『ただいま、我が家!!』


1週間しか日本を離れていなかったのに、とても久々な気がする。
アダムとイヴも今はここにいないため、とても静かだ。
後でアメジストが連れてくるだろう。
若干の時差ボケなっている私は、暫くベッドに横になろうと寝室に向かった。


眠れなくとも、ベッドに横になって目を閉じているだけでも大分ましになる。
暗くなった寝室で、スマホがチカチカ点滅している。
明るい場所では注視しなければ気付かないような光でも、暗闇ではそれなりに明るい。

紫に光っているから、着信があったのだろう。
確認すれば、アメジストからだった。
要件は、アダムとイヴを連れていくとのこと。
まぁあの2匹を白昼堂々と連れ出すわけにはいかないので、移動は自然と夜中になるのはしょうがない。
アメジストが面倒を見てくれていたのであれば、毛並みも問題ないだろう。

それから30分もしないうちにアメジストがアダムとイヴを連れてきた。


『アダム、イヴ!おいてっちゃってごめんねー?』

「………キャラ壊れてますよ」

『誰も見てないからいいの』


私が2匹と会いたかったのと同じように、アダムとイヴも私に会いたかったと言わんばかりにじゃれついてくる。
普通の猫が尻尾を立てて足にすりついてくるように、2匹も同じようなことをして来る。
といっても、図体がでかいので、私の方がよろけそうになるが……



『面倒見てくれて助かった。こんな時間に悪かったな』

「お気になさらず。いつもの事でしょう?」

『それもそうか』

「では、私は失礼します」

『あぁ』


アメジストはアジトに戻り、私達は寝室に移動してそのまま重なるように眠りについた。







* * * * * *


タイミング良く今日は土曜のため、学校は休み。
私は皆にお土産を渡すために、散歩も兼ねて早くから米花町をうろうろしていた。
ただ1つの誤算は、土産が重くて歩くのが面倒になってしまったことだろうか。
お酒の瓶が2本もあるから……と手元を睨みながら、毛利探偵事務所を目指す。
あそこの1階は喫茶店だから、時間を潰すには丁度いい。

喫茶ポアロを視界に捉えるのとほぼ同時に、隣の階段から人が駆け下りてくるのが見えた。
私に気付いたその人は、全力と言っていいほどのスピードで此方に向かってきた。
そのまま勢いを殺さずに飛び付いてきたのは予想外すぎて2人して道端に倒れ込んでしまった。


「……っ真昼!!」

『おはよー。久々だねぇ、蘭』

「もう、連絡くらいしなさいよ!」

『ごめんごめん。お土産あるから機嫌なおして?』

「すぐそうやってはぐらかすんだから!!」

『いいじゃない。お土産買えるくらい元気なんだから。それよりさ………立ち上がらない?』


早朝で人通りが少ないとはいえ、女2人で道端に座り込んで話す姿は如何なものだろう。
そう諭すように言えば、頬を赤らめてさっと立ち上がり、私に手を差し出してきた。
遠慮せずにその手をつかみ、立ち上がる。


『月曜はちゃんと学校行くから許してよ』

「もう…」

『それより、蘭部活じゃないの?』

「そうだった!お土産ありがとね、また学校で!」

『はいはーい』


お土産を受け取った蘭は1度家に戻ったため、部活の予定時間ギリギリになってしまったようだ。
悪い事したなぁと思ったが、酒1本減ったので随分荷物が軽くなったのは有り難かった。





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