「遅いですよ、瑞希」
『一応聞いてやる。ここで何してる?』
結局自室に戻るまで出会わなかったなーと思いながら扉を開ければ、そこにパイナップルがいた。
「沢田綱吉から伝言は聞いたでしょう?」
『なら、自室で待っていてくれませんかね?無駄足だったんですけど』
「おや、貴女から訪ねてくれるとは……惜しいことをしましたね」
『それより話ってなに?』
雲雀さんやザンザスと違って、こいつは無駄話が長くなることが多い。
それに、今夜はクローム希望のお泊まり会がある。
「貴女にこれを」
『………ふざけてるなら、お前のパイナップルを引きちぎる』
「ふざけてませんよ。あと、パイナップルはやめてください」
『じゃぁ、何故首輪を出してきた。しかも2つ』
そう、もったいぶって出してきたのはあろうことか2つの首輪。
犬猫用の小さいものではなく、猛獣にでも使えそうな丈夫なもの。
「これは、アダムとイヴのものですよ。この鈴には仕掛けがありましてね。覚えているでしょう?おしゃぶりの炎を半永久的に灯せる器について」
『あれを忘れろという方が無理よ。で?それとなんの関係が………まさか!?』
「えぇ、そのまさかです。タルボ氏監修のもと、ヴェルデ、入江正一、スパナの力を結集させたものです。これがあれば、術者でなくとも簡単な幻覚なら使用可能です」
『………人目があろうとも平気で連れ出せると?』
「その通りです。火種は私とクローム、霧のアルコバレーノが灯しました。機械をも誑かせる代物です」
ただの首輪どころか、物凄い技術を結集させたもののようだ。
それを、アダムとイヴにくれるなんて……
あとでお礼言いに行かなきゃね。
『これ、本当に貰っちゃっていいの?』
「勿論です。あと、此方も一緒に渡しておきますね」
『………こんなに沢山作ったわけ?』
骸は別の箱を取りだし、蓋をあける。
そこに入っていたのは、2本のチェーンと4つの雫型のペンダントトップと思われるもの。
「流石に、夜の炎を使ったものを短期間で量産することはできませんでしたが、炎さえ尽きなければ、こちらの首輪と同等の力を発揮します」
『尽きたらどうすんの?』
「首輪についてある鈴の側に置いておけば、補充可能です」
『スマホかよ……』
正直、補充するには霧の炎を使える人物に頼む必要があるのかと思った。
内心ほっとした私を放置して、骸は本格的に説明に入った。
「使い方の説明をしないといけませんね。まず、機能はさっき言った通りです。起動方法ですが、瑞希の月の炎が不可欠です。鈴に炎灯す必要があります。」
『月の炎が必要なのはなんで?』
「1種の認証システムとでも思ってくれて構いませんよ。この世で月の炎を使えるのは貴女だけですからね。これを他人に乱用されてはたまったものじゃありませんからね」
『まぁ確かに……で?肝心の発動方法は?』
「月の炎を灯しながら幻覚を使用するだけですよ」
『いや、これは幻覚を使えない人間が使えるようにする装置なんだろ……あんたらがどうやって幻覚を生み出しているか知らないんだけど……』
1番肝心なところで理解の範疇を越えてしまい、溜め息を吐くしかなかった。
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