苛立ちも無くなったころ、やはりもう1度しっかり謝った方がいいのでは……と思い始めた。
話を聞いてくれていたにも関わらず、掴み掛かったのだ。



『さっきは、ごめん』

「お前らしくねぇな」

『……え?』

「欲しいものは力ずくでも奪う奴だと思っていた」

『た、確かに。でも、人の想いを力ずくは…嫌だなぁ……』


ザンザスの言うとおりだと思った。
今更かと、人を馬鹿にした笑みを浮かべているかと思ったが、全く別の表情をしていて驚いた。



『なに、そんな呆けた顔して………』


なにか変なことを言った?と続けるはずが、自分が声に出した言葉を思い出し、顔面蒼白になった気がした。



「お前もそんな風に考えるんだな」

『やめて、忘れて』

「人の心は操りたくないか………」

『ねぇ、なんで今日そんなに饒舌なの?1年分の文字数喋っちゃったんじゃない?』


こんなにザンザスと言葉を交わしたのは初めてかもしれない。
もしこれから先、彼があぁとかフンとしか言わなくなったら十中八九、私のせいだな。

そんな失礼なことを考えていれば、ザンザスがなおも言葉を重ねてきた。
それは、私の心の底にあった凝りを軽くするには十分で……



「お前が誰かに好意を寄せることを蔑んだりしねぇよ。例え、相手が誰であろうとな」

『………明日、日本に帰るよ』

「あぁ。いつでも来い」

『ありがとう』


紅桜鬼を呼び、来たときと同じようにベランダからボンゴレアジトに向けて飛び立った。



「幸せにならなかったら、容赦しねぇからな。瑞希」


そんな彼の言葉を聞いたのは、ベスターだけだった。






* * * * * *



またもや、出ていったときと同じように綱吉の執務室の窓から入る。
そんな私を見た綱吉は、ほっと息をついたようにみえた。



『どうかした?』

「いいや、瑞希が元気になってよかったと思って」

『ごめん、心配かけた』

「心配ぐらいさせてよ。そうだ、骸が探してたよ」

『えぇ………』

「悪いことじゃないから行っておいで」


しょうがない、そう言う綱吉を信じよう。
私はしぶしぶ、骸を探しに廊下に出た。

しかし、執務室にも部屋にも談話室にも居なかった。



『マジふざけんなよ、パイナップル野郎。何処にいんだよ』


折角探してやってるのに、見つかりゃしない。
いいや、自室に戻るまでに出会わなかったら無視しよう。
名案だ!!と自室に向かって歩き出した。





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