私は今、イタリアにいる。
話せば長く……はならないが、簡単にいうと自分探しの旅と言う名の帰省。
降谷さんに告白というものをされたあと、自分が使い物になっていないことに気付いた。
早急に何とかしなくてはと思い、アダムとイヴをネフライト……今は旭兄さんに任せ、飛行機に飛び乗った。
「瑞希ちゃん!!観光に行きましょう!!」
「一緒にお菓子作りたいなぁ!!」
「皆でお泊まり、したい」
「瑞希、ランボさんが遊んでやるぞ!!」
「王子の任務、手伝わせてやるよ!!」
「う゛お゛ぉい!!クソボスを何とかしやがれぇ!!」
「クフフ……お手合わせ願いますよ」
『お前ら、毎日毎日毎日うるせぇよ!!!!ここ一応ボスの執務室だぞ!?』
「瑞希、一応は余計」
イタリアに来てからというもの、毎日彼等に引っ張り回される日々。
女性陣とランボの希望はいい。
だが、問題はその他の要求。
面倒だから、綱吉の執務室に避難したのに、構わず突入してくるんだから意味がない。
『観光は明日。お菓子作りは明後日。お泊まりは今日からしよう。ランボ、今日はハル達に遊んでもらって。残りは論外』
私は言うだけ言って、紅桜鬼に乗って窓から外へ出た。
* * * * * *
「あーあ、瑞希怒っちゃった。鮫のせいだからな」
「なんでだよ!!」
「私達はお泊まりの準備でもしましょうか!!」
「そうだね!!でも、その前にランボ君と遊ぼう」
「瑞希………」
「とりあえず、皆出ていって」
瑞希が去った今、ここにいる意味はないと綱吉の言葉に従い部屋を出ていった。
綱吉は、深いため息をついて再び仕事に取り掛かった。
* * * * * *
紅桜鬼と空中散歩を楽しんだ後、向かったのはヴァリアーアジト………にあるザンザスの執務室。
ベランダの窓が開いていたので、そこから失礼する。
『久しぶり、ザンザス』
「……瑞希か」
『うん。ねぇ、ちょっとここにいてもいい?』
「好きにしろ」
『やったね』
突然ベランダから侵入してきた私に文句1つ言わず、好きにさせてくれる。
紅桜鬼を簪に戻そうとしたとき、ザンザスがベスターを出してきた。
2匹はまるで猫のようにじゃれあいだした。
まぁ実際はライガーと虎なわけで、慣れてない人が見たら可愛いというより怖いが先に出るだろう。
私はその様子を少し見守ったあと、ソファーに横になり目を閉じる。
寝る訳じゃなく、ただ静かなところで頭の中を整理したかった。
どれだけの時間が経ったか分からないが、いつの間にか2匹は寄り添って寝ていた。
部屋にはザンザスがペンを走らせる音と、時を刻む規則的な音だけだった。
そんな空間を壊したのは、意外にもザンザスだった。
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