ポアロを出て、まっすぐ家に帰る気になれず、気の向くままに歩いている。
疲れたら誰か迎えを呼ぶか、タクシー拾おうと考えたところで、また背後から声をかけられた。
『2度あることは3度ある………』
「どうしてこんなところを歩いてる?」
『散歩です……安室さんこそ、バイトはどうしたんですか?』
「真昼の様子が心配だからと、快く送り出してくれましたよ」
もう少し気持ちを整理する時間がほしかったな……と思ってる間にも、助手席のドアを開けられる。
『ご迷惑かけます……』
「迷惑と思っていたら来ないさ。それより、今日は時間あるか?」
『まぁ特にこれといったものは……』
「よし、少しドライブしよう」
降谷さんは私の返答を待たずに、車を発進させた。
どうやら、最初から拒否権は遥か彼方に追いやられていたようだ。
目的地は教えてくれないまま、心地いいシートに身を任せた。
* * * * * *
『んぁ……あ…れ…?』
「起きたか」
『おきた………?』
「この前みたいにぐっすりだったぞ」
1度ならず2度までも、降谷さんの横で眠りこけるとは……
流石に気を抜きすぎだと思うが……好きで寝るわけじゃない。
『なんか…毎回ごめんなさい』
「好きなだけ寝ればいいさ。それより、腹減ってないか?コンビニのおにぎりしかないが……」
『………いただきます』
私、餌付けされてない?大丈夫?
てか、おにぎりで餌付けされるってどうなんだろう………
そんな事を考えるも、差し出されたおにぎりを素直に食べる。
あ、ツナマヨ………好きなやつだ。
おにぎりの中身を認識したところで、頬が緩むのを感じた。
「ははっ……」
『なんですか…』
「いや……コンビニのおにぎりでも美味しそうに食べるんだな」
『コンビニのおにぎり、好きですよ。特にツナマヨ』
「それはよかった。折角デートでコンビニのおにぎりはどうかと思ったんだがな………」
え、これデートになるの!?
ただ、ドライブしてるだけで……あれ、デートっぽい?
…………よし、深く考えない。
『見栄えを重視した食べにくい物より、楽に食べられるシンプルで美味しいおにぎりの方が好きです………可愛いげないですけど』
「おにぎりを頬張る真昼は可愛いよ」
『可愛くないです………それに、食べづらいです……』
「わるいわるい」
絶対悪いなんて思ってない感じで謝ってくる。
でも、おにぎりに罪はないのでしっかり食べた。
時折会話を交わしながら、窓の外の景色を見る。
『降谷さん、ほんと何処に向かってるんですか?』
「んー?もう少し……あ、ほら見えた」
『海……?』
「あぁ……ここから見る夕日が綺麗らしい」
沿道に植えられた木が無くなり視界が開けると、その先には雄大な海が広がっていた。
ALICE+