「まぁ習うより慣れろ、と言いますからね。やってみましょう」

『いや、取っ掛かりぐらいは教えてよ……』


とりあえず、優秀な術者が側にいるうちにマスターしなければ。
日本に戻ってから、使えなかったーじゃ済まないだろう。



「幻覚は想像力が肝心です。我々術者は、己の生み出した幻覚の動きなどを把握しています。ですが、術者でない者がこれをするのは非常に負担が大きい」

『普通に使ってる骸達が凄いってことぐらいは分かるよ』

「それを見破る貴女も凄いですけどね……話を戻します。ですので、月の炎を灯すとき、対象物を見えなくするか、姿形を変えるかイメージしてください。それを霧の炎が把握することで、使用者の監視がなくとも永続的に幻覚を発動し続けます」

『………ようは、鈴や雫に月の炎を灯しながら対象の別の姿を思い浮かべるだけで、あとは勝手に霧の炎がやってくれると?』

「まぁ、若干の齟齬がありますが………その理解で問題ありません」


じゃぁ早速やってみましょうと言うので、骸を練習台として使わせてもらった。
練習開始後たった20分で、完璧に使いこなせていると骸からお墨付きをもらった。
きっと装置が優秀なんだろう。


「それだけ使いこなせていれば問題ないでしょう。装置の方も不具合等見当たりませんし」

『ありがとう、骸』

「礼には及びませんよ。でも……そうですね、何かあったら手を貸してください」

『うわぁ……そっちの方が大変そう。でも、いいよ』

「では、私はこれで。あぁ、入江正一達は研究室にいますよ」

『わかった』


最後に入江正一達の居場所だけ言って部屋を出ていった。
私は貰ったものを整理し、研究室に向かうため部屋を出た。







* * * * * *



「もう日本に行っちゃうんですか?」

「帰ってくるのも行くのもいきなりなんて……」

「でも、元気になってよかった」

『3人とも、ありがとう。観光とお菓子作りは今度やろう』


女の子3人にお礼を言ったあと、綱吉をみる。
一瞬目を合わせたあと、頭を下げる。



『任務中に、申し訳ありませんでした』

「本来なら怒るとこだけど……いいよ。きっとプラスになることだろうし、今回は多目に見てあげる」

『……ありがとうございます』


普段のように、友達感覚で謝っても許してくれただろう。
でも、けじめはつけなければと、一守護者としてボスに謝罪をした。
綱吉もボスとして答えてくれたが、すぐにいつもの柔らかい雰囲気に戻ったので拍子抜けしてしまった。
飛行機の時間が迫ってきていたので、足早にボンゴレアジトをあとにした。

用意された車で空港に向かい、ロビーで時間がくるのを待つ。
お土産が目に写ったが、今回はいいか……と時刻を表示している電光掲示板に視線を移す。



『……今度はいつ戻ってこれるか分からないなぁ』


周りにいた旅行客やビジネスマンは心落ち着かない様子で、誰も私が発した言葉を気に止めるものはいない。
まぁ、気付いたとしても日本語だったので理解できるかはまた別の問題だけど。

日本行きのアナウンスが聞こえ、搭乗ゲートに向かう。
その足取りが軽くて、浮き足立っているのは私もか……と1人苦笑した。





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