんだろう?」
「マメに連絡取れるような子じゃなかったけど……ここまでないと流石に心配よねぇ」
今日は久しぶりにポアロでのんびり園子とお喋り。
内容は、最近学校を休んでいる真昼のこと……
彼女と連絡が取れないことを知ったコナン君が、学校には来ていないのかを聞いてきた。
「真昼姉ちゃん、学校来てないの?」
「うん、学校には家の事情で暫く休むって連絡あったらしいんだけど……」
「あのイケメン外国人と遊んでるんじゃないの?最後に会ったのって、きっとあの人でしょ?」
「良くないことに巻き込まれてないといいんだけど………」
「そこは大丈夫なんじゃない?めんどくさいこと嫌いだろうし、その内ひょっこり帰ってくるわよ」
「それならいいんだけどなぁ」
楽観的な園子を横目に、コナン君は何かを考え込むような表情をしている。
たまに見かけるこの表情が新一とそっくりだと何度思っただろう。
コナン君が新一だったら良かったのにって思った事があるのは私だけの秘密。
真昼?コナン君も気にしてるから、早く帰って来なさいよ。
* * * * * *
ボンゴレ本部を出た私は、月白鬼の本部へ急いだ。
今回の事は月白鬼として片付けなければいけないため、全て終えるまでは此方で過ごすことにした。
『私の部屋何処だったっけ………』
「最上階ですよ。そこのエレベーターからだと直通です」
『そんなの付けたっけ』
「はい」
『……なんか機嫌悪くない?』
本部に着いた私は、エメラルドを呼び出して部屋まで案内させている。
いつもの物腰柔らかい感じは消え失せ、ただただイライラしているようだ。
アクアマリン達と違ってエメラルドとその配下の人間は殆どイタリアの本部に身を置いている。
そのため、イタリア状勢が悪くなれば、それだけ仕事も増えてしまう。
『早急に片付けるから、もう暫く耐えてくれ』
「問題ありません。我々を甘く見ないで頂けますか」
『そうだな……頼りにしてる』
「必ず、ご期待に添える結果を出しましょう」
そう返事をしたエメラルドは私だけをエレベーターから下ろして仕事に戻っていった。
直通と言うだけあって、降りたそこは私の執務室だった。
久々に訪れたというのに部屋には塵1つない。
執務机もその前にあるソファも、何1つ変わっていない。
『まったく……』
いつ来てもいいようにと思ってくれていることに胸が熱くなった。
呆れた言葉を吐くが、声色には嬉しさが混じっていて少し気恥ずかしくなってしまった。
少しゆっくりしようと思っていたが、こんなことをされては堪らない。
彼等の期待に応えられるよう、最速で仕事に取り掛かった。
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